第37話 簪に込めた想い【栄善編】
【第一部】心の扉―始―
トワに私のすべてを見せた……弱さも不安も過去の痛みも。
殿になったあの日から、私の胸の奥底には羽田家の血筋ではない──その真実がずっと宿っていた。
トワに言ったあの言葉……
『ありのままの、そのままのトワでいいのだ。もっと自分を信じていいのだぞ』
自分に自信の持てない私が何を言っているんだ……
そう心の中で思いながらも、『こんな私でも』と言ったトワを前に、言わずにはいられなかった。
なぜなら彼女は──私が言ったその言葉のまま、ありのままでこんなにも魅力的なのだから。
トワがすべてを話してくれた後、私が伝えた言葉に嬉し涙を流す姿を見て……
少しでも心が軽くなり、支えられたのだと……私もトワに寄り添えたのだと嬉しく思った。
そしてついに私も心の内を明かした……
トワがくれた言葉の一つひとつが、長年胸に抱えていた重い心をまるで太陽の光のように静かにそっと溶かしてくれた。
『私は一度も栄善のことを情けない人だなんて思ったことないよ。それよりも、栄善のことをすごく尊敬してる』
『栄善の魅力あふれる人柄がそうさせてるんだよ。栄善はこの国にとって、羽田家のお殿様として、すごく必要な人なんだよ』
こんなことを言われるとは思ってもみなかった……
その瞬間、私はありのままの自分でいいのだと。
もっと自分を信じていいのだと。
心からそう思えた。
自信のなかった品選び。
その想いを胸に、私はもう迷わず自分を信じることにした。
『トワ、待たせてすまぬな。あいつらの土産の団子も買っていたら、少し遅くなってしまった』
あのときトワを待たせてしまったのは、土産の団子と──近くの雑貨屋でトワに贈る簪を買っていたからだ。
どうしてもトワに贈りたかった……
言葉では伝えきれない感謝や安堵──さまざまな想いを込めたかった。
そして、小ぶりの簪を見つけた。
桜色と紫色の可憐な花が、色漆で描かれていた。
これなら、よく動くトワの仕事の最中も付けることができそうだ。
そして何より……小柄なトワによく似合う──
私がトワに贈ったのは撫子の花が描かれた簪。
トワは知っているだろうか……
撫子の花言葉を。
簪を贈る意味を。
撫子の花言葉──純粋な愛。
簪を贈る意味は──
あなたを想っています──




