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第33話 前略、幽霊船の中より

第33話を公開しました!


選抜したメンバーで、与人は幽霊船へ向かう。

「上手い具合にちょうどいい船があって良かったな」

「そうですね。旦那様の日頃のおこないかと」

「ハハ。カナデ言い過ぎ」


 その様な事をカナデと話しながら中型のクルーザーのような船が海を突っ切っている。

 この船は与人たちが船を探していた際に格安で売り出されていた物である。

 幽霊船の所為で別の国の金持ちが放置していた物のようで迷う事無く買ったのである。


「行いに関しては兎も角、与人様はそういった運の巡り合わせの元にあるのかも知れませんね」

「珍しい事を言うねストラ。と言うか操縦の方はいいのか?」

「問題ありません。自動操縦にしてきましたから」


 そう言うとストラはカナデとは反対側の与人の隣に座る。


「それに珍しいという事は無いですよ。自分にはそう言った方向の知識もありますから」

「そうでしたか。でも旦那様には運が味方をしていると思う時があります」

「まあ、悪運は強い方だと思うけれど。運がいいかと聞かれると微妙だな」

「……あるいは」

「お兄ちゃん! こっち来なよ! 景色いいよ!」

「ご主人」

「聞こえてるからそんなに大きな声は出さなくても」


 デッキに出ているランとリルに呼ばれて与人は立ち上がり外に出ていく。


「……ふぅ」

「ストラさん。何を言おうとしたんですか?」

「ああ。与迷い事ですよ、忘れて下さい」

「……」


 そう言うストラであったがカナデは何時までもその顔を向けたままである。

 しばらく沈黙が続いていたがストラはやがて諦めて話し出す。


「本当に与人様は運がいいだけなのか。もしかすると誰かに仕組まれているものでは無いか? そう考えてしまうのですよ」

「……仕組まれているとすれば一体誰に」

「分かりません。そもそも全てを仕組めるとすればそれこそ神の仕業としか」


 そこで再び沈黙が二人の間に降りる。

 だがやがてカナデが立ち上がる。


「私はストラさんみたいに頭がいい訳ではありません。ですが、もしそうだったとしても我々のやる事は決まっています。ですよね」

「……ええ勿論ですよ」


 そう言ってストラも立ち上がり守るべき人を追いかけるようにデッキに出るのであった。



 しばらく穏やかな時間を過ごしていた五人であったが段々と霧が濃くなり全員に緊張感が入り始める。


「もうすぐ出ると言われるポイントです。準備はよろしいですか?」


 ストラの確認の言葉に全員が頷きランとリルは戦闘態勢に入る。

 そしてそれから数分、遂に目の前に巨大な影が現れたのであった。


「デカいな」

「そうですね。思っていたより捜索には時間が掛かりそうですね」


 それは見上げるほどの大きさの船でありぶつかればこちらが転覆てんぷくは間違いなしであった。

 だが巨大船は目の前で止まりその後は動きを見せなくなった。


「カナデ殿。船内から音は聞こえますか?」

「いえ何も。軋むような音のみで亡霊と思わしき声も聞こえません」

「……こっちも。臭いけど他に匂いしない」


 二人からそう報告を受けるとストラは少し考え込む。


「でしたらこれから班を二つ作ります。捜索班とここで指示を出し非常時には救援をする班に」

「それはいいけどストラ。何を探索するんだ?」

「船の中央に僅かながらに魔力反応を感じ取れます。捜索班にはその正体を見極めて欲しいのです。具体的に言えばカナデ殿とラン殿、そして与人様に」

「え? 私やカナデ先輩は分かるけどお兄ちゃんも?」


 全員が不思議そうにする中でストラはモノクルの位置を直しつつ端的に伝える。


「もし戦闘が両方で起こった場合、外よりも中の方が生存の可能性は高いですから」

「ああ、なるほど」

「じゃあそうと決まれば」


 ランは与人を所謂いわゆるお姫様抱っこで抱きかかえる。


「え~と、ラン? 何で?」

「ロープのようなのがあるとも限らないしこうした方が早いでしょ? カナデ先輩も背中に乗って」

「いやそうじゃなくて、何でお姫様抱っこなのかって聞いてるんだけど」

「ランさん重く無いですか?」

「大丈夫。寧ろカナデ先輩軽すぎ」

「いや聞いて……いやもういいや」


 与人も抵抗を諦めたところでストラが最終確認をする。


「いいですか。今回はあくまでも調査です。危険だと思えばすぐに撤退してください」

「了解。そっちもサポートよろしく」


 与人がそう言うとランは大きく跳躍し幽霊船に突撃していくのであった。



「……ねぇお兄ちゃん。カナデ先輩?」

「何でしょう?」

「なに?」


 とある扉の前で三人は立ち止まりランが話しかけていた。


「これって罠かな」

「「多分」」

「だよね~」


 そう三人が疑うの無理は無い。

 何せ侵入してからここまでトラブルも無く目的地に着いてしまったからである。

 あまりの手ごたえの無さに正直三人共拍子抜けであった。


《少し予想外ですが、罠であろうとこの幽霊船の正体を見極めなければいけません。気を抜かずに》

《ご主人、頑張って》


 ストラとリルからの通信を受け三人はとにかく入る事にした。


「お邪魔しま~す」

「カナデ、どう? 罠らしいものはある?」

「少なくとも私が関知できる罠はありません。物理的な罠は無いかと」

「ねぇ二人ともこれ見て!」


 与人とカナデが罠を確かめながら進む中で部屋の中心にまで進んだランが二人を呼ぶ。

 二人が追い付くとランの視線の先には一体の骸骨が机に座っていた。


「……アンデットの類いじゃないよな」

「違うよ。これは間違いなく骸骨。服から察するにこの船の船長だったんじゃないかな?」

「ええ。魔力はどうやら抱えているモノから発せられているようですね」


 よく骸骨を見てみるとある本を抱えていた。


「どうやら航海日記のようですね。……どうしますか旦那様」

「どうするって……確かめる他無いだろう?」

「じゃあそうと決まれば」


 ランはそう言うと骸骨に近づき本をひったくるように奪い取る。

 その衝撃で骸骨はバラバラになって散り散りになってしまった。


「はい、お兄ちゃん」

「ラン。……もうちょっとやり方が」

「まあまあ。それより確認しないと」

「待って下さい。本を確認するのは私がします」


 そう言ってカナデがランが差し出した本を受け取る。


「万が一にも本を開けた瞬間に罠が発動、とも考えられますので」


 そう言いながらカナデは航海日記をめくる。

 数ページ読み進めたが罠の類が発動する様子も無くカナデは改めて冒頭から読み進める。


「どうやらこの船は海賊船のようですね」

「海賊船? それにしては宝物とか見当たらないけど?」

「海賊船と言っても国の代わりにこの一帯を取り締まっていた義賊のようですよ」

「で、何でそんな船が幽霊船になっているだろう?」

「それは……」


 その瞬間、船体が大きく揺れた。


「!?!? 何が起こって!」



 幽霊船を巡る物語は佳境を迎えようとしていた。

今回はここまでとなります。

果たして一連の真相とは如何に!

次回をお楽しみに!


感想や意見をもらえると、ありがたいです。

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