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倉庫の扉を突き飛ばし、セーラが中へ入ると用意してあったミーティアの服、靴、あらゆる布に火が飛び散っていた。
「ひっ!ひィィ!!!」
セーラはそばにあった棒を持ってバンバンと火を叩いて消化しようとする。棒がだめなら手で、手でも止まねば足で最後は体で体当たり。けれども一度ついてしまった炎は全く消えそうになかった。
燃える。自分の財産のすべてが。
「……なァんで!!なァんで誰もォ!!気が!ッ付かなかったァ!!」
セーラは手に火傷をおいながら火の粉を払いつづける。
「こ、交代の兵士さんがいたはずなのですが…」
「交代ィ?!」
セーラがピタリと止まった。
「そんなのは頼んでない!!」
セーラは倉庫番を一人信頼をおく者、いや最も扱いやすい者をおいていた。ミーティアと同じく単純で言われた言いつけを必ず守るような素直な小間使い。
「そいつだ!そいつを見つけなくては!」
セーラ床に倒された燭台を握りしめた。
きっと、あいつだ。
会場に叫び声が響き、どよめきが広がる。後方を見ると鬼の形相のセーラがろうそくの垂れる燭台を握りしめて荷物置き場から出てきた。壇上を大きな目でにらみつける。
しかし、そこに目当ての男はいなかった。
「あの男はどこだい!」
雷鳴のような声で対岸の壇上でオロオロする兵士たちを叱りつけた。
「す、すみません!ちょっと目を離した隙に…」
セーラはクワッと裂けるほど目を広げた。
「あの男を捕まえろ!まだこの部屋にいるはずだ!」
火事と怒号。ついでにロンが招待客たちの中に紛れ込みあたりは大混乱に陥る。
「あの男はこっちだ!」「こっちにいるぞ!」「俺が捕まえてやる!」「畜生誰か足踏みやがったな!」「お位ドサクサに紛れて何しようとしてんだ!」「だらかこっち来てくれ!」
四方八方から商人たちの悲鳴が上がった。
一度タガが外れてしまえば各々が自分の利益を優先する。人の金貨袋に手を付けようとしたり、過去の恨みを精算しようとしたり。殴ったり蹴ったり噛んだり、おおよそ大人のすることとは思えない浅ましい状況になる。
それでもなんとか兵士たちは出口へとたどり着いていたロンに追いついた。
「逃げるな!止まれ!」
室内に矢筒など持ってこれないし、槍は長くて悪目立ちする。今この場では兵士たちは携帯している剣を抜くことしかできない。
ロンが振り返り不敵な笑みを見せた。
「逃げる?まさか」
そう言ってロンは扉に寄りかかった。
「逃げるのはそっちの方だ!」
バンと扉を強く叩いて開けた。しかし兵士たちはロンを追いかけようと乗り出したのに足を止めてしまう。
ガチャガチャと鋼のぶつかる音を立てて進行してくる一団。
「我々はダイン騎士団である!この騒ぎ、中を検めせてもらうぞ!」
雄々しい軍靴の音が怪しげな集会所へと響いてきた。




