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使徒がドジすぎて、巻き込まれた高校生が、破壊神と交渉してきます  作者: 松本正樹
第5章「希望のアンクレット」
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第4節「旅立ち」


 王都の門をくぐった。


 振り返ると、光の結晶をまとった城壁が朝日を反射している。見送りの兵士が二人、静かに頭を下げていた。


 「この地図によると、始まりの泉は北西の方角です」


 フローシャンテリアが古い地図を広げる。羊皮紙に似た手触り。インクが少しかすれている。かなり古い地図だ。


 「行ったことは?」


 「ありません。王家に伝わる地図ですが、実際に泉を訪れた者は何世代もいないはず\...\...」


 要するに、道案内のいない冒険だ。まあ、いつものことか。


 森に入った。


 空気が変わる。澄んでいて、どこか甘い香りがする。花なのか樹液なのか。巨大な世界樹の枝が空を覆い、木漏れ日が地面に光の模様を描いていた。


 放牧民の国とはまるで違う。


 あっちは見渡す限りの草原。太陽が二つ。風が強くて、馬の匂いがした。ここは——森と光の世界だ。一歩踏み出すたびに、柔らかい苔が足裏を受け止めて、木の葉がさらさらと鳴る。どこか夢の中にいるような感覚。


 『異世界って、本当にいろいろあるんだな』


 ふわり、と光の玉が目の前を横切った。


 「また人間だ」「今度は四人もいる」「王女様も一緒だ」


 下位精霊たち。小さな声がさざめく。好奇心の塊だ。


 一匹が俺の鼻先に止まった。くすぐったい。温かい光。触ろうとしたら、ぴょんと逃げた。


 「こら、失礼ですよ」


 フローシャンテリアがたしなめるが、精霊たちは気にしない。「温かい」「変な匂い」「こっちの女の子は眼鏡してる」。好き勝手言っている。


 エリカが「変な匂いは余計よ」と小声でツッコんだ。


 ゼファーが呟く。


 「放牧民の国とは空気が違う」


 「ゼファーさんもそう思います?」


 「ああ。風の質が違う。ここの風は——優しいな」


 エリカは道端の植物に目を奪われていた。しゃがみ込んで葉をめくっている。


 「これ、図書館で見た薬草だ。実物は初めて\...\...葉脈の形が全然違う。本の挿絵、適当すぎない?」


 学者モード全開。目が輝いている。放っておくと三時間は動かない。


 「エリカ、置いてくぞ」


 「ちょっと待って! 標本にしたい——」


 「しません」


 フローシャンテリアが三人の反応を見て、ふふ、と笑った。


 「私の国を気に入ってもらえて、嬉しいです」


その笑顔に、下位精霊たちが「王女様が笑った」「珍しい」とはしゃいでいる。


 旅は順調に始まった。


 木漏れ日が四人の影を揺らしている。風が背中を押すように吹いていた。下位精霊たちが、少し離れたところからそっとついてくる。


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