第14話 幸せな一日
【第一部】心の扉―始―
そうして、ふと彼の反応に気づく。
「……」
「ん、栄善?」
栄善が固まっている。どうしたんだろう?
心なしか、顔がほんのり赤く見える。
朝から町へ出て疲れちゃったのかな。
栄善は毎日忙しいから、一日中外出していたら疲れちゃうよね……
手土産を選ぶのも苦手だと言っていたし、店主さんとのやりとりもなんだか難しそうだったし……神経もたくさん使ったのかもしれない。
「栄善、今日は手土産の品を選ぶのに時間かかっちゃってごめんね。疲れちゃったよね?今日は帰ったらゆっくり休んでほしいな」
「……何を言う。私はトワに選定を手伝ってもらえて、誠に感謝している。何よりいろんなトワを知ることができた。実に良い一日だった。本日、私の運勢は“当たり”であったからな。……あの運勢は、やはり当たっているな」
そう言って栄善が、ふわりと微笑んだ。
そっか……疲れてるのかと思ったけど、そうじゃなかったんだ。なんだかちょっとホッとした。
顔が赤く見えたから、疲れて体調でも崩したのかと心配しちゃったけど……
栄善にとって、“良い一日”だったのなら私も嬉しいなぁ。
今日の運勢も、栄善……よかったみたいだし!
……ん?
運勢……?
「当たり」って……
あっ──────!!!!
「そういえば!!朝みんなで話してたときに思ったんだけど……栄善もじゃがいもで、今日の運勢決めてたの〜〜」
「あぁ。トワの剥くじゃがいもの形で、本日の運勢を占うのは城中で話題になっているからな。特に歪な形のときは──“一日、幸せに過ごせる”と言われている。皆それを“当たり”と呼んで楽しんでいるんだ。……実のところ私も。朝食にじゃがいもが出る日は、こっそり楽しみにしているのだよ。本日のような“当たり”の日は、特に……な。」
そう言って、少し照れたように柔らかく笑った栄善。
やっぱり普段の栄善って、ちょっぴり可愛らしい人だなぁ。今日一日、栄善と過ごしたからこそ気づけた新たな一面。
そう考えると、私にとっても今日はきっと“当たり”だった。心から幸せな一日だったと思う。
あながち、私のじゃがいも占いも侮れないのかもしれない。
自分で言って、ちょっぴり笑ってしまった。
私はあまりに幸せで──この“買い物”にどんな意味があるのかなど、まだ知る由もなかった。




