第44話 発展した異世界技術は当人たちからすれば意味不明
44話を公開しました。
ついにマキナスの地を踏んだ一行を待っていたのは?
自然豊かな『ルーンベル』において、その国は異様であった。
多くの国の文明レベルが地球で言う中世程度なのに対しその国の文明は近代に相当している。
それはこの国の始まりが地球などを中心とした異世界からの文明を吸収し出来た新しい国だからである。
アーニス教の教義からは大きく離れているが、その国から生まれる革新的な技術を求め多くの人々が集まった。
故に多くの人がその国をこう呼んだ。
――異門の国、『マキナス』と
「と言った具合ですね。『マキナス』の歴史については」
「ああ、なるほど。文化が入り混じっている訳か」
「そのおかげで夜の警戒がしやすいのは助かるがな」
ストラが簡単に『マキナス』についての歴史について説明するのを聞いていた与人は頷きながら納得する。
近くで聞いていたリントは整備された道に付けられている街灯を見ながら感想を語る。
与人たちが『マキナス』の国境を通ってすでに数週間が経とうとしていた。
『マキナス』の王都であるデフスを目的地として定めた与人たちは、途中で都市や街に寄る事もなく真っ直ぐデフスへと進んであと半日ほどで到着という所まで来ていた。
途中で何度かモンスターと遭遇した以外は何の問題も無く進んでおり寧ろ予定が早まったほどである。
だが与人の顔には緊張が浮かんでおり、それはデフスに近づくほど分かりやすくなっていた。
「主様、大丈夫ですか?」
心配した様子でアイナが声を掛けるが与人の顔は晴れない。
「いや、ようやくスタート地点かと思うと緊張が……」
「追い打ちをかけるようですが与人様。『マキナス』の王に謁見し、更に我々の身の自由を確約しない事にはスタート地点にも立てませんよ」
「ウグッ!?」
ストラの現実を踏まえた言葉に思わず胸を抑えて苦しむ与人。
心配するアイナとは対照的にランは気にした様子も無くストラに声を掛ける。
「うわぁ。ストラ先輩厳しぃ~」
「真実を言ったまでです。上に立つ者として目を背けられても困ります」
「ふ~ん。……で? アレはどうするつもり?」
ストラがランの指さした方を見れば、そこには現在このパーティーでの唯一の問題とも言える光景であった。
「……(テクテク)」
「……(コソコソ)」
「あの、サーシャさん? そろそろ目的地なので私とユニさんの後ろに隠れられるのは……」
「そうですよサーシャさん。ほら怖くない怖くない」
「……(横から顔を出す)」
「察知」
「ヒィ!?(顔を引っ込める)」
「「はぁ~」」
圧倒的な力を持って与人たちを壊滅寸前まで追い詰めたヒュドラのサーシャであったが、人間となった今現在の性格は非常に内向的であった。
ユニやカナデなど温和な性格な方はまだ言葉を交わすが、リントやレーナなど武闘派な仲間には距離を取っている。
特に以前の記憶の所為なのかセラに対しては視線が合うだけで逃げ腰になってしまう。
セラの方は既に問題にしていないが内向的なサーシャにとって殺されかけたのがかなりトラウマとなっているようである。
ここ数週間、何度も繰り返されて来た光景を見てストラは一言でまとめた。
「時間が解決するでしょう」
「……いいの? このパーティーの頭脳が出す回答がそんな適当で」
「人間関係の改善などは一朝一夕で済むものではありません。ゆっくり時間を掛けて構築しなければ。…それにそういった類は自分では無く与人様の仕事です」
無論この数週間、与人も何もしなかった訳では無い。
なんとかサーシャと皆との距離を縮めようとしたが、旅の途中のためやれる事が限られており少ししか改善の兆しは見えなかった。
「ま、そうかもね。私も少しサーシャ先輩には苦手意識はあるかな。……何より私より小さいのに胸が大きいのも気に入らないし」
「最後のは貴方のやっかみでしょう。それに戦闘する上では小さい方が有利では?」
「そうかも知れないけどさ。でも大きい方がいいと思わない? 小さい方のストラ先輩?」
「この姿で生まれたという事はこの姿が最適という事でしょう、自分はこの体で十分満足しています」
「でもお兄ちゃんが大きい方が好きって言ったら話は別なんじゃない?」
「……そのような事はありませんよ」
「デフスも近いし今回は回答の遅れは指摘しないであげるね」
ストラとランが会話をしてると、先行していたリルとティアそしてレーナが戻って来た。
「ただいま」
「お帰りリル。……何かあった?」
「いや、デフスと思われる場所が視認出来たから戻って来たんだよ」
ティアが与人に説明している隣でレーナはかなり興奮した様子で話しかけて来る。
「頭! すげぇんだよ! 何がって……とにかくすげぇんだよ!!」
「おい船。全く伝わらんぞ、もう少し語彙力身に着けて出直して来い」
「あはは。でもレーナ君の気持ちも分かるよ。私もアレをどう言い表していいか分からない」
「……すごかった。」
「よく分かりませんがとにかくデフスまで一息のようですね。行きましょう」
ストラが話をまとめて一同は先に進む。
そして皆がデフスを視界に収めると驚愕の声が漏れた。
「これって……」
特に与人とセラの驚きは仲間よりも強いものであった。
皆の驚きは未知のモノを見たという感想であったが、地球の知識を持っている与人とセラにとっては「何故ここに!?」といった驚きであった。
明らかに『ルーンベル』の文明を越えた高層建築が何本もそびえているのが視認でき、そこだけ別空間と言われても納得してしまいそうになる。
「……『マキナス』の事は知識としては知っていました。ですが、実際に見るとなると我々には異様に見えますね」
「だな。というよりもアレは本当に人が住んでいるのか? ただの鉄の塊にしか見えんぞ?」
ストラとリントがそ感想を言うのを皮切りに皆がザワザワとし始めたので与人が慌てて落ち着かせる。
「皆落ち着いて! 地図から見てもアレは確かにデフスに違いない。……それにここまで来たら進むしかない。だろ?」
与人の言葉にだいぶ落ち着きを取り戻した様子の皆に与人は自身も含め気合を入れようとする。
「よし! それじゃ皆行く」
「中断。マスターお話の途中で失礼、目的地方向から誰かが来ます」
「こちらも音で確認しました。恐らく馬に乗って五人」
セラとカナデの警告に皆が警戒を強める。
しばらくすると土煙を上げながら確かに五人の武装した、恐らく『マキナス』の兵士がこちらに向かって来た。
そして与人たちの前で五人全員が止まるのであった。
《皆さん、向こうの目的が判明するまで攻撃しないでください。》
ストラは魔法越しに皆に忠告すると、ズイと前に出る。
すると兵士たちも恐らく隊長が馬を降り、一歩前に出る。
「失礼。我々はデフスの警備隊の者だ、……ここにブラッド・アライアンスに所属しているスローンという者はいるか?」
「確かにお、私がスローンですが……王都の警備隊が御用でしょうか?」
与人が恐る恐るといった様子で聞くと隊長は気さくな笑顔を浮かべこちらの警戒を解こうとする。
「そう警戒するな。我々はそちらを害しようという訳ではない、ある方と会わせるために派遣されたのだ」
「……その、ある方とは」
ストラが確認を取るように聞くと隊長はデフスの方を向き、一際高い建物に視線を向ける。
「デフスで、いや『マキナス』で最もあなた方を待ち望み、そして最高位に座るお方。……我らが王、エクサ・マキナス様だ」
今回はここまでとなります。
次回、マキナスの王との対面です。
お楽しみに!




