第42話 夜空に願う想い
【第一部】心の扉―始―
分かってた……
本当は、心の奥で分かってたの……
栄善はこの国のお殿様なんだから、縁談を断ることが難しいってことくらい。
この決断をすることで、どれほどの犠牲を払うことになるのかということも──
私だって、そのことが分からないほど子供じゃない。
朽葉ノ国は、この国にとって大切な貿易国だと言っていた。
そして、小梅姫は朽葉ノ国のお姫様──
きっと、栄善が前に話していたように、朽葉ノ国は塩がとれない内陸国なのだろう。
そして、朽葉ノ国と桂ノ国は、お互いを支え合うために、お米と塩を交換している。
それは、国の安定を守るためには欠かせない大切な繋がり。
『米と塩は天秤の両極端にあるようなもの。どちらかが欠けても国の安定は揺らいでしまうのだ』
栄善が前にそう言っていた──
縁談を断れば、国の安定が揺らいでしまうのかもしれない。
もしかしたら、私が想像する以上のことがあったのかもしれない。
だけど……
私は、そんな栄善だったからこそ惹かれたの。
この国の人たちを大切に想っている栄善だったから。
国の人たちのことを投げ出して、私と一緒になることを選ぶ栄善だったら、きっと私は栄善に惹かれてなかったと思う。
それに……
一番辛いのは、栄善のはず。
きっと、優しい栄善のことだから……
人の痛みや辛さを、人一倍分かる人だから……
すごくすごく悩んだのだろうと思うと、胸が切なくなった。
栄善、分かってる……
分かってるからね……
この想いが少しでも栄善に届きますように──
静かな夜空に、そっと願った。




