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第38話 海戦が開戦

第38話公開しました!

魔王軍との戦いが始まります!

「よぉーーーし!! 野郎ども準備は良いか!!」

「この船の中で男は一人しかいないんだがな」


 レーナのお決まりのセリフに水を差すリントであったが言われた当人は気にせず気合を入れている。

 魔王軍が攻めて来る当日、与人たちは自分たちの船に乗り込んでいた。

 当然、与人もこの船に乗っていている訳だが。


《まぁ、その唯一の男も船の中でストラと共に閉じこもっている訳だけど》

《流石に与人様の実力で前線には出せませんよ。》


 全員から船の中に居るようにと言われてしまったため、少し気落ち気味な与人。

 無論、皆に悪意が無いのは与人も十分理解しているがそれでも戦闘向きでは無いカナデまで前線に出るのに、とつい思ってしまう。


「まあまあお兄ちゃん。レーナ先輩も初陣な上に海上だから気合が入ってるしわざわざ出ること無いって」

《いや実力を疑ってるんじゃ……。てか、レーナも先輩なんだな。ランの方が早いのに》

「見た目は向こうが先輩ぽいしね。こういったキャラ付けも必要でしょ?」

「……自分で言う?」


 ランのぶっちゃけた話にリルが突っ込む。

 与人はストラの魔法で皆の様子を見渡す。

 大規模な戦闘の前であるが全員余計な緊張はしていないようである。


《なんか皆落ち着いてるな。もっとこう緊張感に包まれるかと思った》

「やる事は変わりませんから。敵を倒して主様を守る、それだけです」

「うん、アイナくんの言う通りだね」


 アイナが真剣な表情で答えるとティアが会話に加わる。


「主くんもそんなに気落ちせずに、君がそこに居るだけで我々もやる気が出るのだから」

「そうですよ。ですから与人さんは終わった後の事を考えてください」

《ユニ。……酒は飲ませないからな》

「は、はぁ。それはいいですけど、何故でしょう?」

(記憶が無いのが恐ろしい。)


 ストラがモノクルを弄りつつそう思っているとセラが近づいて来る。


「進言。当時の様子は記憶していますが……。知らせますか?」

《いや、信じないだろ》


 その様に会話をしているとカナデが真剣な口調で発言する。


「皆さまお静かに。……どうやら始まるようです」


 その言葉によって温和な空気は終わりを告げるのであった。



「我は魔王軍の四天王! 海魔将軍のキング・サハギンである!」


 迫り来るモンスターの軍勢の中で一際大きいサハギン(半魚人のようなモンスター)は三又の槍を掲げ『オーシェン』の艦隊にその声を響かせる。


「これよりこの地は魔王さ」

「撃てぇぇぇぇぇ!!」


 だが折角のキング・サハギンの宣戦布告も突如降り注いだ『オーシェン』艦隊の魔力砲の一斉射撃によってかき消される。

 キング・サハギンにも相当数当たったようであるが軽傷のようで、艦隊に文句を言う。


「ケホ! ケホ! き、貴様ら! 人が一晩考えた宣戦布告を邪魔するとは! それでも人間か!」

「うるせぇ! モンスターに人間性がどうのと言われたくねぇよ! 第一いきなり攻めに来ておいて今更だろうが! やるなら来る前にやれ!」

「う、うるさいわ! この野蛮人が!」

「黙れや、この魚野郎!」


 説明が遅れたが現在キング・サハギンと子どものような言い争いをしているのは、この『オーシェン』の国のトップ、つまりは王である。

 その後も続く子どものようなののしり合いで両軍の士気しきがグングン下がっていく。


「ええい! もういいわ! 我が精鋭のサハギン部隊! 船に乗り込み人間どもを喰らってしまえ!」

「野郎ども! 魚に負けたら下働きからやり直しだ!」


「「全軍突撃ぃ!!」」


 こうして始まりはともかくとして『オーシェン』としても久しぶりとなる魔王軍との大規模な戦闘が始まったのである。



 与人たちの船は戦列の中団に配置されていたが、それでも何かしらの魔法なのか砲弾のように無数のサハギンが飛んできていた。

 他の船は取りついたサハギンに苦戦しているところも多かったが、むしろ与人たちのパーティーは接近戦に特化しすぎてるので近づいて来るサハギンたちはカモであった。


「ギャァ!」


 今も飛んできたサハギンがカナデの振動魔法によって大きく弾かれ海に沈んだ。

 運よく、いや運悪く船に乗り込んだサハギンは爪で引き裂かれたり、切られたり、突かれたり。


「おりゃあ!!」


 特に初陣となるレーナと対峙した奴らは不幸としか言いようが無かった。

 鮮やかに振るわれるカトラスによって幾重いくえにも刻まれるのだから。


「ええい! 状況はどうなっている!」


 キング・サハギンは苛立ちながら側近に確認を取る。


「現在第一班から第十一班までが出撃! 残念ながら沈めた船は三隻! 特に『オーシェン』王の側近たちの軍とやたら強い女らがいる船には近づけません!」

「クソォ! まさか人間たちがここまで粘るとは!」


 第三者的な視線で言えばキング・サハギンは最初から真正面の戦いではなく奇襲で都市を狙えば甚大じんだいな被害を出せたのである。

 『オーシェン』の艦隊は強いがそれでも活躍できるのは海の上だけなのだから。

 与人たちのようなイレギュラー要素があったにせよ、わざわざ艦隊とやり合う必要はゼロに等しい。


 だがキング・サハギンはモンスターと人間との身体能力の差を過信している。

 故に真正面から戦っても勝つのは自分たちだと信じて疑わなかった。

 それに加えて『オーシェン』は自分たちが得意な水に囲まれており、それがキング・サハギンに直球勝負をさせたのである。


「……全班に後退するように伝えよ」


 だが、ここまで来ればキング・サハギンも人間たちの実力を認めなければならない。

 その事実がキング・サハギンに覚悟を決めさせた。


「引き返すので?」

「バカ者! 魔王軍がそうやすやすと人間相手に引けるか!」

「??」

「ええい分からんのか! 貴様の脳みそは飾りか!」

「キング。自分はサハギンなので脳みそはありません」

「物の例えだバカ者! いいから奴を連れてこい! 奴を!」


 キング・サハギンの言葉でようやく何をする気なのか理解した側近は恐る恐る確認する。


「あのキング。本当によろしいので?こちらにも被害が出ますが?」

「だから後退させろと言っているのだろうが! それに海に潜れば被害は少なくなる! ウダウダ言ってないで早く連れてこさせろ!」


 側近は後ろに連れて来たキング・サハギンの言う「奴」を前線へ向かわせる。

 キング・サハギンは艦隊をにらみつける。


「人間共め、見るといい。海のモンスターは我らサハギンだけでは無く、我らすら恐れる海においての絶対の恐怖」



「不死の蛇、ヒュドラを」

今回はここまでとなります。

強敵登場の予感。

果たして与人たちは勝てるでしょうか?

次回もご期待ください!

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