第7話 初めての町
【第一部】心の扉―始―
私は今、栄善と一緒に町を訪れている。
甘味処や茶屋、雑貨屋などが軒を連ね、さまざまな商いが町の通りに活気をもたらしている。
賑やかな声と香りに満ちた町は、人々の熱気にあふれていた。
「わぁ〜!すごい活気だね!」
初めて訪れた町の雰囲気に、私は胸が躍っていた。
低い建物が連なる通りには、不思議な安心感があった。
「ここに来るのは初めてか?愉しんでくれているようで何よりだ」
そう言って、栄善が優しく微笑む。
私が別の世界から来た存在だということを、この世界の誰にも明かしていない。
もちろん、栄善にも……
後ろめたさを感じながらも、人に打ち明けることが苦手な私は、なかなか口にすることができずにいた。
国を治めるお殿様という立場である以上、素性の知れない者をお城に置いておくのは気が気でないだろう。
にもかかわらず、栄善は私に何ひとつ問いただすことなく、静かに受け入れてくれている。
お手伝い係として仕えるときも、お城のみんなには、うまく話を通してくれた。
栄善には、感謝しても感謝しきれない。
そんなことを考えながら歩いていると、足元の何かにつまずき、体がぐらりと揺れた。
次に来る衝撃に備えて、思わず目を閉じる。
──けれど、次に感じたのは衝撃ではなくて、温かく包み込むようなぬくもりだった。
つまずきそうになった私を、栄善はすっと支え、そのままそっと抱き寄せてくれた。
栄善の着物の布が、私の頬をくすぐる。
「トワ大丈夫だったか?慣れない装いであるからであろう。気づかずすまなかったな」
そう言って、栄善の大きな手が私の手を包む。
「ふっ。初めて会ったときも思ったが、トワの手は小さいのだな」
温かい大きな手……
優しい微笑み……
すごく安心する……
「あっ……ありがとう栄善。小袖に草履って慣れてなくて……」
「……ここは人も多いからな。はぐれてはいけないから、私の手を離すでないぞ」
その瞬間、胸の奥で鼓動が跳ねた。
頬がじんわりと熱くなっていくのをごまかすように、私はそっとうつむいた。
そして、栄善に引かれるまま、再び歩き出した。




