表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

第八話 王子、失恋!

第八話です!よろしくお願いいたします!


「ベルフルール嬢は……大丈夫だろうか」


屋敷の外で待機していたミュゲ王子は、不安げにため息をついた。

その背後では、護衛役のジャスマンが静かに腕を組んでいる。


「大丈夫ですよ。ベルフルール様なら、きっと上手くやります」


「そうだな。たとえ色仕掛けが上手くいかなかったとしても、ベルフルール嬢なら……」


そこまで言いかけた瞬間───


ふと、先ほどの彼女の顔が脳裏をよぎった。


潤んだ瞳。


じっと見つめてくる熱っぽい眼差し。


まるで、心の奥まで見透かされてしまいそうな――あの顔。


 

「っ……!」



ミュゲ王子は慌てて俯き、熱くなった顔を隠した。


「どうかなさいましたか?」


ジャスマンが怪訝そうに尋ねる。


「い、いや……何でもない」


王子は必死に平静を装った。

だが耳まで赤く染まっている。


全く誤魔化せていなかった。

 


「それにしても、本当に良かったのですか?」


「何がだ?」


ジャスマンは呆れたように肩をすくめる。


「ベルフルール様に色仕掛け役なんてさせて」


「……どういう意味だ」


「だって普通、想い人のそういう顔って、他の男に見せたくないものでしょう?」


 

――想い人。



その単語に、ミュゲ王子の肩がぴくりと揺れる。


「なのに王子は、自分から“他の男を誘惑してください”って送り出したんですよ?あとで絶対後悔しますって」


「好きな人の……そういう顔……」


王子はぽつりと呟いた。


 

……確かに。


あの視線を。


あの小首を傾げる仕草を。


あの、胸が苦しくなるような表情を。


今、別の男が見ているのだと思うと――。



「それに、相手は女慣れしている男でしょう?」


ジャスマンはさらに追撃する。


「きっと当たり前みたいにベルフルール様へ触れてますよ。肩とか腰とか、べたべたと」


 

触れる……?


ベルフルール嬢に……?


しかも、べたべた……?


 


「な、何だとおおおおっ!?」


 


ミュゲ王子が叫んだ。


「ちょ、声が大きいですよ!」


ジャスマンは慌てて周囲を見回す。


幸い、人影はない。


だが王子はそれどころではなかった。


「ベルフルール嬢が、あの男にあんな顔を見せているだと!?しかも触られているのか!?」


「だから止めれば良かったんですよ!」


「そこまで考えていなかったんだ!あの時はサントゥール君を助けることで頭がいっぱいで……!」


「他人の子供を助けるために、自分の想い人を差し出したんですか、王子は!」


「うっ……!」



痛い。


言葉が胸に刺さる。



「だ、だが今からでも遅くない! 僕がベルフルール嬢を助け出す!」



そう叫ぶなり、ミュゲ王子は塀へ足をかけた。


「だからダメですって!」


ジャスマンが慌てて腰へしがみつく。


「今突撃したら全部台無しです!」


「そんなこと関係ない! 別の方法を考えればいいだろう!彼女が他の男へあんな視線を向けていると思ったら、腹が立って仕方ないんだ!」


「だからそれを嫉妬って言うんですよ!」


「とにかく離せ、ジャスマン!」



――その時だった。

 


ガチャッ。

 


屋敷の扉が開く音が響く。


二人は反射的に塀の陰へ身を隠した。


「……あれは」


ジャスマンが目を細める。


出てきたのは――ベルフルールと、ジョンキーユだった。


 

「なっ……!?」



ミュゲ王子が息を呑む。


二人はまるで恋人同士のように、ぴったり肩を寄せ合っていた。

しかもベルフルールは、両腕でしっかりとジョンキーユの腕を抱えている。


 

「あーあ。だから言ったんですよ」


ジャスマンが遠い目をした。


「後悔しますよって」


「べ、ベルフルール嬢……」


胸の奥から、何かがすうっと抜け落ちていく。

これが失恋というものなのだろうか。


 

『ジョンキーユ様、今日はお会いできて嬉しかったですわ。今度ぜひ、秘密の場所へ連れて行ってくださいまし』


『ああ、もちろんだよ。ベルルン』


 


「「ベルルン!?」」


 


二人は同時に叫び、慌てて口を押さえた。


幸い、向こうには聞こえていないようだ。


「ベルフルール嬢を……ベルルンと……?」


ミュゲ王子の顔色がみるみる失われていく。


「いやあ、これはかなりマズいですね」


ジャスマンは容赦なく追撃した。


「向こうの方が一歩リードというか。そもそも王子、ベルフルール様に格好いいところを全然見せられてませんし」

 


グサッ!


 

アネモネの剣で刺された傷口へ、さらに別の剣が突き刺さった気分だった。


 

「ジャスマン……」


ミュゲ王子は力なく肩を落とす。


「僕を慰めてくれ……」


「無理ですね」


「何故!?」


「色仕掛けを提案したの、王子自身ですから。完全に自業自得です」


「うぅ……」


ミュゲ王子は頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ。




「ベルフルール嬢ぉ……!」



いかがだったでしょうか。可愛いミュゲ王子を少しでも好きになってくれたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ