第55話 新たなる二人の仲間!
第55話を公開しました。
出てきた与人の傍には新たな人物が。
「と、言う事がありました」
「そ、そうか。大変だったようだな」
ダンジョン入り口の遺跡、そこまで戻って与人たちは待っていたエクサに状況を報告していた。
無論、途中の試練の事は黙っていたが、ラボについてはしない訳にもいかなかった。
「過去の『スキル』保持者による工房。詳しく調べれば我々の技術も向上すると思われますが?」
話を聞いていたイプシロンがそう進言すると、与人とセラの顔が曇る。
特にセラは生まれ故郷が荒らされるにも等しいため、さらに暗い。
「いや、しない」
だが、エクサがそう断言すると驚きの表情に変わる。
「確かに得られる物は多いだろうが、そのために人の大切な場所を引っかきまわす気はないぞ」
「エクサ王……」
「感謝。博士の代わりに礼を言わせてくださいエクサ王」
「おう! いいって事よ!」
与人とセラから感謝を受けるエクサの横でイプシロンはため息を吐いていた。
「実にエクサ王らしい決断ではないか、なぁイプシロン」
「この状況が予想できていたから余計に疲れるのですよベータ」
「だが、これで大量の財政資源が手に入った。違うか?」
ベータが横目で見ているのは、義賊たちがため込んだ宝物をリントたちが運んでいる姿であった。
「それとこれとは別口ですよ。……まあ資源が多く手に入るのは良い事ですが」
「だろ?」
イプシロンとベータの話が一段落した辺りで、エクサは興奮したようにリントたちを見る。
「で? あいつなんだろ? お前が『スキル』を使って人間にした珍しいモンスターって言うのは」
エクサが見てる先にはリントやリルたちと一緒に財宝を運んでいる一人の姿があった。
「よいしょ、っと!」
「牛。もう少し丁寧に運べ、そこら中に飛び散ってるぞ」
「雑」
「アハハ! 悪い悪い! まだ力の制御が上手く行かなくてな!」
そう笑う女性は言うまでもなく、先ほどのミノタウロスが人間になった姿であった。
2mは越えている高身長で、筋肉が前進に程よく乗っている所にも面影はあるが。
牛の角と尻尾があるところにミノタウロスであった証明があった。
「トロンさん! 次こちらをお願いします!」
「私とユニさんだと重いので」
「よし! 任せておきな!」
ユニとカナデが呼ぶ声に素早く反応すると彼女は二人が何とか運んできた宝をヒョイと持ち上げ余裕で運んでいく。
「へぇー。トロンと名前つけたのか。変わった名前だが由来でもあるのか?」
「い、いや? 何となくですよ?」
(まさかストロングから取ったなんて誰にも言えない。)
そうこう話しているとそのトロンの働きもあり、ほとんどの財宝を運び出す事に成功した。
「皆さま、お疲れさまでした。残りの財宝は我々が」
「約束どおり屋敷と財宝の5%はそっちの物だ。好きに使ってくれ。これ、証明書な」
「ありがとうございます。エクサ王、イプシロンさん」
「いや、感謝を言うのはこっちだぞ」
与人が礼を言うとベータが口を挟む。
「俺たちが何も知らずに踏み込んでいたら、そのミノタウロスにモンスターに全滅させられたかも知れん」
「あー。すまねぇ?」
自分の話題という事でトロンが謝るが、ベータはそれを笑い飛ばす。
「もしの話だ、気にするな!」
「まあ、ベータの言う事にも一理あります。もしそうなれば我々はここの探索を断念していたでしょう。そうなればこれだけの資源を無駄にするところでした」
「まあそう言う事だ。お前らは俺らに富を与えただけじゃなく、命も守ったんだ。胸張っていいぜ」
「……ありがとうございます」
「良かったな、主」
礼を言われて涙ぐむ与人の背中をリントが優しく撫でる。
それをアイナが羨ましそうな顔で見ているが、邪魔するような事はしなかった。
「惜しいのはその人間にする『スキル』を使うところを俺も見たかったぜ」
「ハハ。どんな制約があるか分からない以上は無暗に使うなと言われてますので」
与人がそう皆で決めた事を言うと、イプシロンが何かを思い出したように財宝の中から何かを取り出す。
「ならば、これなどは相応しいのでは?」
「これは?」
イプシロンが取り出したのは一つの短剣であった。
かなり古びており、装飾もない短剣でありとてもでは無いが財宝の類いとは思えなかった。
「恐らく義賊が使っていた短剣でしょう。思い出にとっておいたか紛れ込んだか、までは分かりませんが」
「フム。使い込まれているが手入れはかなりいい。かなりの使い手のものだな」
ベータがそう感想を述べると与人に渡す。
どうしようか悩んでいるとリントが意見を言う。
「良いのではないか主。手練れは幾らいてもいい」
「アタイとしても仲間が増えるのはありがたいけどな」
リントだけでなくトロンも同意し、場の空気が賛成に向かう。
与人はこの場で反対しそうなアイナを見る。
その視線に気づいたアイナは不機嫌そうにしながらも意見を言う。
「……諜報活動に向いた人材はこれから必要になってきます。私も賛成します」
「剣の人、よく言った」
リルに肩を叩かれながらアイナは賛成に回った。
与人は全員を見渡すが反対する者はいなかった。
「分かりました。『スキル』使用します」
与人がそう言うと短剣は光だし徐々に人の形をとっていく。
「おお!!」
感激したように喜ぶエクサ、その横でイプシロンとベータも興味深そうにしている。
そして光が収まるとそこには褐色の肌をした少女が与人に対して臣下の礼をとっていた。
「この身に命を下さった事、深く感謝いたします。これよりこの身はあなたの物、ご自由にお使いください」
「随分とお堅い奴だな」
臣下の礼をとったまま崩さない少女に対して与人は取り敢えず視線を合わせる。
「顔を上げて」
「は」
少女が顔を上げると与人は優しく微笑む。
「出来れば俺は仲間として接したい。……何か名前の希望はある?」
「この身はすでにあなたの物。どう接するかもどう呼ぶかもご自由にしてもらえれば」
変わらぬ少女の態度に苦笑しながらも、与人は先ほど見つけた短剣に彫ってあった名前を借りる事にした。
「そうか、じゃあ名前はユフィで」
「は」
「じゃあユフィ。最初の命令だけど」
「何なりと」
「その堅苦しいの禁止で」
「はっ! ……はい?」
思わぬ命令に思わず聞き直すユフィを余所に会話はどんどん広がっていく。
「分かるぜ。幾ら上下関係があるといってもずっとじゃ疲れるもんな」
「ハハ。さてデフスに戻って皆にトロンとユフィを紹介しないと」
「それなら与人さん。折角ですし皆でお祝いしませんか?」
「……ナイス」
「肯定。よいアイデアだと思われます」
「あ、あの」
「諦めろ短剣。ああいう主だ」
戸惑ったままのユフィの肩を叩きながらリントも与人の後を追いかける。
こうしてトロンとユフィ、二人の新たな仲間を得て与人の初めてのダンジョン探索は終わりを告げるのであった。
今回はここまでとなります。
次回は皆でパーティー回です!




