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第二十一話 お前が何故ここに…………

第二十一話です。今回もよろしくお願いします。

その日の夕方。


私たちは楓の案内で、目的の領地へと到着した。


「もう着いたのですね」


私は周囲を見回しながら呟く。


「ここは港から近いのでござる」


楓は海の方を指差した。


「だから他国との行き来も盛んでござる。異国の品や噂も入りやすい土地なのでござるよ」


「ということは……」


ミュゲ王子が頷く。


「新兵器の噂にも興味を示してくれる可能性が高いですね」


「その通りでござる!」


楓は嬉しそうに笑うと、山の上を指差した。


「あれが城主、桜山梅之助の城でござる」


視線を向ける。


山の頂にそびえる白い城。

険しい斜面に囲まれ、とても正面から攻められるような造りではない。


「確かに……忍び込むのは難しそうですね」


「梅之助はかなり気性の荒い人物らしいでござる」


「そうなのですか?」


「忍仲間から聞いた話でござるが、気に入らない者はすぐ斬るとか」


思わず息を呑む。


そんな相手の城へ向かうのだ。

緊張しない方がおかしい。


「ですが安心するでござる」


楓は胸を張る。


「梅之助に仕えている忍の中に、拙者の知り合いがおる」


「え?」


「その者は椿殿とも親交が深いのでござる」


「つまり……」


「既に新兵器の噂は城中へ流してもらっているでござる」


「そんなことまで……!」


「危険ではありませんか?」


楓は笑った。


「大丈夫でござる」


「その者も椿殿を助けたいと思っているのでござるよ」


その言葉に少しだけ胸を撫で下ろす。


順調だ。

ここまでは──。


私は山の上の城を見つめた。


ベルフルール様。

どうか、ご無事でいてください。


必ず助けます。



翌朝。

私たちは楓の仲間に導かれ、城内へ足を踏み入れた。



◇◇◇


「上様のお成り!」


家臣の声が広間に響く。

やがて奥から、一人の男が姿を現した。


立派な髭を蓄え、豪華な着物を身にまとった男。

鋭い眼光だけで、人を威圧するような人物だった。


「あれが……」


桜山梅之助。


楓の通訳に合わせ、私たちは頭を下げる。


「面を上げよ。」


恐る恐る顔を上げる。

梅之助は私たちを値踏みするように見つめていた。


「では」


低い声が響く。


「フィザリス王国の新兵器とやらについて聞かせてもらおう」


ミュゲ王子が一歩前へ出ようとした、その時だった。

梅之助の視線が、私で止まる。


「…………」


空気が変わった。


男の瞳がゆっくりと見開かれていく。

信じられないものを見るように。


そして次の瞬間。


「な……」


顔色が一変した。


「何故、お前がここにいる……!」


勢いよく立ち上がる。

鞘から刀が抜かれ、鋭い音が広間に響いた。


「何故だ!!」


広間が凍り付く。


家臣たちも、楓も、ミュゲ王子も動けない。

刀の切っ先は、真っ直ぐ私へ向けられていた。


「答えろ」


梅之助の目には明らかな動揺が浮かんでいる。


「スリジエ」


「え……?」


どうして。

どうして私の名前を。


その瞬間、私はすべてを理解した。


ベルフルール様は、きっと日本で「スリジエ」と名乗っている。

そして私は、そのベルフルール様と瓜二つ。


幽閉したはずの人物が目の前に現れたと思えば──。


別人だとは思わない。


「ち、違います!」


私は慌てて首を振る。


「私はスリジエではありません!」


楓がすぐに日本語へ訳してくれる。


「ベルフルールと申します!」


しかし。

梅之助は鼻で笑った。


「そのような嘘が通じると思うか」


刀を握る手に力が入る。


「遠い異国に、同じ顔の女が二人もいるはずがない」


「本当なんです!」


「黙れ!」


怒号が広間に響いた。


「おい!」


梅之助は家臣たちを睨み付ける。


「今すぐ幽閉しているスリジエをここへ連れて来い!」


家臣たちは慌てて走り去る。


「もし本当にもう一人いるのなら」


梅之助は私から目を逸らさない。


「その時は、お前の話を聞いてやる」


ベルフルール様が。

ここへ来る。


胸が苦しい。


あと少しで。

あと少しで会える。


五年間、ずっと会いたかった人。

胸の鼓動は、今にも壊れてしまいそうなほど高鳴っていた。

いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

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