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第七話 もうやめて下さいまし!

第七話です。重すぎる話にはしない予定なので、是非気軽にお読みください。


――というわけで。


私は今、ジョンキーユに“色仕掛け”を仕掛け、油断した隙にサントゥールの居場所を聞き出そうとしていた。


「噂通りの美貌ですわね」


「はははっ、そうだろう? 俺のカワイ子ちゃんたちにも、よく言われるよ」



か、カワイ子ちゃん!?

 


私は思わず顔を引きつらせた。


第一王子とは別方向で強烈な人だ。


正直、今すぐ帰りたい。 


「そ、そうなのですね。さすがはジョンキーユ様ですわ」


「おや? もしかしてベルフルール嬢も、俺に気があるのかな?」


「おほほ、バレてしまいました?」


「もちろんさ。君の熱い視線が、ずっと俺を追いかけているからね。こんな美しい女性に想われるなんて、俺は幸せ者だなあ」


「ほ、本当ですわね……」


何が本当なのか自分でも分からないまま、とにかく言葉を返す。


まだ“色仕掛け”らしいことは何一つしていない気がするのだけれど、この人は勝手に盛り上がっている。


 

「身分は君の方が上だけど、ため口で話してもいいかな? ベルルン」


 

べ、ベルルン!?


 

な、何ですのその気持ち悪い呼び方は!?


いいえベルフルール、落ち着きなさい。

ここで感情を爆発させれば全てが終わりますわ。



サントゥールを助けるためです。耐えるのです……!



「おほほ……もちろんですわ。とっても、嬉しいですわ」


乾いた拍手と共に、心のこもっていない笑顔を浮かべる。


そして私は、さりげなく本題へ切り込んだ。


「そういえばジョンキーユ様、とある噂を耳にしましたの」


「ほう? どんな噂かな」


「あなた様には、強くて頼もしい部下がいらっしゃるとか」


「ああ、あいつらのことか」


「あいつら?」


私が可愛らしく小首を傾げると、ジョンキーユは急に立ち上がり、私の隣へ腰を下ろした。


「ベルルン。どうして、あいつらのことが気になるんだい?」


耳元で囁かれる。

そのうえ、頭まで撫でられた。


ぞわり、と鳥肌が立つ。


同時に、顔から血の気が引いていくのが分かった。


「わ、私……部下がたくさんいて、強くて格好いい方に憧れますの。そう、あなた様のような」


「だが君には第三王子という婚約者がいるだろう? そちらの方が好みではないのかい?」


「そんなまさか」


私はわざと悲しげに目を伏せる。


「あんな方と結婚するなんて、私には耐えられませんわ。本当は……あなたのような方と結ばれたかった……」


そう言って、彼の胸へ顔を埋めた。

これ以上顔を見られたら、嫌悪感が表情に出てしまいそうだったからだ。


 

「おお、なんて愛らしい女性なんだ」

 


ジョンキーユは上機嫌で私を抱き寄せる。


うぅ……吐きそうですわ……。


「そ、その方たちは、とても有能なのですね」


「いや、そうでもないさ」


「え?」



――来た。



私は息を呑む。



「ここだけの話、あいつらには手を焼いていてね。そろそろ縁を切ろうと思っているんだ。人手も十分集まったしな」


「人手……ですの?」


ジョンキーユは意味深に笑った。



「俺は近いうちに莫大な利益を手に入れる」



「まあ! お金持ちになりますの!?」


「ああ。鉱山を手に入れたんだ。だが労働者が足りなくてね。だからあいつらに頼んで、人を集めてもらっているのさ」


「集める……?」


「鉱山で働かせているんだよ。おかげで事業は順調だ」



鉱山――?



私は内心で眉をひそめた。


この国では、国の許可なく鉱石を採掘することは禁止されている。

それなのに、人手を秘密裏に集めているということは…………


恐らく、正式な許可を取っていない。 


「まあ、素晴らしいですわ! ますますあなたに興味が湧いてしまいました」


私は必死に笑顔を作る。


「それで? その鉱山はどちらにあるのです? 私、ぜひ宝石を見てみたいですわ」


「君は欲張りだなあ。だが、そういうところも可愛いよ」


「いやですわ、ジョンキーユ様ったら」


私は愛想笑いを浮かべながら続きを促した。


「それで、どちらなのです?」



「――その前に、代価をもらわないとね」

 


「だ、代価?」


「ああ」


そう言って、ジョンキーユは自分の唇を指差した。

 


「君からの熱いキスを」

 


ぎゃああああああっ!!


 

もうキスは結構ですわよ!!


あの一回だけで十分ですわ!!


 

「え、ええ~? キスですの? 私、そんな軽い女に見えまして?」


「違う違う。ただ、俺の情報も安くはないってことさ。キス一つで済むなら、お得だろう?」


「んん~っ、もうっ!」



絶対に嫌ですわ!


死んでもしたくありませんわ!!

 


――こうなったら。

 


「えぇーいっ!」

 


「うわっ!?」


私は勢いよく彼を押し倒した。


しかし力加減を間違え、二人そろって床へ転げ落ちる。


「はははっ。困った子だなあ。そんなに積極的だなんて」


「まあ。積極的な女性はお嫌いで?」


「いや、むしろ好きだよ」


ジョンキーユは楽しそうに笑うと、私を抱え上げ、再びソファへ座り直した。


「仕方ない。今回は俺の負けだ」



……勝った覚えは全くありませんけれど。


 

「特別に教えてあげよう。場所はピッサンリという小さな村の山だ。今度、一緒に行ってみるかい?」


「まあ、素敵! 私たちだけの秘密の場所ですのね!」


私は笑顔を浮かべながら、内心でガッツポーズをした。



――よし。



これで必要な情報は聞き出せた。


あとは、どうやって無事に帰るかだけですわ。



「ベルルン」


ジョンキーユが甘ったるい声で囁く。


「今夜は、君を帰したくないな」


 

……やっぱりそうなりますわよね。



ですが、そう簡単にあなたの思い通りにはさせませんわよ!


「私も本当は離れたくありませんわ」


私は切なげに目を伏せた。


「ですが、帰りが遅くなれば父に怪しまれてしまいます。そうなれば、あなたとこうして会うことすらできなくなってしまうかもしれませんわ」


「……なるほど。それは困るな」


「でしょう?」


「では今日は諦めよう。だが、また来てくれるね?」


「ええ、もちろんですわ」

 


こうして私は、どうにか情報を聞き出し、無事に屋敷を後にしたのだった。


今回もお読みいただきありがとうございました!

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