第26話 塩職人・だん吉さん
【第一部】心の扉―始―
「お〜い、栄善様〜!!」
私たちが職人さんたちの作業を眺めていると、栄善を呼ぶ元気な声が、海風に乗って聞こえてきた。
声の主が、私たちの方へ大きく手を振りながら駆け寄ってくる。
「だん吉、相変わらず元気であるな。其方のお陰で、この現場もいっそう活気づくであろう」
「へい!元気だけが取り柄なもんで!……なんて、哀伝様たちみたいなこと言ってますね、あっし!あはははは〜っ!」
「ふっ、そうだな。だん吉、紹介しよう。私の城でお手伝い係をしているトワだ。トワ、だん吉は、我が国を支える塩を作る塩職人の親方だ」
「あなたが新しく入られた、お手伝い係のトワさんでしたか!哀伝様たちからはよくお話しは伺っておりますぜ。じゃがいも占いがすごく人気のようで!あっしもぜひ、食べてみたいもんです!あはははは〜っ!」
じゃがいものことを話されてるの恥ずかしい〜〜!
しかも、こんなところでも哀伝たちは話をしてるの〜〜!!
でも、哀伝も団丸も七左衛門も、それぞれの役目をしっかり果たしているんだよね。やっぱり色んな人たちと関わりがあるんだな。
だん吉さんと挨拶を交わし、「よかったら今度、じゃがいも料理を食べにいらしてください」と伝えると──
太陽のように輝く笑顔で「もちろんでっせ!!」と手を力いっぱい上げ、元気に応えた。
その明るさに、こちらも自然と顔がほころぶ。
「だん吉、一昨日の会議で朽葉ノ国への塩の増量が決まった。そのことの方針を伝えに、後で哀伝が来るだろう。この時期は何かと忙しいところだがよろしく頼む」
「この季節はお互い様ですぜ!こうして人々を支えられていると思うと、塩職人として誇らしく思いますわ」
そう誇らしげに応えるだん吉さんは、とても輝いて見えた。
「だん吉、いつも細かく丁寧な作業、ありがたく思う。これから寒さも増していく季節ゆえ、体調にはくれぐれも気をつけるのだぞ。引き続き、よろしく頼む」
「栄善様、いつもお気遣い感謝しまっせ!もうすぐ塩の炊き納めですわ。それが済んだら、栄善様や哀伝様、お嬢たちと一杯交わす毎年恒例の行事が楽しみなんでぇ!まぁ、あんまり呑みすぎると、柚寧さんに叱られちゃいますけどね!」
「柚寧は勘定奉行だけあって、きっちりしておるからな」
「へへへっ、だけどお嬢があの三人やみんなと言い合いしている光景を見るのが、あっしら塩職人にとって年の締めの風物詩でっせ!あはははは〜!」
そのだん吉さんの笑い声に、栄善も小さく微笑む。
「ふっ、そうだな。あいつは何事にも男勝りであるからな。私も年の締めを楽しみにしている。だん吉、またな」
「栄善様とトワさん、ありがとうございやした!塩の炊き納めが済んだら、またお目にかかりやしょうぜ〜!」
潮風に乗って、だん吉さんの声が明るく広がった。
元気な塩職人の親方、だん吉さんと別れ、私たちはさらに奥へ歩みを進めた。
潮の香りと落ち葉の香りが混ざり、どこか胸が弾むような感じがした。




