第13話 穏やかな刻と過去の影
【第一部】心の扉―始―
そのあとも互いに、たわいない話をしながら歩いている。
「そういえば栄善。町へ出掛けたのに、哀伝たちは一緒に来なくてよかったの?」
「あぁ。私に護衛がつくのは、他国へ赴くときのみだ。他国には路傍斬りなどという物騒な者が現れる国もあるが、この国にはおらぬ。ゆえに、ここでは護衛はつけていない」
「路傍斬りって……?」
「通りすがりの者を無差別に斬る者のことだ。過去に他国へ赴く際、城の者で襲われた者も何人かいる」
……私の世界でいう通り魔みたいなものなのかな?
「……そうだったんだ。襲われた方々は大丈夫だったの?」
「あぁ……襲われた箇所には傷や痣が残っておるが、命に別状はなく、今も城に仕えてくれている」
「命に別状がなかったのならよかった」
「私もそのときは誠に安心した……」
そう言った栄善の表情は、わずかに切なさを含みながらも、どこか安堵に満ちていた。その奥にある出来事や痛みを、私はほんの少しだけ垣間見た気がした。
「この国に路傍斬りがいないのなら、栄善に護衛がついていないのも納得だね」
「ああ。この国の治安や情勢は把握している。何より男たる者、護られてばかりでは情けないであろう。……しかも、幼馴染であるあいつらにな」
栄善は、ここにはいない彼らを思い浮かべているのか、遠くを見つめ、小さく微笑んだ。
幼いころから共に過ごしてきた彼らの絆が、ほんの少しだけ羨ましく思えた。
──それにしても、栄善は本当にすごいなぁ。
先ほどの話に思いを馳せながら、町の様子を静かに振り返る。
活気があり、治安もとても良かった。
自然も豊かで、空気までやさしかった。
若くしてこの国のお殿様として、しっかり国を治めているなんて……やっぱりすごい人だ。
「トワ。私が忙しく、なかなか顔を出せずにいることを、いつもすまなく思っている。あいつらには様子を見てもらっていて感謝しているのだ」
「全然そんなことないよ!むしろ感謝するのは私の方!お城でお手伝い係として働かせてもらって、しかもお部屋まで用意してくれて……こんなふうに気にかけてもらえて……栄善、本当にありがとう!」
栄善の優しさが、あたたかさが、胸いっぱいに広がって、ただただ嬉しくて……気づけば自然と笑みがあふれていた。




