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第9話 雑貨屋さん

【第一部】心の扉―始―

お団子は結局、一つに絞ることが出来ず、あんこ、よもぎ、栗の三種を選ぶことにした。


あのとき、気づけば私たちはただ見つめ合っていた──


息をするのも忘れるほどの、二人だけの静かな時間……


店主の声に我に返り、そっと目を逸らした私たち。


なぜだか、その瞬間が今も心の奥に残っている。


熱を帯びた鼓動は、今もなお、心地よく身体中を駆け巡っている。



今度は、手土産を選びに雑貨屋さんを訪れた。


店頭にはさまざまな品物が並び、一つひとつ眺めているだけでも楽しくて、時間を忘れてしまいそうになる。


「わぁ〜色んなものが置いてあるんだね〜!手土産を選ぶの、わくわくしちゃうね!」


「そうか。トワにそう言ってもらえてよかった。私はこういったものを選ぶのが大変苦手でな。何を選べばよいのかいつも迷ってしまう。だから心強い」


そう言って、また困ったように笑う栄善。


ふふふ。


なんだか今日は、栄善の意外な一面をたくさん見られた気がする。


若くして一国を治めるお殿様。


そのせいか、普段の栄善は年齢の割にとても落ち着いていて、冷静で何でもできる──そんな人だと思っていた。


だけど、こんなふうにちょっと可愛らしい一面もあるんだ。


私はというと、人にプレゼントを選ぶのがわりと得意だったりする。プレゼントを渡したとき、相手がどんな顔をするのかを思い浮かべながら、品物やラッピングを選ぶ時間がすごく好きだった。


──ここは、私の腕の見せ所。


しばらく店内を眺めていると、ふと、一つの品に目が留まった。


それは、漆塗(うるしぬ)りのお箸だった。

お箸なら、食事のたびに必ず使うもの。


それに(うるし)のお箸は、職人さんが何度も漆を塗り重ね、手間と時間をかけて仕上げていくものだと聞いたことがある。


何度も何度も、丁寧に塗り重ねられて生まれる艶やかな一膳(いちぜん)


口にするものだからこそ、そこに込められた真心やぬくもりが、じんわりと伝わってくる気がした。


さりげないけれど、温かみのある品──そう思えた。

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