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第29話 その思いに意味など要らない

第29話、更新です

与人を亡き者にするため、少女は進む

「た、隊長! 止められません!!」

「クソッ! 『スキル』持ちか! 厄介な事になったな!」


 この『ソーサラス』の重要都市であるパラケスには当然ながら多くの警備隊が配属されている。

 だがその警備隊を持ってもしてもアーニス神の加護と呼ばれる『スキル』を授かった紗良を止めるには至らなかった。


「パラケス中の警備隊を集めろ! ギルドにも至急要請を送れ! とにかくこれ以上奴を進ませるな!」


 隊長と呼ばれた男は素早く周りに指示を送る。

 隊員も命令を受けて自分が出来る事をこなしていく。

 だがそんな彼らの近くで爆発が襲い掛かる。


「クッ……!」

「全く。NPC如きが細々と襲い掛かって……。ホント邪魔」


 紗良はまるで壊れたオモチャを見るような目で爆発で吹き飛ばされた者たちの横を通り過ぎていく。


「っ! 進ませるな!」


 隊長のその言葉と共に紗良の目の前にバリアが張られる。

 更に複数人による魔法での攻撃が襲い掛かる。


「やっぱり学習しないなぁ、NPCは!」


 だが紗良はその攻撃全てを自身のバリアで防ぐとお返しとばかりに魔法を唱える。


「《エクスプロージョン》!!」


 その言葉と共に巨大な爆発が起こり周囲の警備隊を吹き飛ばす。

 行く手を遮っていたバリアも衝撃で吹き飛ばされ紗良は再び進もうとするが、突如足を掴まれる。


「ハァ……ハァ……。い、行かせん」


 それは隊長と呼ばれた者であった。

 先ほどの魔法で吹き飛ばされ重傷を負った隊長であったがこの街を守る為、必死に紗良を止めようとしていた。


「気安く触れないでよモブ風情が!」


 触れられた事に激高した紗良は隊長の体を踏みつける。


「グッ!?」


 痛みに思わず手を放してしまう隊長であったが紗良の怒りは収まらず何時までも蹴り続ける。


「頭にきた。塵も残さず消滅させてやる」


 そう言って紗良は杖を地面に転がっている隊長に向け、魔法を唱えようとしている。

 隊長自身も死を受け入れ悔しさを滲ませながら紗良を睨みつける。


「《エクスプロージョン》!」


 巨大な爆発が再び目の前で起こり爆風で辺りが吹き飛ばされる。

 だがしかし、爆炎が晴れた先の光景にまだ隊長は映っていた。


「……はぁ?」


 紗良が疑問に思っていると左右からの何かが接近するのが分かった。


「っ!」


 バリアを急いで張る紗良であったが攻撃を受けてバリアごと吹き飛ばされてしまう。


「! 一体何!?」


 今までに無い経験に思わず声を荒げる紗良の目の前には、赤い髪の女と長身の二振りの剣を持った女がこちらを睨んでいた。



「仕留め損ねたね」

「バリアが思ってたより硬いな」


 ティアとリントは目の前の惨状から一旦目を離しつつそう評価する。


「き、君たちは一体」

「ブラッド・アライアンスの者です。動かないでください、応急処置をします」


 重傷を負っている隊長にユニが簡単に説明しつつ傷を塞ぐ。


「す、すまない」

「いえ、それよりもここは私たちが押さえます。あなたは引いて体勢を立て直してください」

「だ、だが君たち三人だけでは……」

「そう思うのでしたら増援を連れて早く戻って来て下さい。パラケスを守るのがあなたの使命のはずです」

「! ……分かった。気を付けろよ」


 そう言うと隊長は転移魔法を使いこの場から離れていった。

 ユニはそれを見届けるとリントとティアに合流する。


「ユニくん。君から見てあの子の魔法どう思う?」

「魔力に任せた力任せの魔法ですね。……上級魔法を何度でも打ち込んでくるでしょう」

「ユニコーン。何度までなら防げる?」

「間があれば何度でも防げますけど、連続で来ると厳しいですね」

「……分かった。お前はとにかく防ぐ事に集中しろ。その隙に私とマンティスが仕留める」

「それがいいね。さて……向こうもやっとこっちに集中し始めたよ」


 三人が作戦を決めている間、ずっとあらぬ方向を見ていた紗良であったがようやくリントたちを睨みつける。


「何なのあんた達。たかがモブやNPCの癖に邪魔しないでよ、ミッションがクリアできないじゃない」

「モブやらNPCの言葉の意味は分からんが、そのミッションを邪魔するために私たちはここにいるんだ」

「はぁ? ……ああそう言えば仲間がいるって言ってたっけ。いいご身分じゃない、あのボッチ」


 納得したような顔で紗良は三人を見渡す。

 その目には蔑みの感情が乗っていた。


「役に立たないボッチのくせして女を侍らせてるとか……。やばっ、何かイライラしてきた」

「君が主くんをどう思うかは自由だけど私たちは好きで行動を共にしてるんだ。そういう言い方は良くないよ」

「だって本当の事じゃない。元の世界でも友達の一人もいない取り柄無しの木偶の坊。ホントさっさと死んでくれてたらこんな所まで来なくて済んだのに」

「っ! 元とは言え仲間なんでしょう! 何でそんな言い方が出来るんですか!?」


 ユニが怒りを露わにし紗良を睨みつける。

 だが紗良は何も感じない様で。


「やめてよね。仲間とか言うのアレと同類とか思われるじゃない。こんな事なら何処かに飛ばさず爆破すれば良かった。あいつの死に顔とか笑えそうじゃない?」

「っ! いい加減に!」

「よせユニコーン。話は通じそうにない」

「でも!」

「元から話し合うのは無駄だ。この場に立っている以上は生きるか死ぬかだ」


 リントがそう言うと紗良は鼻で笑いながら言い返す。


「まさか本気で私に勝てるつもりでいるの? 『アークウィザード』の『スキル』を持っている私に? 冗談はやめてよね」

「冗談では無いし、勝てるかどうかやってみないと分からないぞ。……あと一言いっておく」


 そう言うとリントは思いっきり地面を殴りつける。

 その衝撃はまるで地震のように大地を震わせた。


「なっ!」


 突然の振動に紗良が動揺する中でリントは鋭く睨みつける。


「人の主をあそこまで馬鹿にしたのだ、叩き潰される覚悟は出来ているだろうな?」

「っ!」


 リントの殺気にも似た闘気を感じ取ったのか紗良は急いで杖を構える。


「やれやれ、リントくんも素直じゃないね。けどまあ主くんのためにここは私も本気で行こうかな」


 そう言ってティアも鎌の代わりの二つの剣を構え紗良を睨みつける。


「フフ、でもリントさんらしいじゃないですか」


 ユニは笑いつつ二人にバリアを張る。

 そんな三人の様子を見て紗良は思わず怒鳴り散らす。


「な、なんなのよ! なんでアイツの為にそんなに必死になれるのよ!」

「そんなのは決まっているだろう」


 紗良の問いにリントは睨みつけながら答える。


「主が主らしく生きてるからだ」



 パラケスの中心で戦闘が始まろうとしていた。

今回はここまでとなります

次回は戦闘シーンと……

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