第15話 幸せを噛み締めて【栄善編】
【第一部】心の扉―始―
トワがあまりにも無邪気で……柔らかな笑顔を向けてくるものだから、思わず見惚れてしまっていた。
私に向けられた、まるで陽だまりのようなその笑顔を、ずっと見ていたくて──
私の時間だけが、静かにゆっくりと流れているかのようだった。
夕日に染まるトワの顔。そのせいか、どこか幼く見えて──気づけば目が離せなくなっていた。
視線を逸らすのが遅れて、鼓動がひとつ跳ねた。
固まって動かないでいる私を、呼ぶ声が聞こえる。
どうやらトワは、手土産の品を選ぶのに時間がかかってしまったから──私が疲れてしまったのだと、そう思ったようだ。
私がトワを付き合わせたというのに……
海を越えてきたのかどうかは分からないが、トワはお城という慣れない場所で、精一杯務めてくれている。
今日だって、私の苦手な手土産選びを助けてもらい、客人のことを真剣に考えながら一生懸命に選んでくれた。
──本当は、疲れているのはトワの方なのに。
それでもトワは「今日は帰ったらゆっくり休んでほしいな」と私を気遣う言葉をくれた。
自分のことよりも、私のことを心配してくれているトワに、愛しさが込み上げてくる。
……気づけばそんなトワに、心まで揺さぶられている自分がいた。
きっと今、私の顔は紅色に染まっているだろう。
そのことをトワに悟られないように……
私の胸の奥の鼓動を誤魔化すように……
トワの問いかけに、冷静を装い答える。
私の返答に、安堵したように静かに微笑むトワ。
……かと思えば、何かを思い出したように、はっと頬を赤らめていた。
そして今度は、私も皆と同じように、トワの剥いたじゃがいもで本日の運勢を占っているのかと聞いてきた。
表情がころころと変わる彼女を見ていると、自然と頬が緩んでしまう。
今朝、私の味噌汁に入っていたじゃがいもは、“当たり”どころではなく“大当たり”だった。
だからこそ、町へ赴く前、私は胸を躍らせていたのだ。
トワと過ごす町──どんな嬉しいことが待ち受けているのだろうかと。
城での噂では、“当たり”が出れば「一日、良い日になる」と言われている。
けれど私が「一日、幸せに過ごせる」とトワに伝えたのは──
……心から、そう感じていたからだ。
占いを信じて胸を躍らせていたとトワに悟られたくなくて、私は少し笑って誤魔化した。
隣で幸せそうに笑う君を見つめながら……
私は幸せを噛み締めて、城へと歩いてゆく。




