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第10話 必要とされる喜び
【第一部】心の扉―始―
「栄善!この漆塗りのお箸なんてどうかな?お箸だったら食事のたびに必ず使うし、それに職人さんの真心やぬくもりが込められていて、喜んでもらえるんじゃないかな?」
「漆塗りの箸か。確かに食事のたびに使うものだな。何より……職人の真心やぬくもりが込められている。素敵な考えをするのだな、トワは」
栄善の手が、そっと頭に触れた。
温かさが、胸の奥へと広がる。
「手土産の品はこれにしよう。私もこれが気に入った。きっと喜んでもらえるであろう。トワ、感謝する」
その言葉は、静かに胸に沁みていく。
栄善のお役に立てたことが、ただそれだけのことが、どうしようもなく嬉しかった。
この世界に来てからお手伝い係として過ごす日々は、誰かの力になれることが実感できて、
──確かに、必要とされている──
そう思える時間だった。
……だけど。
私は、ずっとそうやって生きてこられたわけじゃない。
向こうの世界では、責められ、否定され、自分の存在に意味があるのか分からなくなるような日々ばかりで。
暗闇の中を、歩いていたようなものだった。
だからこそ。
栄善が心から私を必要としてくれていると感じることが、こんなにも胸の奥を温かく満たしてくれている。
「必要とされる」ことの喜びが、長い孤独をそっと溶かしていく。
そんな気がした。




