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第8話 お団子屋さん

【第一部】心の扉―始―

しばらく歩いていると、ふんわりと香ばしい匂いが漂ってきた。


お団子屋さんだ。


「近々、城に客人を迎える。本日は、昼のもてなしに(きょう)する甘味と、手土産を選びに来たのだ。そのため、トワに手伝ってもらいたい。私一人では、いささか心許(こころもと)なくてな」


そう言って困ったように笑う栄善(えいぜん)が意外で、思わず「かわいい」なんて思ってしまった。


いつもは冷静で、クールな印象だったから。


「私で良ければもちろん!」


そんな栄善に頼られたことが嬉しくて、私は自然と笑みを返した。


「トワ、恩に着る。さぁ中へ参ろう」



席につき、色とりどりのお団子をひとつずつ味わう。


みたらし、あんこ、よもぎ、きなこ、ごま──


どれもそれぞれに美味しくて、一つに絞るのが難しい。


栄善によると、ここは町でも屈指の人気を誇るお団子屋さんで、味もまた格別なのだという。


「ん〜美味しい!こんなに美味しいお団子食べたの初めて!どれも美味しいから悩んじゃうな〜」


私はあまりの美味しさに、ハムスターのように、口にお団子を頬張っている。


「ふっ、それは良かった。トワの美味しそうに食べる姿を見て私も嬉しく思う。それにしてもトワはよく食べるのだな。まるで小動物のようだ」


そう言って栄善は目を細め、くすくすと笑った。


その笑い方が、なぜだかとても美しく見えて、思わず見惚れてしまった。


その直後、自分がお団子を頬張っていることに気づき、途端に恥ずかしさが込み上げてきた。


「〜〜美味しくてついっ」


「こんなにも喜んでくれるとはこの上ない幸せだ。ほら、口元にきなこがついているぞ」


そう言って、栄善の手がそっと私の口元に触れる。


きなこを払っていたはずのその手が、やがて私の頬へと触れた。


一瞬、息が止まる。


気づけば、お互いの視線が絡んでいた。


栄善の手の温もり。


私をまっすぐ見つめる、どこか熱を帯びた眼差し……


まるで、二人だけの世界に取り残されたようで。


このまま、時が止まってしまえばいい──


そう思った、まさにその時。




「あいよ〜!追加の栗団子と黒糖団子お待ち〜!」


元気な店主の声が、賑やかな店内に響いた。

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