第53話 やはりダンジョンの締めはバトル
第53話を公開しました。
果たして与人の怒りの行方や如何に。
「お、ま、え、かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
与人は立ち上がるとズカズカと博士の立体映像に近づいていく。
「ご主人、止まって」
「そうですよ与人さん。あれは幻の一種らしくて」
「関係ねぇぇぇえ!! 幻だろうと何だろうと奴の顔面に一発、いや十は入れないと気が済まねぇ!!」
「う。……ご主人、凄い力」
「い、一体何があったんですか与人さん!?」
止めようとするリルとユニを引きずりながら博士の立体映像に近づく与人。
だがそこに突然音楽が流れ、それが耳に入ると同時に与人は床に突っ伏して寝てしまった。
「強制的に眠らせる音魔法です。あまり無理させるのもどうかと思いましたので」
「いえ、助かりました。ありがとうございますカナデさん」
ユニがカナデに礼を言うとリルとリントが与人を再び奥の方まで連れて行った。
「さてこれで主はしばらく問題ない。ゴーレム、頼む」
「了解。では続きを再生します」
与人が暴れ出したため停止していた立体映像をセラが再び動かす。
《怒るのも無理は無いが、ここは押さえて聞いて欲しい》
「……もう手遅れ」
リルのツッコミも届かず博士は説明を続ける。
《あのくらい変な条件じゃないとこのダンジョンが見つかった時に大変な事にもなりかねない。まあ多少の罪悪感はあるけれど必要な犠牲だと思ってくれ》
「推察。この部分をマスターが聞いたら十発が百になった可能性が72%」
「いや、絶対増えてただろうな」
セラとリントの会話を余所に内容は核心へと触れていく。
《というのもココは『グリムガル』に反抗している義賊の本拠地でもあってね。生半端な人間を入れる訳にはいかなかったのさ》
「……なるほど?」
「内容はともかく理由は真っ当のようですね」
リルとユニが一応の納得をしていると博士は追加の説明をする。
《僕も『グリムガル』は気に入らないからね。だから失敗作だったり大きすぎた作品をここに置かせてもらう代わりにこの基地件ダンジョンを提供した訳だよ》
「納得。そういう訳だったのですね」
「セラさんのラボに直結していたのも様子を見に来やすかったからでしょうね」
セラとカナデがそう納得すると同時に、部屋の奥の二つの扉が開かれる。
《いま開いたのは義賊たちが集めた財宝を隠してた部屋。もう一つは僕の作品が収められてる部屋。どっちに用があるかは知らないけれど、あんなダンジョンに付き合わせてしまったお詫びと報酬だよ》
「はぁ。その財宝を持って上がれば、ようやくこのダンジョンともおさらばだな」
「満足。ラボへの入り口も見つけ、尚且つ博士の作品も回収する事が出来ました。マスターにも感謝しなければなりません」
目的を果たした事により場に弛緩した空気が流れる。
「ほとんど訳が分からず来ましたけど、終わりが見えて何よりです」
「ええ、後は旦那様とアイナさんをどう運ぶかですけど」
「……剣の人はこのままで」
「そ、それは流石に」
「とにかく財宝を運ぶか上で待っている『マキナス』の王たちに来させるかしないとな」
「了解。私はラボへ。ん?」
「どうしましたセラさん?」
「危険。皆さん……戦闘準備を」
セラの言葉の意味を理解する前に部屋の中心部に魔力が集まっていくのを感じ、全員が戦闘態勢をとる。
「おいゴーレム。あれは何だ」
「回答。今の映像を見た場合に緊急転移装置が働くようになっていました」
「つまり?」
「要約。つまり、何かがこの場に来ます」
《あ~。本当に申し訳ないんだけど》
先ほどまで動かなかった立体映像が再び動き出し、全員が今度は警戒した様子で聞く。
《やっぱり僕は心配性でさ。この映像も何らかの方法で無理やり見てるのかも知れないだろ?だから一つだけ保険を掛けておく事にした》
「保険?」
《そう。丁度この世界には居ないみたいだし、僕も色々試してみたかったし。まあ手早く言えば強力なモンスターを作ってみたんだ》
「余計な事を」
「同意。私の博士ではありますが、これはいわゆる空気が読めないという奴です」
そう文句を言っている間にも段々と魔力が強まっていき、現れるのも時間の問題であった。
《ここまで頑張って来てくれて申し訳ないが、僕の心配性に付き合ってくれ。……そろそろだね、定番だしここは名前を叫んでおこうかな? 現れろ! ミノタウロス!!》
ブモオォォォォ!!
魔力が爆発的に高まった瞬間、それは現れた。
5mはあろうかという巨体に牛の角を生やしたそのモンスターはリントたちを見下ろしていた。
「検索。ミノタウロス。……データにあります。博士やマスターの世界の神話に描かれた牛と人とのハーフな怪物、だと」
「なるほど。確かにこんなモンスターは見た事ないな」
リントは指を鳴らしつつ久しぶりにまともに戦える相手に心の内で少しだけ喜んでいた。
《まあ知らない人もいるだろうけど、見てのとおりミノタウロスだ。他の変わり者の転移者と協力しながら作り上げたモンスターだよ》
「……すっごく迷惑」
リルの文句も当然聞こえる訳も無く、立体映像の博士は申し訳ない顔をしつつも容赦なくミノタウロスに命令する。
《ミノタウロス。目の前の敵を粉砕し宝を守れ》
ブモオォォォォォォォォォ!!
雄たけびを上げつつミノタウロスはリントたちに突っ込んでいく。
距離が空いていた為、避けようとするセラたちであったが。
「リント氏?」
リントだけは動かず真っ向から迎え撃つ形となった。
突進してくるミノタウロスと手を取り取っ組み合いとなるリント。
その顔は少し歪んでるようにも見えたが。
「っ! ……フン!」
5mもあるミノタウロスを少しだけだが持ち上げ投げつける。
予想しなかった展開にミノタウロスは受け身も取らず尻餅をつく。
「リントさん! 大丈夫ですか!?」
まずユニが近づき手の様子を見始めると、他のメンバーもミノタウロスを警戒しつつ集まる。
「リント氏。大丈夫ですか」
「問題ない。……と言いたいところだがな」
リントの腕をよく見れば手がしびれているようで小刻みに震えている。
「どうやら骨などに問題は無さそうですね。無茶をしないでください」
「どの程度か見ておく必要があったからな。だがこれは……予想より苦戦しそうだな」
リントの視線の先には既に立ち上がりこちらを警戒している。
「学習能力はあるようですね。リントさんを特に警戒してます」
「制限。加えてコチラには動けないマスターとアイナ氏がいます。リント氏の言う通り苦戦は必至でしょう」
「だがここまで来て引く訳にもいかん。……行くぞ」
この世界にいないはずのミノタウロスとの戦いが人知れず始まったのであった。
今回はここまでとなります。
突如始まったミノタウロスとの戦い。
果たして一同は勝つことができるのか、ご期待ください。




