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第30話 あの日の違和感【栄善編】

【第一部】心の扉―始―

トワが、私に心の内を明かしてくれた。


その言葉を胸に留めつつ、私はふと、あの日のことを思い返していた。


トワが城にいたあの日──見慣れない装いをしていた彼女を前に、私は海を越えてきたのだろうと考えてはいた。


初めて町へ共に繰り出したときも、つまずきそうになったトワをとっさに支えた私に、彼女は少し照れたようにこう言った。


『小袖に草履って慣れてなくて……』


だから、彼女はやはり海の向こうの国からやって来た人物なのだと、そう思うことにしていた。


──だが、どこか腑に落ちないものも残っていた。


なぜなら、港の門番がいて、許可なくこの国に入ることは不可能であるからだ。


たとえ陸路で来たとしても、国境の門番や城の門番という国を守る見張りがいる。


その見張りたちの目を盗んで侵入してきたとなれば、国の防御は崩れ、大騒ぎになるのは間違いない。


だから私は、初めてトワに出会ったとき、とても焦っていた。


『お主……そこのおなご!!ここで何をしておる……っ!!』


荒々しく声を上げてしまったのは、無断でこの国へ立ち入ることは重罪だからである。トワだけでなく、門番たちも責任を問われる立場にある。


無用な責任や混乱を誰の肩にも背負わせたくなかった──


初めてトワに会ったときから、なぜか不思議と心が落ち着くような気がしていた。


それでいて、目が離せず、放っておけない気持ちが湧いてきた。


だからこそ、今にも消えてしまいそうな表情を浮かべていたトワを、私は見過ごすことなど出来なかった。


そんなトワが、国を危険にさらすような人物であるはずがない。


あのときから、この感覚はずっと芽生えていたのかもしれない。


トワが別の世界から来たと聞いたときは、驚きを隠せなかった。


そんなことが、本当にあるのかと……


だが、その言葉を聞いて、あの日城にいたことも腑に落ちる。


この出会いも、何かの巡り合わせだったのだろう。


トワのことについては、重役と信頼できる者にのみ、城にいたことを伝えている。


初めは反対する者もいたが、私が見過ごすことなど出来ない理由を話し、さらに仲間たちの助けもあって皆が納得してくれた。


それはきっと、そのときのトワの境遇が、かつての私と重なって見えたからだ。


昔の私に……


過去の傷も弱さも、今ここでトワにすべて打ち明けよう。


受け止めてくれるだろうか──


私にもう、迷いはなかった。

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