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第40話 正しいとかは関係なくて

第40話を公開しました

セラとヒュドラとの激戦が始まります。

「兵装転送。タイラント・ウイング」


 セラはヒュドラに対抗するにあたり、まずは『神獣の森』で見せた飛行ユニットを召喚しヒュドラの周りを旋回《せんかい》する。

 ヒュドラはその十八の目でセラを見ているが、自ら動こうとはしなかった。

 様子を見ているのか、そもそも脅威《きょうい》の対象として見ていないのかは不明であったが、ヒュドラの意識を自分に向けさせる為にもセラは積極的に動く。


「加速」


 ただヒュドラの周りを飛んでいるだけのセラであったが、不意を突けるタイミングで突撃を開始する。

 先に転送していた兵装である二刀、スティンガーナイフを振るいヒュドラの首の一つを切り落とす。


「!!」


 首が切り落とされた事により悲鳴を上げつつ毒霧《どくきり》を吹き出すヒュドラ。

 だがユニがホワイト・ガーデンを使用している限りはセラにも船にいる与人たちにも毒は効かなかった。

 だがセラは毒をなるべく吸わないよう毒霧から距離を取る。

 ユニを信用していない訳ではなく、ホワイト・ガーデンの許容範囲を超えるかも知れないという判断での反応であった。


「兵装転送。バスターランチャー」


 タイラント・ウイングによる高速飛行で距離を取ったセラはすぐさま遠距離兵器を転送する。

 セラの肩に巨大な砲塔がそびえると、その照準をヒュドラへと向ける。


「設定。バスターランチャー、現最大火力40%……発射」


 すると砲塔から轟音が鳴り響き、魔力の弾丸が空を引き裂きながらヒュドラのもう一つの首を消し飛ばす。


「!!!」


 首が消し飛んだ痛みのためかヒュドラは叫びつつ毒霧を吹き出す。

 そしてヒュドラは与人たちがいる船を無視しセラに完全に意識を向ける。

 この時点でヒュドラは二つの事を学んでいた。

 一つは自分の毒が何かしらの方法で無効化されているということ。

 二つ目は目の前にいるセラは無視できる相手では無い、と言う事を。

 ヒュドラは毒では無く物理的に倒す為にセラに意識を集中させる事にした。


「達成。第一目標、コンプリート」


 ヒュドラが船では無く自分に集中しだした事実をもってセラの目標は半分は達せられたと言ってもいいだろう。

 あとは皆が毒を自力で解毒するだけの時間を稼《かせ》ぐか、それともヒュドラを無効化するか、そのどちらかであった。


「思考。……攻撃を再開」


 セラは考えたのちに後者を目指す事にした。

 消極的な戦いをすればヒュドラが再び船を目標にするかも知れないという判断であった。


「兵装返還、スティンガーナイフ。兵装転送、バスターブレード」


 手にしていた二刀が粒子に変換されると同時にその手にはセラの身の丈を優に超える大剣が握られていた。

 そして弾丸のように空を飛びつつヒュドラに肉薄する。

 ヒュドラの再生力はかなりのものであり既に失っている首の根本からは新しい首が生えようとしていた。

 セラは残りの首を切り落とさん勢いでバスターブレードを横薙ぎに振るう。


「!!」


 だがセラは自分の思考が安易であった事を悟る。

 ヒュドラは首の一つを犠牲にして残りの首でバスターブレードを口で受け止めたのである。

 そのままヒュドラはセラをバスターブレードごと豪快に振り回す。


「クッ!!」


 このままでは遠心力で唯一の飛行手段であるタイラント・ウイングが破壊されると判断したセラはバスターブレードから手を離す。

 手を離したのを確認したヒュドラはバスターブレードを遠くへ投げ飛ばす。

 セラは距離を取ると肩のバスターランチャーをすぐさま発射する。

 だがヒュドラは口から凄まじい勢いの水を吹き出す。

 六つの首から吐き出された高圧水流は魔力で出来た砲弾とぶつかり合って対消滅した。


「! 次弾装填」


 かき消されたのを見てセラはすぐさま二発目を撃とうとするが、行動に起こすのはヒュドラの方が速かった。

 続けざまに高圧水流を六つの首から吐き出しセラを襲う。


「回避運動」


 撃つのを取りやめ高圧水流を避ける事に専念するセラ。

 タイラント・ウイングを駆使《くし》し何とか直撃は避けるセラであったが。


「……兵装返還」


 大きすぎるのが災いし高圧水流が当たり大きく抉《えぐ》れてしまったバスターランチャーを粒子に変換する。


「兵装転送、!」


 スティンガーナイフを呼び出そうとするセラであったが、その隙を狙いヒュドラが襲いかかった。


「クッ!!」


 噛みつこうとする首を避けるセラであったが、ヒュドラは別の首でセラを薙ぎ払らった。


「~~!!」


 衝撃で声にならない声を上げながらセラは海面に叩きつけられる。

 すぐさま浮上し再びヒュドラと対峙するセラであったが、今の一撃がかなり痛んだようで行動を起こそうとしない。

 ヒュドラもセラを警戒してか動こうとしなかったが既に首の二つは戻っており、もう一つの首ももうすぐ現れるだろう。


「……ストラ氏。聞こえていますか?」

《ええ、通信は開いたままです。それにそちらの状況も確認しています》


 ヒュドラがすぐに仕掛けてこないのを見るとセラはストラに連絡を取る。


「感謝。このまま私が囮になります。皆さまはマスターを連れて何とか退避を」

《ここで死ぬ気ですかセラ殿》

「そうしなければ皆が死んでしまいます。小より大を取るのは当然のはずです」

《……》


 ストラが何も言わないのを見てセラは特攻をするためタイラント・ウイングに魔力を回す。


「陳謝。後はお任せします。マスターにも謝罪を」

《俺は許す気は無いぞ、セラ》

「……マスター」


 セラは与人の声が聞こえ、その上に特攻を止める物言いをするのに対し動揺した。


「否定。ですがマスター、今はこうするのが正しいと思われます」

《正しいかそうじゃないかじゃない。犠牲になるだなんて許さないからな》

「疑問。何故そこまで頑《かたく》なに?」

《そんなのお前に死んで欲しくないに決まってるだろ!》

「唖然《あぜん》。そんな理屈、子どもですかマスター」

《高校生はまだ十分に子どもだっ!》

「……交代。ストラ氏、マスターは感情が高ぶっています。落ち着かせて説得してください」


 セラはストラに与人を説得するように言うが、返ってきたのは思わぬ返事であった。


《残念ながらセラ殿。これに関しては自分も与人様に賛成です》

「驚愕《きょうがく》。……何故」

《こんな所で簡単に死なせるほど貴殿の力は安くありません。……それに》


 ストラはモノクルをいじりながら優しい顔でセラを見つめる。


《仲間に死んで欲しく無いのは与人様だけではありません。自分も、それに他の方々もそう簡単に死なせるつもりはありません》


 セラは今は少し離れた船の上を確認する。

 そこには毒が抜けきらず苦しそうにしながらも立ち上がろうとする皆の姿があった。


「……」

《セラ。……俺は当然、前線で戦えるほど強くない。それに頭もストラに比べれば全然だ》

「マスター?」


 与人が何を言いたいのか分からず問いかけるセラを与人は真っ直ぐ見つめている。


《こんな俺に出来るのは皆を信じる事だけだ。けどお前を、誰かを死なせたらそれすら出来なくなってしまう》


 その時の与人の頭にはあるモンスターの姿があった。

 本当に短い間で、意思疎通も満足に出来ていたかも分からない。

 だがそのモンスターの死は与人に確かな目標と無力感を与えた。


《……頼むセラ、そんな簡単に死なないでくれ。生きて、生きて俺を支えてくれ》

「マスター」


 セラが与人の名を呼んだ時、与人の頭の中に声が届いた。


《『ぎじんか』がレベルアップしました。これより『スキル』対象の能力の%を40から70に引き上がります》


 その声が与人に届くと同時に近くにいたストラや甲板にいたリントたちは力が込み上げてくるのを感じた。

 そして、それはセラも例外では無かった。


「自身の魔力向上と使用可能兵装の増加、及び既存兵装のセーフティー緩和を確認。……兵装転送、グランドアックス」


 光の粒子と共にセラの手には白を基調とした身の丈ほどの戦斧が握られていた。

 目の前の敵の魔力上昇に呼応《こおう》してかヒュドラも九つの口を大きく開き威嚇《いかく》する。

 だがセラの目には先ほどには見られない余裕があった。


「目標。敵モンスターの無力化。……いえ、マスターを生きて支えるに設定。行きます」


 セラ対ヒュドラ、その決着が近づこうとしていた。

今回はここまでとなります。

『ぎじんか』の強化によってパワーアップしたセラ。

果たしてヒュドラを倒せるのか?

次回をご期待ください。

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