第45話 その眼は語る
第45話を更新しました。
マキナスの街並みに、一同は驚きを隠せないでいた。
与人たちは先ほどの警備隊に連れられてデフスの街中を城(という名の高層ビル)に向かっていた。
「(キョロキョロ)」
皆が興味深そうに街の様子を見ており、特にサーシャは大勢の人を見るのが初めてなのか一歩間違えれば不審者のレベルでキョロキョロしている。
「街の様子が気になりますか?」
「ヒャイ!?」
警備隊の一人に声を掛けられて驚いたサーシャはユニの後ろに回って隠れてしまう。
「すみません、その子は人に慣れていなくて」
「いえ、こちらこそ不意に声を掛けてしまい申し訳ない」
すぐに与人がフォローに入るが気にした様子もなくその兵士は歩いている。
「……それにしても、『マキナス』が発展しているとは聞きましたがここまでとは思いませんでした」
「ハハハ。他の国から来た方は皆そう言われますよ」
ストラの言葉に隊長は笑いながらそう答える。
一見して街の中は他の国と比べれば自然が少なく殺風景にも見える。
だが人の行きかいはかなり盛んなようであり、先ほどから人が途切れることは無い。
一見すれば異世界とは思えない街並みであるが住民の服が他の国とそう変わらないのがここが『ルーンベル』である事を思い出させる。
「余所の国からすれば異様な風景かも知れませんが、この人の賑わいは……我々『マキナス』に住む者の誇りですよ。異端ではありますがこうして人が集まっているという事は」
「それは……素晴らしい事だと思います」
本当に誇らしく語る隊長にユニが頷く。
そんな様子を見ながらストラは笑みを浮かべつつ、されど目は厳しく隊長から王の情報を聞き出そうとする。
「そうですね。……となるとやはりそれを統べる王も立派な方なのでしょうね」
「ええ、『マキナス』が建国して三代目の王となりますが一人として愚君などいなかった。特に当代の王は向上心が高く、さらに『マキナス』を発展させようとされていますよ」
(……となれば与人様やセラ殿が持っている知識・技術にも注目するはず。そこから突破口が見いだせるかも知れない)
その様な事を考えてるとは一切顔に出さず表面上は笑顔を浮かべつつ会話をするストラ。
その様子に少し引きつつも、与人は緊張の面持ちで歩いていた。
「……大丈夫か主?」
「だ、ダイジョウブ」
「では無さそうだぞ、全く」
呆れたように与人を見るリントに、与人は反論する。
「いやだって今後を左右する事だぞ。緊張しない方がおかしいだろ」
「まあ気が緩んでいるよりはマシだが……あまり気負いすぎるな主。失敗しても一からやり直せばいいだけの話だ」
「……簡単に言うなぁ」
「主が考え過ぎなのだ。結局のところは楽園のために主が進み、私たちがそれを支える。それだけなのだからな」
それがリントなりの激励の言葉である事を与人が気づくと与人は礼を言うのであった。
「ありがとうリント」
「フン。手のかかる主だ」
そう言って与人より前に出るリントであったが、その頬に赤みが差していた事は与人も気づいていたのであった。
「こちらでお待ちを。王に報告して参ります」
それから後、会話を挟みつつ与人たちは城に着いたのであった。
そして上下転移装置という名のエレベーターに乗り玉座の間の前までたどり着くと警備隊の人たちは中に入っていった。
「はぁ。何か一周回って落ち着いてきたけど、『マキナス』の王ってどんな人なんだろう?」
『オーシェン』の王であるドンは剛毅と言うか何と言うか……、という感じだったのを思い出しつつ想像する与人。
「……本当にこの先に『マキナス』の王がいるのでしょうか?」
「ん? アイナ先輩? それってどういう意味?」
ランにそう聞かれるとアイナは腰に差しているいる自らの分身に触れる。
「通常であれば王の御前となれば武器の類は預けるものです。だというのにその素振りも見せないとは」
無論、預けたところでアイナたちは武器を取り出す事は出来るが、向こうはその事を知らないはずである。
皆がアイナの言葉に疑問を持ち始めたところでストラが厳しい口調で言葉を放つ。
「考えられる事は幾つかありますが、今はそのような事に頭を悩ませる時ではありません。少なくとも愚君ではない以上は皆さま油断しないでください」
「……そうですね。余計な事でした」
少し顔を暗くするアイナに与人がフォローをしようとした時、玉座の間から先ほどの隊長が現れた。
「どうぞ皆さま、お通りください」
それだけ言うと隊長は先導するかのように先に入っていく。
与人は深く一度だけ深呼吸すると皆の連れて玉座の間に入っていく。
外装こそ近代の高層ビルのようであったが中は本で見たような玉座の間であった。
本来であれば文武百官が立ち並ぶであろう広さを持っていたが、今は数人の人間がいるのみであった。
そしてその奥にある玉座には何故かツナギを着た何処かで見たような顔の人が座っていた。
「ウォーロックさん?」
与人が思わず面影のあるブラッド・アライアンスのボスの名を呟くと、玉座の間に座っている人は大笑いし始めた。
「やはり思った通りのリアクションをしたな! おい、説明してやるからもっと近くに寄れ」
「王。流石にそれは……」
「え、ああ、そう? じゃあそこでいいから取り敢えず聞け」
「は、はぁ」
物凄いフランクに接して来る王に対し戸惑う与人たちはとにかく話を聞く事にする。
「さて何から話そうか。……ああやっぱりウォーロックとの関係からだろうな、うん」
「ブラッド・アライアンスのギルド長であるウォーロック氏と何かしらの関係がある。そういう事でよろしいですね」
ストラが王の様子を窺いながら訊ねると、再び大爆笑が発せられる。
「関係も何も! ウォーロックとこの俺、エクサ・マキナスは血を分けた兄弟さ!」
「っ! それはつまりウォーロックさんは王族って事ですか!?」
自分をブラッド・アライアンスに受け入れてくれたウォーロックが王族だったと知り、驚愕する与人の様子がツボに入ったのかエクサはしばらく笑い続けていた。
「あー、一年分は笑ったぜ。そうさウォーロックは俺の弟だ。先代のブラッド・アライアンスのトップから弟はその座を譲り受けたのさ。だからお前の事は色々聞いてるぜ、スローン。いや、葉山与人」
「っ!!」
思わずビクッとなる与人に対し、エクサは笑みを受けべつつ落ち着かせる。
「そう緊張するな。武装を許してるのだってお前らがどういった人間か知ってるからなんだぜ? 少しは信用してほしいもんだ」
「少しは警戒して欲しいものですが」
側近なのか一番近くにいる男性がそうぼやくが聞こえているのかいないのか、エクサは話を続ける。
「で、だ。こうして武装を許してるのも、少人数にしてやったのも全てはお前から聞きたいからだ」
「聞きたい? 何を……」
「全てさ。お前がこの『ルーンベル』に来てからここに来るまで何をして何を思ったか? 何を感じどう俺たちと接してきたか」
「全て話して貰うぞ。葉山与人」
エクサのその眼はどこまでも逃がさないと、そう語っていた。
今回はここまでとなります。
果たして与人の思いはエクサ王に届くのでしょうか?
ご期待ください。




