表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/21

第20話 蔵のひととき

【第一部】心の扉―始―

奉書紙(ほうしょし)の数を数え終えた頃、ふとお(きく)さんがつぶやいた。


色奉書(いろぼうしょ)が少ないわね〜。大丈夫なのかしら?」


「あぁ、そうなんだよ。茶々蔵(ちゃちゃぞう)さんには伝えてあるんだけど、なかなか時間が取れないらしくてね。ほら、あの方は会議詰めでお忙しい方だからね」


茶々蔵さん……確か、このお城の家老で、白いお髭がよく似合う紳士そうなおじいさん。


私は直接お会いしたことはないけれど、城内でたまにお姿をお見かけすることがある。


哀伝(あいでん)たちの話の中でもよく話題になっているので、間接的にどんな方かなんとなく知っている。


『茶々蔵ってば、僕が栄善(えいぜん)のことを「悪の道へ誘った〜」とか言うんだよ?昔のことだし、悪の道なんて誘ってないのに本当に嫌になっちゃうよ〜』


そんな話から、きっと幼い頃からみんなのことを見守ってきた方なんだろうなと、勝手に親近感が湧いている。


やんちゃ坊主だったみたいだし、幼い男の子四人の面倒を見るのはきっと大変だっただろうな。


団丸(だんまる)なんて元気すぎだし……そう考えると、つい可笑しくなってきた。


それにしても、紙が足りないみたい……

大丈夫なのかな?


お手伝い係として誰かの力になれることが何よりも嬉しかった私は、考えもなしにこんなことを口にしてしまった。


「それでしたら私、明日お休みなので買ってきますよ!この間、町への行き方も覚えましたし、お店の名前を教えていただければ町の人に聞いて行ってみます!」


「ありがとうトワさん。その気持ちとても嬉しいよ。だけどね、奉書紙はこの国では、家老の茶々蔵さんかお殿様の栄善様しか買えないんだよ」


そう松風(しょうふう)さんは、穏やかに説明してくれた。


思わず私は口をポカンと開けてしまう。


え……?そうなんだ……

と言うか、普通に考えて、私はなんて可笑しなことを口にしてしまったんだろう。


お菊さんだって『奉書紙はとても貴重な紙だから施錠をして厳重に保管されている』って言ってたじゃない……!


帳簿まで金庫に入っていたし、実際、施錠された金庫をこの目で見てるのに〜!


そんな貴重な紙を、私なんかが買えるはずないのに〜!

私のばか、ばか!


しかも、まさか国レベルの話だったなんて……!!


あぁ、穴があったら入りたいって、まさにこのこと。

羞恥心が増して、この場から逃げ出したくなった。


「松風さん、トワちゃんとても優しい子でしょ〜。人を想う気持ちが本当に素敵なのよ〜」


うぅ……お菊さん……!

恥ずかしくて思わず逃げ出したくなったけれど、お菊さんの優しい言葉に心から救われた。


松風さんも「本当にそうだね。トワさんの一つひとつの作業には、心がこもっているのが伝わるよ」なんて言ってくれて、ほのぼのとしたお二人の雰囲気に、私はとても心地よさを感じた。


── そのときだった。


「お菊にトワ、ここに居たのだな」


ずっと聞きたくて、会いたくてたまらなかった声が、蔵の中に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ