第17話 御品書き
【第一部】心の扉―始―
その日の朝──
朝食の準備も終わり、私は最後の仕上げに取りかかっていた。
それは、御品書きを書くこと。
お城では朝食と夕食のたびに、料理と一緒に、御品書きを添えるのがしきたりらしい。
この世界では、ボールペンなんてものはないから筆を使って書く。私は子供のころから習字を習っていて、段も持っている。
料理は大の苦手だけど、字を書くのは得意中の得意。
特に筆なら、自信がある──
朝食と夕食時には、食堂前にその日の御品書きを貼り出している。
栄善はいつも多忙で、基本的に自室で食事をとるため、御品書きは私の務めとしてお膳に添えることになっている。
お城では紙の扱いがとても厳重で、御品書きを個別に添えることができるのは、お殿様である栄善に限られていた。
そんな忙しい栄善も、朝食はたまにみんなと一緒に食堂で食べることもあるけど──
栄善も、本当はみんなと一緒に食べたいのかな……
だから、栄善にも楽しんでもらえるように、じゃがいも料理の日にはじゃがいもの絵を添えたりして……
実は、これをちょっとした楽しみにしている人も多いみたいで、「今日はじゃがいもがあるぞー!」なんて声が聞こえてくることも。
「トワちゃんの書く字は、本当に気品があって綺麗だわ〜。私は字を書くことが苦手だから御品書きをトワちゃんが書いてくれて本当に嬉しいのよ〜。ふふふ。ありがとう」
「ふふっ。お菊さんにそう言っていただけて私も嬉しいです!料理は苦手ですけど……字なら任せてくださいね!」
そう言って、お菊さんと笑い合った。
さあ今日も、お城を陰から支える存在として頑張るぞ〜!!
*
気合いを入れて御品書きも書き終えたころ、哀伝たちがやってきた。
「やっほ〜お菊さんにトワ〜。今日は今から朝座だから、二人の顔を見に来たよ〜」
「あと、今日の御品書きも見に来たんだ!おいらもうお腹減って倒れそうだけど……もうしばらく辛抱だな!」
「お前は深夜まで訓練に励みすぎなんだよ。どこまで体力ゴリラなんだ……」
「ふふふ、みんなおはよう」
「哀伝、団丸、七左衛門おはよう!今日は朝から朝座なんだね。美味しいご飯ができてるから楽しみにしててね!」
私がそう言うと、三人とも元気よく返事をして、その場を後にした。
それにしても、最近みんな忙しそう。
だけど──そうだよね。
彼ら三人は、護衛を名目にしているけれど、実はそれぞれ別の役職を担っている。
哀伝は、交易相談役。
団丸は、訓練隊長。
七左衛門は、戦術担当。
私には、難しくてよく分からないけれど……
栄善と共に、国を支える彼らは、いつも明るくて元気いっぱい。
だけどみんな、重要な任務を任されていて──
……尊敬しちゃうな。
でも、団丸の“体力ゴリラ”には思わず笑っちゃいそうだった。
お城のみんなが心地よく、快適に過ごせるように。
その想いを胸に、私は今日も仕事に励んだ。




