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第19話 蔵の管理者・松風さん

【第一部】心の扉―始―

「えっと……炭に、薪に、火打ち石は──揃ってる、っと」


薄暗い蔵の中、並べられた備品を一つひとつ確認しながらそう呟く。


「備品が多くてね、一人じゃ大変だったのよ〜。トワちゃんと二人だと仕事も早くて助かるわぁ〜」


そう言って、お(きく)さんが笑いながら帳面に筆を走らせる。


その筆の音が、静かな蔵の中にさらさらと響いた。


こうした細やかな作業も、この国を支えるすべての人たちにとって、欠かせない大切な役割のひとつだ。


お手伝い係の備品確認は、月に一度の作業らしく仕事に少しずつ慣れてきた私も、ようやく手伝わせてもらえることになった。


「お菊さんのお役に立てて嬉しいです」


「ふふふ。あとは文房具類だけね。今度は私が数える番よ。さあ、頑張るわよ〜」


お菊さんの優しい掛け声と共に、次の作業に取り掛かった。



「よし、これで通常の備品は終わりね。あとは紙の確認で最後よ。松風(しょうふう)さんのところへ行きましょう」


お菊さんはそう言うと、軽やかな足取りで蔵の奥へと足を踏み入れる。


私もその後を追い、蔵の奥へと進む。


「やあ、お菊さん、トワさん。紙の確認だね。まずは奉書紙(ほうしょし)から始めようかね。施錠を外すから、少し待っててな」


この柔らかい雰囲気の男性は、この蔵の管理者の松風(しょうふう)さん。


松風さんは蔵の物資管理を担っている。お城の紙は蔵の奥の棚に収められ、帳簿で厳密に記録されているという。


そのため私は御品書きを書くたび、松風さんのところへ紙をもらいに行っている。


「トワさん、いつも丁寧に御品書きを書いてくれてありがとね」なんて言ってくれて、とても気さくで優しい方だ。


「わぁ〜私、蔵の奥って初めて入ります。こんなに大きな金庫があるんですね。この中に奉書紙が入っているんですか?」


「ふふふっ。そうなのよ。奉書紙はとても貴重な紙だからね、施錠をして厳重に保管されているのよ」


金庫に入れ、施錠して保管するほど貴重な紙なんだな……どんな状態で保管されているんだろう。


初めて見る金庫の中身に、期待で胸が高鳴った。


蔵の奥はひんやりとしていて、木と紙のやさしい香りがふんわりと漂う。


金庫の周りの棚には、あらゆる紙がきちんと整頓され並んでいた。一枚一枚が大切に扱われているのが、静かに伝わってきた。


ふと松風さんに目を向けると、にっこりと笑って、金庫の鍵を回した。


「カチッ」と重厚な音が響き、金庫の扉がゆっくりと開いた。


薄暗い中でも、わずかに(うるし)のような艶を放つ棚が整然と並んでいた。奉書紙が一枚一枚、丁寧に積まれているのが見える。


私は奉書紙って、一つの種類だと思っていたのだけど、棚の中には大きな紙や小さな紙、淡い色付きの紙も混ざっていた。


ぱっと見は、普段使っている御品書きの紙と変わらないのに……棚の奥の影や光の加減から、紙の質感がそっと伝わってくる。


紙にも色んな種類があるんだなぁ、と触れずにいても自然と心に感じられた。


「さあ、取り掛かろうかね」


そう言った松風さんが、金庫の中にある小さな箱から帳簿を取り出す。箱の中には、印鑑が二つ入っているのが見えた。


何に使うんだろう?


帳簿まで金庫に入っているのだから、ここまで管理を徹底しなければならないほど貴重な紙なんだな。


「じゃあ、私が数を数えるからお菊さんとトワさんは帳簿に記録してもらえるかい?」


「わかりました!お菊さん、私にやらせてください」


「ふふふ。よろしくね、トワちゃん」


そうして笑顔を交わしながら、奉書紙の確認に取り掛かった。

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