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第52話 やり場のない怒りの行方

第52話を公開しました。

セラたちと合流し、一行は奥深くへと向かう。

「把握。つまりマスターたちはダンジョンを探索する為にこの地を訪れ」

「お前らはゴーレムの言う博士のラボへの入り口を見つけて、他の入り口を調査していたらこのダンジョンにいたと、……どんな偶然だ。全く」


 そう言ってリントは悪態をつくが、皆も同じような事を思っていたので誰もとがめるような事はしなかった。

 するとリルがリントの腕を引きながらある人物を指さす。


「赤いの……。ご主人、どうしたの?」

「ええ。先ほどこちら側の経緯いきさつを話したあたりから放心してしまって。それにアイナさんも我々が来る前からその、凄い顔をされていますけど」

「剣の人、キモイ」


 リルの厳しい一言にカナデが慌てるが当の本人は未だ未知の世界へ旅立っているので何のリアクションも取らなかった。


「主は、まあ簡単に言えば。今までの努力があっという間に意味の無いものになってまだ現実感が無い。という状況だな。しばらくそっとしておけ、その内に元に戻る。聖剣は……手遅れだ、ここに置いておけ。」

「え、ええっと。と、とにかく旦那様がお疲れなのは理解しました」

「ご主人、頑張った。……よく分からないけど」


 カナデとリルがそれぞれ納得したようなので、リントはようやく本題に入る。


「さて、こちら側の試練とやらも終わり尚且なおかつ意図はしていないが戦力の増強が出来た。主と聖剣は当分使い物にならんが、先に進んで何が隠されているか確認した方がいいと思うが……どう思う?」

「賛成ですね。試練を無視して進むルートも出来ましたけど、この戦力なら奥に何が待っていても突破出来るでしょうし」


 リントの言葉にユニが賛成すると、続いてセラも同意する。


「賛同。個人的にはマスターの事情だけでは無く何故ここが博士のラボにつながっていたのかも解明したいと思っていますので」

「奥の音は聴き取りずらいですが、恐らく大きな罠の類いは無いと思います。私も賛成です」

「……どっちでもいい」

「よし。賛成が多数だな。ならさっさと行くぞ」


 リントは与人を担ぎながら奥に進もうとするが。


「停止。マスターを担ぐのでしたらアイナ氏も担ぐべきと判断します」

「そうか。ならゴーレム、お前が背負ってやれ」

「拒否。今のアイナ氏からは……おぞましさを感じますので」

「……フェンリル」

「イヤ」


 リルらしからぬ即答からは絶対拒否の意思を感じるが、リントとしてもあの状態のアイナを担ぐのは嫌悪感があった。

 三人はしばらく目線でバチバチと言い争いをしていたが、リントが腕を振り上げると同時にセラとリルも腕を振り上げる。


「「「最初はグー! じゃんけん、ホイ!」」」


 事前に揉め事が起きた場合はじゃんけんで決めるよう言われていた為、スムーズにじゃんけんに移行した三人の結果は。


「負けた」


 リルの一人負けが確定し、見るからに落ち込むリルを余所にセラとリントは内心ホッとしていた。


「……仕方ない」

「リルさん、手伝いましょうか?」

「必要ない」


 手伝いを申し出たユニにそう言うと、リルはアイナの腕を掴んでひこずり始めた。


「リ、リルさん。それは流石に」

「……じゃあ足持って」


 あまり触れたくないのかこのスタンスを崩そうとしないリルにため息を吐きながらも、仕方なくユニはアイナの足を持って運ぶ事になった。


「……ところで三人はどうして着替えを?」

「知らん」


 今更なカナデの質問にそう答えると、リントは今度こそ奥に進んでいくのであった。



「ほう?」


 一番最初に奥の間に入ったリントの言葉は驚きとも興味とも取れる言葉であった。


「驚愕。……ここはラボと同じ作りのようですね」


 次に入って来たセラの言う通り、今までファンタジーな石で造られたダンジョンだったのが、セラの博士のラボのようなSF空間になっていた。


「一度セラさんのラボというものを見ましたが。何度見ても驚きですね」


 カナデが驚きの言葉と共に入って来ると、後ろからリルとユニが遅れて入って来てその場にアイナを置いた。


「驚くのはいいが、宝物ほうもつの類いはあるのか? 見た限りではそれらしいのは無いが」


 リントの言う通り、広がってるのは鉄で出来た白い部屋のみで宝物の類は無さそうである。


「注目。待ってください。コントロールパネルがあるようです。動かしてみます」


 確かに見て見れば一か所台のような場所、セラの言うコントロールパネルがあった。

 セラは無造作に近づくとコントロールパネルを調べ始める。


「だ、大丈夫なんでしょうか? そんなに触っても?」

「無問題。我々がここまでたどり着いた経緯とこの部屋の作りから考察するに、ここは博士と関わり深いものであるはず。なので」


 セラがコントロールパネルをいじり始めると薄暗かった部屋全体が明るくなった。


「……まぶしい。」

「ならゴーレム。何故このダンジョンが出来たか分かるか?」

「捜索。日記のようなデータは皆無。ですが映像データが幾つかありますので開きます」


 セラがそう言ってから数秒後、その部屋の真ん中に人物が現れた。

 いきなり現れた人物に警戒するリントたちであったが、セラが皆を落ち着かせる。


「緩和。安心してください、これは立体データです。その場にいるように見えますがそこには誰もいません」

「つまり……幻のようなものですか?」

「同意。その解釈でよろしいかと。そして紹介します。今映し出されているの彼こそが私の博士です」

《やあ、ここまでダンジョンを攻略してくれた方たち。もしくは僕のラボからここまで来た侵入者たち。どちらにせよ始めまして、もしくは久しぶり》


 博士の立体映像は淡々と見えないリントたちに対して挨拶をしてくる。


《まあ後者を考える必要は無いのかな? 侵入者がコントロールパネルをいじれる訳ないし。……だよね? 大丈夫だよね?》

「随分と自信が無さそうだが、本当にコイツがお前を作ったのか?」


 リントが与人をゆっくりと床に降ろしつつした質問に対しセラは笑みを浮かべつつ答える。


「正解。ええ、あの自信の無さは間違いなく博士です。保存されている音声データとも一致しています」

「ならいいが」

《と、いう訳でここからはダンジョンをクリアした前提で話すけど。まずダンジョンをクリアした純情な男性に謝っておくね。……あのダンジョン、深夜のテンションで造っちゃった。テヘ♪》


「お、ま、え、かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」


 その日一番の、いやもしかすれば『ルーンベル』に来てから一番の与人の怒声が空しく響き渡るのであった。

今回はここまでとなります。

果たしてこの探索の行方は如何に?

次回をご期待ください。

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