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第二十二話 静かな夜明け

第二十二話です。どうぞお読みください。

使用人らしき男に案内され、私たちは一室の和室へ通された。


質素な畳の部屋。

窓には格子がはめられ、外の様子はほとんど見えない。


当然のことながら、ベルフルール様とは引き離されてしまっていた。


「こちらでお待ちください」


使用人は深く一礼すると、静かに部屋を出ていく。


そして――


ガタン。


鈍い木の音が響いた。



「「「っ……!?」」」



「今の音は……」


楓が勢いよく立ち上がる。


「閉じ込められたでござる!」


慌てて戸へ駆け寄り、何度も引いてみる。

しかし、びくともしない。


「向こうから閂を掛けられているようでござるな……」


楓は悔しそうに拳を握った。

私はその場に立ち尽くしたまま、小さく呟く。


「やはり……私の演技を疑われたのでしょうか」


すると、ミュゲ王子が静かに首を振った。


「いいえ。」


その声は落ち着いていた。


「ベルフルール嬢とスリジエが瓜二つであることを想定できなかった僕の責任です」


「申し訳ありません」


「そんな!」


私は慌てて首を横に振る。


「ミュゲ王子が謝ることではありません」


「私も、もっと早く気付くべきでした」


重苦しい空気が部屋を包む。

その時だった。


「いやぁ」


楓がその場へどっかり座り込む。


「拙者も本当に驚いたでござる」


苦笑しながら頭を掻く。


「スリジエ殿が二人いるようにしか見えなかったでござるよ」


その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


「姉妹でもありませんし、薬を使ったわけでもないのですが……」


私は小さく笑う。


「世の中には、自分とそっくりな人が三人いるとも言いますものね」


「まこと、不思議なものでござる」


再び静けさが戻る。

誰も言葉を続けられなかった。


考えていることは皆同じだ。

これから、どうするのか。


長い沈黙の末、私は口を開く。


「……これから、どうすればいいのでしょう」


ミュゲ王子は少し考え込む。


「正直、まだ分かりません」


「梅之助が何を考えているのか、でござるな」


「僕たちの正体に気付いたのか、それとも別の狙いがあるのか」


「相手の目的が分からない以上、こちらも動きようがないでござる」


ミュゲ王子と楓は腕を組む。


「策を立てようにも、今は情報が足りなすぎるでござるな」


再び沈黙。

しかし、今度は楓がふっと笑った。


「じゃが、一つだけ安心できたことがあるでござる」


「安心できたこと?」


「ベルフルール殿が生きておられたことでござる」


その言葉に、私ははっとする。


「ということは、椿殿もきっとまだ生きている」


「ええ」


ミュゲ王子も頷いた。


「ベルフルール嬢の目を見て、そう感じました」


ミュゲ王子が顔を上げる。


「まだ希望を捨てていない。誰かが助けに来てくれると、信じ続けている目でした」


私はベルフルール様の瞳を思い出す。


縄で縛られ、やつれていても。

あの瞳だけは、死んでいなかった。


胸が熱くなる。


「……必ず助けましょう」


自然と声が漏れた。


「ベルフルール様も、椿様も」


私は二人を見つめる。


「ミュゲ王子、楓さん」


深く頭を下げる。


「どうか、お力を貸してください」


ミュゲ王子は優しく微笑んだ。


「もちろんです。あなたは一人ではありません」


楓も力強く拳を握る。


「任せるでござる!」


その一言だけで、不思議と勇気が湧いてきた。


まだ終わってはいない。

希望は、残っている。


その夜は互いを励まし合いながら、静かに夜明けを待つのだった。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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