第34話 幽霊船の真実
34話を公開しました!
与人たちを襲った振動の正体とは?
「お兄ちゃん! カナデ先輩! 大丈夫!?」
「え、ええ何とか。私より旦那様を」
「少し足ぶつけたけど俺も大丈夫! 痛った」
突然大きく揺れる船体に動揺する中で、三人は何とか状況を掴もうと外を見ようとするが霧が深くよく見えない。
すると丁度外にいるストラからの通信魔法が入る。
「あ、ストラか? 外の状況は一体どうなって……」
《与人様、話は後です! 今すぐ『瞬間跳躍』で自分たちをそちらに!》
「え? り、了解!」
余裕のないストラの声に非常事態が起きていると察した与人はすぐさま『瞬間跳躍』でストラとリルをこっちに移動させる。
そして光と共に現れた二人は何故か濡れている状態であった。
「す、ストラ先輩もリル先輩も大丈夫?」
「ええ何とか。……危うく海に沈む所でしたが」
「ビショビショ」
「お二人とも何があったのですか?」
カナデがそう聞くと再び船体が大きく揺れる。
それを受けてストラはモノクルだけ軽く水気を払うと状況を説明しだす。
「聞いて下さい。この船は砲撃を受けています。先ほどの船はその余波を受けて沈みました」
「砲撃? もしかして『オーシェン』の海軍に?」
ランが一番可能性がある事態を予測するがストラは首を横に振る。
「いえ。……この船と同じく幽霊船にです」
「この船以外にも幽霊船がいた、という事ですか?」
「ええ。噂が二分化されていたのは単純に二隻いたからです。……この事に気付けなかった失態の返上はいずれ」
悔しそうに言うストラはそう言うとカナデが持っていた本に目を落とす。
「それは?」
「ああ航海日記らしいんだけど、読んでる途中で砲撃を受けて」
「……リル殿とラン殿は外に出て砲撃を食い止めて下さい。その間に状況を把握します」
「無茶を簡単に言うよね、ストラ先輩」
「お二人の実力を鑑みれば寧ろ簡単だと思いますが?」
当たり前のように言い放つストラにランはニヤリと笑い槍を取り出す。
「そう言われちゃ仕方ないかな。リル先輩、行こう!」
「頑張る」
「状況は通信魔法で逐一報告します」
ランとリルは意気込みつつ外に出て迎撃を開始する。
その間にストラはカナデから本を受け取りパラパラとめくってゆく。
「とは言ってもその日記、だいぶ分厚いけど大丈夫か?」
「与人様、自分が元が何なのかお忘れですか?」
与人の言葉にそう返すとストラはパタンと本を閉じる。
「状況は分かりました。この船は五百年ほど前のこの辺りを取り締まっていた海賊船です」
「す、凄いですね。こんなに短時間で」
カナデがそう感嘆するとストラは笑みを返しつつ魔法を使いつつ全員に説明する。
「皆さん聞いて下さい。砲撃してきているのはこの船と同じく五百年ほど前にこの一帯を荒らしまわっていた海賊船です」
「えっとつまり、義賊的な海賊と根っからの悪の海賊って事か?」
「詳細は違いますが今は与人様の言ったその認識でいいかと」
《それが何で今になって争っているんですか?》
砲撃を捌きつつのせいなのか雑音が響く中でランがそう質問する。
「直接的な原因は分かりませんが、ともかく強い意思で二つの船は蘇りました。一方は略奪するつもりで、一方はそれを皆から守るつもりで」
「どうりで噂が二極化する訳ですね」
「ええ。それに分かる事もあります。もう一方の幽霊船を静めれば問題は解決です」
《けど、どうやって? 今は砲撃を捌くのに私もリル先輩も精一杯なんだけど》
「問題はそこです。せめて接近できれば話は違うのですが……」
そう言ってストラが考え込んでいる間に与人は船長の机に近づいて優しく触る。
「旦那様?」
「いや、この人は時代を渡ろうと。それこそ死んでも人々を守ろうとしているんだな、と思って」
「……そうかも知れませんね。」
「例え世間からどのように言われていても、守ろうとする意志に俺は敬意を払います。知らない船長さん」
与人がそう言うと再び船体が大きく揺れた。
「ラン殿! どうしましたか!」
《分からないけど何かこの船が動いてるみたい!》
「まさか残された残留意識が与人様の言葉と我々の魔力に反応して? だとしたら……ラン殿、リル殿! 衝撃に備えて下さい!」
《えっ!? わ、分かった! リル先輩! こっち来て掴まってて!》
「カナデ殿も与人様も何かにしがみついて下さい!」
その言葉を発し終わるよりも早く今までで大きな衝撃が船を襲う。
咄嗟に机にしがみついた与人が揺れが収まり外を見てみると霧の中でも分かるほど砲撃してきた海賊船が近い、と言うよりも相手の船に突き刺さっているような状況であった。
「ど、どうやら向こうの船に行けそうですねストラさん」
「ええ。やり方は生きていたら文句を言いたいところですがね。ラン殿、リル殿。聞こえていますか?」
《聞こえてるし見えてるよ! それにさっきからゴーストやスケルトンがこっちの船に乗り移ろうとしてる! リル先輩はもう攻撃してる!》
「ラン殿も加わってください。きっとこの船と同じく炉心があるはずです。それを破壊すれば終わりです」
「ストラさん。私も前に出ます。アンデット系統であるなら私もやりようはあります」
「カナデ殿、お願いします。前に出過ぎないように」
「ええ。ではレクイエムを奏でてきます」
そう言ってカナデが出ていくと、音に乗せた浄化魔法によってゴーストやスケルトンが無力化されていく。
リルやランもどんどん切り込んでいき既に向こう側の船に乗り移っている状況である。
「この分でしたら追加戦力を呼ぶ必要は無さそうですね」
「だな。問題は炉心が上手く見つかるかどうかだけど……ん?」
「どうしました与人様」
「いや、何か呼ぶ声が……」
そう言いながら与人は再び机に近づくと先ほどの衝撃のためか何かが机から飛び出していた。
与人が拾い上げるとそれは子どもが書いたような古い絵であった。
「これは?」
「恐らくこの船に守られた船にいた子ども描いた絵では無いでしょうか? ……死ぬ間際ですら傍に置いておくほど大切だったのでしょう」
「……」
「ラン殿そちらの状況は?」
《ねぇ! 炉心が何処にあるか分からない!? この船も相当に大きいんだけど!》
与人が絵を眺める中でストラはランに確認の連絡を入れる。
ランからの質問にストラは困ったように応答する。
「ラン殿、申し訳ないですが細かい位置までは……」
《大体でいいから!》
「船の中心部であることは確かですが……」
《了解! リル先輩! やっちゃって!》
リルはその言葉を聞くと大きく跳躍し高速で回転して船体に突撃していく。
その衝撃でゴーストとスケルトンが吹き飛ばされ船体に大きな穴が空いた。
どうやら財宝を貯蔵していた部屋に当たり、金や宝石が飛び出す。
そしてランはその飛び散る財宝の中からある魔力を帯びた宝石を見つけ出す。
「そこぉ!!」
ランが繰り出した槍の一突きが当たり、宝石は砕け散った。
すると周りにいたゴーストやスケルトンは消え去っていき船も塵となった消え去ろうとしていた。
「やったね! リル先輩!」
「……ブイ」
リルとランは船に急いで戻りつつ喜びを分かち合うのであった。
二人が戻る頃には船は霧散しており海に残ったのは与人たちが乗っている船のみとなった。
こうしてカピ近海での幽霊船騒ぎは落着するのであった。
――与人たちがどう帰るかの問題を残して。
今回はここまでとなります。
果たして無事に五人は帰る事が出来るのか?
ご期待ください!




