第46話 みんなと見る夢
46話を公開させてもらいました。
与人の話を聞いた、王の反応は?
「ふーん。誰もが排他されない楽園、ねぇ」
『マキナス』の王であるエクサに与人は今までの事や思った事、そして理想を包み隠さず話した。
皆との話し合いで元々楽園計画については話す予定ではあったので、それほど緊張せずに話す事が出来たのは幸いと言えた。
しかし与人の話を聞き終えたエクサの表情は何かを考え込んでいるようであった。
「……」
与人は少し不安になり横目で皆を見る。
王の前であるため会話は勿論であるが、ストラの魔法による通信もしないように取り決めていた。
皆それぞれ緊張や思案を巡らせている表情でエクサの出す答えを待っている。
「……いいぜ、協力しても」
「ほ、本当ですか!?」
エクサから出た言葉に思わず大声で聞き直す与人。
慌てて取り繕う与人を見ながらエクサは一切感情を見せない声で続きを話す。
「ただし、条件がある」
「条件……ですか」
予定の範囲内ではあったが実際に言われると緊張に包まれる与人。
「そう緊張するな。お前からすれば簡単な事だ」
「簡単?」
知っている技術の提供かと予想していたため、簡単と言われて少し困惑する。
そんな与人にエクサは笑いつつ与人の後ろにいるリントたちを指さす。
「お前さんの後ろにいる女。一人こっちに寄こせ」
「……は?」
思わぬ条件に与人が惚けた声を出す。
そんな与人を見てエクサは笑いながら一人一人指さす。
「当然だろ? 下手をすればあの『グリムガル』と揉めるかも知れないんだぜ? 戦力的にも優秀な奴を取りたいと思うのは当然だろ?」
「……いきなりの事ですので皆と話し合いたいのですが」
「だめだ。今、ここで決めろ」
「っ!!」
咄嗟の引き延ばしの策も即決で拒否され顔が歪む与人。
その後ろでは怒りであったり軽蔑のまなざしで皆がエクサを見ている。
だが当のエクサ本人は気にした様子も無く、むしろ与人たちを呆れたように見る。
「はぁ。まさか一国の王を相手に何の取引材料も無く保護を申し出るつもりだったのか? 呆れたぜ」
そう完全に与人を見下した様子でエクサは言葉を続ける。
「それにお前の楽園って奴も、何の犠牲も無く造れるとでも思ってたのか?」
「……」
その時、与人の脳裏を過ったのは言葉すら理解出来ずに自分を守ってくれた今は亡き友の姿であった。
与人はその顔を思い出すと覚悟を決めたように手を握り込む。
「覚悟は決まったようだな。それで? 誰を差し出す気だ?」
エクサはニヤニヤしながら与人の返事を待つ。
それに対し与人は正座をしだし頭を垂れる。
「ん?」
「ええ。差し出しましょう……この首を」
「……は?」
今度はエクサが惚けた声を出し、固まった。
周りにいる文武官もザワザワしだす。
リントを始めとした面々は言葉を口にしたいが場所が場所だけに与人を心配そうに見つめている。
「オイ。何考えてんだお前。自分の目的のために自分が死ぬ気か?」
「……先ほどの話を聞いての通り、俺は自分一人ではここまで来ることも出来なかった」
与人は頭を垂れたまま、されど声はハッキリとしたモノであった。
先ほどまで怯えながら話ていたとは思えない覇気にも似たものを感じエクサを始めとした面々は驚いた。
「あなたの言う通り、この道は犠牲無しでは無しえない事なのかも知れない。けれど、だからこそ。ここにいる誰一人として欠ける事は出来ない」
「……その意味は?」
「たった一人、俺のために犠牲になった者がいます。意思も言葉も通じなかった者ですが守るために命を落としました」
「……」
「この目的はあいつが示したものでもあります。そしてそれはもう俺一人の目標ではなくなりました」
「だからお前がいなくても達せられると? ……お前、本末転倒って知ってるか?」
さっきとは別の意味で呆れた様子のエクサに対し、与人は突如立ち上がる。
「死にたくは、ない。けれどここで仲間を犠牲にするぐらいならこんな事、言い出さなかった。この目標は、この夢は皆で見てこそ意味があるものだから。……だから」
そこでようやく与人は顔を上げてエクサの目を一切逸らさずに宣言する。
「俺の仲間に、手を出すな」
その宣言は玉座の間に静かにだけれどもしっかりとその場にいる全員の耳に届いた。
本来であれば王に対しての物言いではないが与人の雰囲気に飲まれたのか誰もそのような事は言い出さなかった。
王であるエクサ本人ですら与人の視線に押され何も言い出せなかった。
リント達も固まる中で真っ先に動いたのはエクサ王の側近であった。
「……互いに興奮しているようです。一先ず整理するので一旦外に、すぐにお呼びします」
与人たちは言われるがままに先ほどと同じ、玉座の間の前で待機する。
すでに声を出していい状況であったが、誰もが口を開こうとしない。
「……えーと。皆、怒ってる?」
「どうしてそう思うんだ、主」
「いや、どう考えても怒気が俺に向いてると思うんだけど」
「逆にあんな事を言って怒られないとでも?」
珍しくアイナが与人に対して毒を吐く。
誰もが否定しないため全員怒ってる事を与人は悟る。
「……今はその事を話し合っている場合ではありません。それについては後で時間が出来た後に、じっくり、ゆっくり、みんなで、話し合いましょう」
ストラもかなり頭にきてるらしく、やけに後半を区切りつつ強調する。
(……どのみち俺、死ぬかも。)
与人がそんな事を考えていると扉が開き、側近がその姿を見せる。
「どうぞ、王がお待ちです」
「……(ゴクッ)」
裁きを待つ罪人のように与人が中に入ると、そこには。
「も、もう限界~!!」
「頑張ってください王。あと一時間は耐えてもらわないと」
何故か縄でグルグル巻きにされた王が日本の昔の拷問である石抱を配下にされていた。
「え、え~?」
この意味不明な状況に思わず与人から変な声が漏れる。
リントたちも同じような感じなのかどう口にしていいか分からない様子である。
「申し訳ありません。あのバカは反省中ですので代わりにお答えしましょう。我々は無条件であなた方を受け入れます」
「……え!?」
「と言うより、最初から受け入れる気ではあったのです。ウォーロック様の推薦もありましたので。ですがウチのバカが葉山さまの本気度を確かめたい、とダダをこねましてあの様な芝居を。本人はああして反省中ですので」
「やはりそうでしたか」
「え? ストラ先輩気づいてたの?」
ストラの言葉に反応したランが聞き返すと頷きながら答える。
「仮にも一国の王があのような条件を出すとは思えませんでしたので。まあ女に目の無い王もいるにはいるでしょうが、聞く限りではそうとも思えなかったので」
「ええと、混乱しててよく分からないけど……。とにかく大丈夫、って事だよな」
「そういう事です。まあ与人様の言葉が迫真であったからこそ、こうしてネタばらしが出来たとも言えますが」
「よ、良かったぁ~~!!」
「……不安がるぐらいなら最初からあんな事を言うな主」
緊張がほぐれその場に座り込む与人にリントが放った言葉は皆の気持ちを代弁したようで皆が一堂に頷く。
「これにてあなた方は我々の仲間……と、言いたいところですが。その前に一つ頼まれてくれませんか?」
「何か問題が?」
「いえ、むしろ我々の都合に付き合わせてしまい申し訳ないのですが。この件に関しての報酬も払いますので」
「一体何をやらすつもりだ?」
リントがそう尋ねると側近はこう答えた。
「一言で言えば、ダンジョン探索です」
今回はここまでとなります。
次回はダンジョンへと向かいます。




