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第44話 涙を越えて

【第一部】心の扉―始―

晩秋の季節も過ぎ去り、寒い冬がひそやかにその姿を現した。


私はあれからいつものようにお手伝い係としての仕事に励んでいた。


私が栄善(えいぜん)のことを想って泣いていたあの日……


栄善と哀伝(あいでん)は、険悪な雰囲気になっていなかったかな……

大丈夫だったかな……


そう思った私は、思わず哀伝に聞いてみたことがあった。


『え?何のこと?あぁ〜!全然大丈夫だよ〜。僕と栄善の仲だからトワは気にしないでね〜』


あっけらかんとそう言ってくれた哀伝に、私は胸の奥からほっとした。


いつまでも泣いてはいられない。


もうすぐ栄善の御誕辰祭(ごたんしんさい)


栄善にお願いされた御菜──芋きなこ和えとじゃがいものお味噌汁。


そして、御品書きのじゃがいもの絵。


栄善の誕生日を祝うため、真心を込めて作るその想いが、料理に乗って届きますように……


私はあの日から、栄善には会っていない。  

栄善にはもう婚約者の小梅姫(こうめひめ)がいるんだから……


小梅姫は婚約後、すでにこのお城で暮らしている。

華やかで、とても美しい方だった。


私はあのとき栄善から貰った(かんざし)を、毎日大切に身に付けている。


栄善が一生懸命に選んでくれたこの簪……


栄善が私の姿を見たときに、この簪を通して、私は大丈夫だからね──


そういう想いが少しでも伝わればいいなと、そっと願っている。



今日は雪混じりの大雨だった。


風が軒を揺らし、雨音は屋根を激しく打って唸りを上げる。 


時折、遠くで雷鳴が響き、お城の中まで震えが伝わってくる。


まるで何か不吉なことが起こりそうな──そんな嵐の日だった。

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