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第54話 決戦!ミノタウロス!!

第54話を公開しました。

与人は戦闘音で目を覚ます。

そこで見たのは?

「ん? ん~ん」

「旦那様? お気づきになりましたか?」

「与人さん。大丈夫ですか?」

「カナデ? ユニ? あれ? これ一体どういう状況?」


 記憶の混濁が見れる与人に対して、二人は話を合わせる。


「与人さんが突然の幻に驚いて」

「足を滑らせて頭をぶつけたのです」

「ん~? 何かとても違和感があるんだけど? 何かこう、やるべき事があったような……?」

「「気のせいですよ」」

「お、おう」


 ユニとカナデに食い気味に言われ、とりあえず与人はそれで納得する事にする。


「……それでさっきから聞こえるこの戦闘音はなに?」

「それに関しては見てもらった方が早いと思います」

「ユニさんがバリアを張ってますけどあまり覗き込み過ぎないでくださいね、旦那様」


 カナデの忠告を受けてゆっくりと二人の後ろ側を覗き込む与人。

 そこには予想していたよりも激しい戦闘が行われていた。


 ブモオォォ!!


「フン!」


 5mの巨体である牛の怪物とリントが拳をぶつけ合う。

 力は拮抗しているように見えるが、体格の差ゆえかリントが少し苦しそうに見える。


「……隙だらけ」


 その隙を狙ってリルが巨体を駆けあがり無防備な頭に回し蹴りを浴びせる。


 ブモオォ!


 蹴りを喰らって一瞬硬直した怪物の隙をぬって今度はセラが接近する。


「一撃。これで決めます」


 隙だらけとなった怪物の腹部に全力でグランドアックスを叩きつける。

 だが筋肉の塊のような腹筋がグランドアックスを受け止める。


「ブースト、オン」


 だがセラの方もグランドアックスから魔力を噴出させ対抗する。

 徐々にめり込みだすグランドアックスを見て勝利を確信するセラたちであったが。


 ブモオォォォォォォォォォォォォォォ!!!


「クッ!」


 怪物の魔力を込めた咆哮にセラが弾き飛ばされてしまう。

 それを見てリルとリントも同時に引き、三人は一度体制を立て直すのであった。


「……何あれ?」

「このダンジョンを造った人が作ったモンスターで……ミノタウロスと言うらしいです」

「ちなみに今のが十度目の攻防です」


 セラとカナデの解説を聞きながら与人は驚きを隠せないでいた。

 ヒュドラの時とは違い、こちらは最初から70%の力を引き出せる。

 それも三体一という条件でここまで苦戦するとは思えなかった。


「与人さんの考えてる事は分かります。けれどこちらにも全力が出せない訳があります」

「? 後ろに俺たちがいる事?」

「それも理由の一つですけど、一番なのはこの場所ですね」

「場所? ダンジョンが何か……あ」


 自分の言った言葉で何かが思い当たった与人。

 その様子を見てユニは頷く。


「そうです。いくらここが人工的なダンジョンとはいえ、リントさん達が暴れたら崩壊する可能性があります」

「今は私の魔法で壁への衝撃を緩和していますが、それも何時まで持つか……」

「え? それかなり危険な状況なんじゃ」

「はい。かなり危険です」


 リントたちも無限に戦い続ける訳にはいかない。

 このまま消耗していけばやられる可能性もある。


「一体どうすれば」

「何を言ってるんですか与人さん! こういう時こそチャンスですよ!」

「だ、旦那様頑張って!」

「……」


 心の底から応援しているユニと、申し訳なさそうに応援しているカナデ、そしてこの状況。

 これで何を求められているか分からないほど、与人は鈍くなかった。


「あのミノタウロスに『スキル』を使えと?」

「はい」

「あの激しい戦闘の隙をぬって?」

「え、援護はしますから」

「……無理じゃない?」


 今までの中でも危険な状況での『スキル』の使用に汗が止まらない与人であったが、考えられる中で一番安全に戦闘を終わらせる手である事も理解していた。


「安心してください与人さん。私とカナデさんが全力で守りますから」

「旦那様、ご武運を」

「……分かった」


 そう言って立ち上がった与人の脚は震えていたが、その目は決意に満ちていた。



「主が動き出したな」

「推定。万が一の作戦を決行すると思われます」

「……大丈夫なの?」


 リルが心配そうに問いかけるが、リントは目の前のミノタウロスを警戒しながら答える。


「主の決断だ、文句も言いようが無いが……。危険な状況にさすのは私たちの未熟さだな」

「肯定。さらなる連携、作戦が今後も必要だと思われます」

「反省」

さて、主が奴に触れればこちらの勝ちだ。出し惜しみ無しだ」


 そう言うとリントの目の前に巨大な魔法陣が生み出される。


「本来の威力には程遠いが、竜の息吹を味合わせてやる」


 息を大きく吸い込みリントはその名を口にする。


「《ドラゴンブレス》!!」


 リントによって生み出された特大の火炎がミノタウロスを包む。

 突然の攻撃に悶えるミノタウロスであったが、攻撃はまだ終わらない。


「……ガラ空き」


 ミノタウロスの体長よりも大きく跳躍したリルが回転しながら頭にカカト落としを喰らわせる。


 ブモオォ!?


 脳天を直撃したカカト落としによってミノタウロスはクラクラし始めた。

 それをチャンスと見て与人は一気に飛び出す。

 ミノタウロスは与人が近づくのを察知すると、何とか拳を繰り出そうとする。


「阻止。させません」


 だがその拳はセラのグランドアックスによって受け流される。

 与人は目の前に迫ったミノタウロスの脚に触れようとする。

 が、寸前のところでふらついたミノタウロスに躱されてしまう。


「っ!」

「主! 左!」


 リントの言葉に反応して左を見れば拳が迫っていた。

 全員が間に合わない位置におり、与人がその拳を受けるのは避けられないであろう。

 ユニとカナデも全力で防壁を張るが、それでもミノタウロスの一撃を耐えられるかは微妙なところであった。

 与人も覚悟して思わず目をつぶった。


(……ん?)


 だが与人のすぐそばを何かが凄い勢いで通った気がした。

 目を開けて見ると、そこにはミノタウロスの拳を自身の分身で受け止めているアイナの姿があった。


「主様! お早く!」


 先ほどまで人に言えないような顔をして気絶していたとは思えない凛々しい顔でアイナは与人を見る。

 幸いにしてミノタウロスは突然現れたアイナに動揺しているようで与人の事は意識から外している。


「今だ!」


 そして与人はミノタウロスの左腕に触り、『スキル』を発動する。

 ミノタウロスの巨体が光に包まれた時点で全員から緊張が抜けていく。


「……で、どういう状況なんですかコレは?」

「聖剣。まさかお前、訳も分からず飛び出したのか?」

「? ええ。気が付いたら主様が危機みたいでしたので……え? ダメでした?」


 アイナの様子に周りから笑いが起きる。

 その笑いは実に温かいものであった。


「いや? 実にお前は忠臣だよ、聖剣」

「剣の人、凄い」

「な、なんですか急に! 逆に怪しいですよ!」


 普段は貶す二人の誉め言葉に警戒するアイナに余計に周りが笑顔になる。


(……やっぱりこういう光景だよな。求めてるのは。)


 与人はこの光景を見て、改めて自身の目標を定めるのであった。

今回はここまでとなります。

次回は二人の仲間が加入します!

ご期待ください。

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