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使徒がドジすぎて、巻き込まれた高校生が、破壊神と交渉してきます  作者: 松本正樹
第9章「風の歌を奏でん」
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第1節「星の遺跡へ」


 翌朝、俺たちは野営地を出た。


 ゼファー、タクファー、エリカ、そして俺。四人で星の遺跡を目指す。


 草原は相変わらず広い。見渡す限りの緑。風が草を撫でるたびに、銀色の波が走る。半年も暮らしたのに、この景色には飽きなかった。


「遠いのか?」


「半日ほどだ」


 ゼファーが短く答えた。いつもより口数が少ない。


『まあ、そりゃそうか』


 今日は普通の散歩じゃない。自分が末裔かどうか------運命を確かめに行くのだ。緊張して当然だろう。


隣を歩くエリカが、ちらりとゼファーを見た。何か言いたげだったが、黙って前を向き直す。珍しく空気を読んだな。


タクファーが水袋を差し出してきた。


「飲むか?」


「ありがとう」


 ぬるい水だったが、草原の匂いがした。この国の水はどこで飲んでも草の香りがする。最初は違和感があったが、今は好きだ。


半日歩いた。


俺は涼しい顔だった。無限の体力。もう慣れた。人間やめてるとか言わないでくれ。


一方、エリカは------


「......はぁ......はぁ......なんで、こんな......元気なの......」


「だから馬に乗れって言ったのに」


「乗れないもの......」


 半年経ってもエリカは馬に乗れない。乗ると落ちる。三回に一回は落ちる。もはや才能だ。


「見えたぞ」


 ゼファーが足を止めた。


草原の向こうに、灰色の岩山がそびえていた。ごつごつした岩肌が空を削るように突き上げている。草原の柔らかさとは対照的な、荒々しい山だ。


その麓に、ぽっかりと穴が開いていた。


洞窟の入口。


「ここが星の遺跡だ」


 ゼファーの声に、わずかな震えがあった。


近づくと、入口の上に何か刻まれている。風化して読めないが、文字だとわかった。洞窟の中から湿った風が吹いてくる。岩と土と------かすかに甘い匂い。何の匂いだろう。


タクファーが松明に火をつけた。パチン、と火花が散る。炎が洞窟の闇を舐めた。


「いくつか洞窟があるが、初代が掘った一番奥を目指す」


 ゼファーが先頭に立った。俺たちはその背中に続く。


壁が近い。天井が低い。松明の灯りが揺れるたびに、影が生き物みたいにうねる。足元は乾いた岩。靴底がざりっと擦れる音が反響する。



 エリカが小声で呟いた。


「ちょっとした探検みたいね」


「探検だろ、どう見ても」


「そうだけど......なんか、わくわくしない?」


 する。めちゃくちゃする。でも認めると負けな気がした。


しばらく進むと、壁に紋様が現れ始めた。丸と線を組み合わせた幾何学模様。見たことのないものだが、どこか規則性を感じる。


エリカの足が止まった。


「カイト」


 声のトーンが変わっていた。いつもの好奇心まっしぐらモード。


「この紋様......」


 エリカが壁に顔を近づけた。松明の光で紋様が浮かび上がる。


『この紋様......「アマルの世界」に載っていたものと似ている......』


 エリカの目が輝いていた。暗い洞窟の中で、その目だけがやけに明るい。


「似てるのか?」


「うん。完全に同じじゃないけど------基本構造が同じ。これ、古代語の一種だと思う」


 古代語。この洞窟の壁に刻まれた紋様が、あの本に載っていた記号と繋がっている。


偶然じゃない。


「先に進もう」


 ゼファーが促した。


エリカは名残惜しそうに壁から離れた。


『帰りにじっくり見るんだろうな、この子は』


 紋様は奥に進むほど密になっていく。壁を埋め尽くすように、びっしりと。まるで誰かが必死に何かを伝えようとしているみたいだ。


洞窟が少しずつ広がっていく。天井が高くなり、松明の光が届かなくなった。


暗闇の中を歩く。足元だけが照らされている。


やがて------空気が変わった。


冷たさの質が違う。閉じた空間から、開けた空間へ。


「着いた」


 ゼファーが立ち止まった。


松明を掲げる。


その先に広がっていたのは------


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