ロケット発射!
2人がテントに近づくと、中で4,5人が丸テーブルの一か所に集まり、一つのソラの画面を見ながらごちゃごちゃと話していた。
「こんにちはー」
青さの流れ込む陰に入りながら声をかけると、ちらほらと挨拶が返っていく。
ベストは彼らの見る画面を体を傾けて覗き込んだ。
「まだ考えてるんですか?」
そう言って笑いながら、その前に座るスキンヘッドを見る。スキヘはうーんと腕を組み、何やら唸っていた。後ろから来た青バナもその画面をちらっと覗き込んでいく。
ベストは一瞬固まり、僅かな緊張とともに声を出した。
「…もう変えないですよね?」
「いや考えてるだけですよ」
スキヘは画面から目をずらさずに答える。横で他の人々が、そろそろ行こうかと動いていく中、ベストの髪が揺れた。
「良かった……あっすいませんちょっと私これから急用ができて」
思い出したように目を落とすと、その場の目線がいくらかそちらに向く。
「一応、確認の段取りをまとめておいたんで、誰か代わりお願いできませんか?」
そう言いながら、何かの光の影を手元に出すと、そこで立ってポケットに手を入れていたロン毛の人が応えた。
「俺がやりましょうか?」
お願いしますと、ベストは頷いて渡していく。受け取ったロン毛は、手元のデータの影をじっと眺めた。
「新さんは行けたっけ?」
ロン毛は顔を上げ、スキヘの方に声を振る。立ち上がっていたスキヘ新はゆっくりと歩き、テントの中を移動しながら、まだ胸元に映る画面を見ていた。
「いや……僕もちょっと夜まで用事があるんで多分行けないです」
言葉の途中で視界に光が広がり、ようやく画面から目を上げると、賑やかな砂浜の様子があった。新は歩きだしながら、画面を手元から消していく。
一方浜辺にて。
人の賑わいが少し遠くに聞こえる中、柔草の髪がいた。ゆるんだ波が靴にかかりながら歩き、読んでいる雑誌がなびいている。
「ナギサさーん!」
ふと声がして振り向くと、イチョウの髪の男形が、小走りで近づいてきていた。麦藁帽は今日は無いようだ。
ナギサが挨拶の声を出すと、
「こんにちはー……どうですか?何かイベントの案、思いつきました?」
と服をばらばらとなびかせ、トオルは軽く言葉を向けてくる。ナギサは雑誌を閉じた。
「うーんそうですね……ちょっと考えたのは雪山でアニメ視聴会とか…二次元で祭りやるとか…」
「えっ何ですか?w……雪山でアニメ?」
一瞬吹き出したトオルは、腰に手を当て、軽い笑いを浮かす。ナギサは口元を緩めた。
「はい…皆でこたつに入ってみかん食べながらみたいな……w」
「それいいですね!w」
トオルが声を膨らませるのに、笑みにさらされナギサは補足を続ける。
「でも雪山はモンスターが強くて、場所を維持し続けるのが難しいらしくて」
「……まあそっか」
遠くに視線を移したトオルは、納得するように相槌を打つ。ゆっくりとナギサは歩き始め、波を小さく散らしていった。
「はい……だからラジオの他の人たちも、雪山ではあんまりイベントやってないらしいです」
「あぁ……でもう一つは?」
ついて歩きながらトオルは横を見る。
「もう一つは……二次元で祭りをするっていう……」
そう言いながらソラを触るナギサの横で、トオルは首をひねった。
「二次元で祭り……っていうのはどういう意味ですか?」
眼鏡を掛けかけたナギサは、ずらして顔を上げる。
「最近二次元の世界でキャラクターを動かして色々やるっていうのが、ちょっと流行ってるような気がしてて」
手を下ろして説明を加えていくと、トオルは遠くをじっと見ながら聞き漂う。
「『ゆらゆら』っていう作品とかご存じですか?」
「あぁ!知ってます」
手元でレンズを拭きながら横を見上げると、振り向いたトオルと目が合う。
「あれは色んな作品について、メタ的に中のキャラが喋るっていう感じですよね」
そうですねと、トオルはそれを聞きながら頷く。
「あと最近は、アニメラジオの方でもそういうコーナーやってるみたいで」
「あー、あれは同じ人が関わってますよ!」
声を上げたトオルは、記憶に触れるように言った。
そうなんですかと、不意にナギサがぱっと振り向く。顔に眼鏡がついている。可愛い。
立ち止まっていくトオルは肯定すると、ナギサは巡りながら続けた。
「……それでそういうのがあるんだったら、イベント自体も中でやる…みたいな?…」
自分でも少し首をひねりながら言うと、トオルは頬を揺らがせ、質問を向ける。
「イベントを中でやるって、具体的にはどういう事やるんですか?」
「いや……そこはまだ考えてないんですけどw」
2人は笑った。
少し海岸から逸れていくと、ロケット発射実験の場所に差し掛かっていく。大きなロケットがあり、その周りに人が飛び回っていた。
「トオルさんは何か考えました?」
手に提げて持っていた雑誌をソラに仕舞いながら、ナギサが聞く。
「んー自分は……新作アニメフェアとか考えたりしたんですけど」
トオルはロケットの方を眺めながらぼんやりと答えると、ナギサはどこか遠くの方を見た。
「……新作アニメフェアってことは……」
「新作のアニメの発表と一緒にグッズを売ったり……みたいな?」
ふらふらと繋げて横に振ると、遠くを見たままナギサは相槌を打つ。
「なるほど……何かアニメ館的な……料理とか作ったりとかですか?」
そう言いロケットから目を離していくと、トオルは顔を開いた。
「それ良いっすね!」
「発表ってどういう形をとるんですか?……映像流したりとか?」
続けて流れてくる質問に、トオルは巡っていく。
「それもいいですね。……そういう想像じゃなかったけど……」
そう言い足元にある何かへ向かいしゃがんでいくと、ナギサも止まっていった。トオルはすぐに顔を上げ、
「あっ混ぜたらどうですか?さっきのと」
眼鏡を外しかけるナギサは、ちらっと下を見る。
「……視聴会ですか?」
「そうです。……あハネさん」
しゃがんだトオルは答えながら、近くを通りがかった小さい人影に声をかけた。空色の髪は声とともに振り向く。紙袋を持って、パンをもしゃもしゃと食っている。山で八重と一緒にいた古代人。
「新作アニメフェア……雪山視聴会とかどう?」
トオルはそのまま言っていくと、ハネはニヤっと笑う。
「何それw」
笑いを膨らませながら、たっと近づいてきた。トオルはつられて笑う。
「…2つのイベントを組み合わせるみたいな?」
横にしゃがんだハネはごくりと飲み込み、
「今度何かイベントやろうっていうやつ?……えっ雪山?」
と再びぱくっとパンをくわえていく。
「いや……雪山はいいんですけどw」
ナギサがそれを聞いて上からずれ込んで入ってくる。トオルも言葉を入れ、
「モンスター的に厳しそうだから」
と補っていくと、ハネは食べながら、んぁーと思案と理解の声を出した。
ナギサは体勢を少し揺らし、辺りに目をやる。
「どこかいい場所無いですかね」
うーんとハネは唸り、遠くを見だすと、すぐに違う方向からハネさーん!と呼ぶ声がして、その方へ首を振る。
「めっちゃパン買ってるね」
トオルが目の前で腕に抱えられた紙袋を見て言うと、ハネは顔を戻した。
「うん……アニメ館でパンの開発してるらしくて、手伝ってるんだよね」
「あぁ!……へー」
「ちょっとすいませんっ」
食べかけのパンをぼんやりと振っていたハネは、そう言うと声のした方へ身を起こして走りだした。
「ハネさん!」
広い階段には爽やかな空気が通り、さらさらと砂がかかっていた。トオルは下りていきながら声を出すと、眼下の階段の中ほどで、空色の髪がくるっと振り返った。相変わらずもしゃもしゃと食っている。その向こうには、下の階の水の揺れが見える。(ここも気にしないでいいよ、細かい設定なんで)
「アニメ館って働く人募集してない?」
声がさらっと響いた。ハネは小さく口を揺らしながらそれを聞くと、傍にいた人に振り返る。
「えーっと……してたっけ?」
後ろにいたオレンジ髪の人は、身をずらして階段を見上げた。
「…開業してからの従業員ですか?」
トオルは少し離れた所で足を止め、言葉を押した。
「いや、今アニメ館作ってるんですよね?その手伝いなんですけど」
「それは誰でもいいよ」
ハネが答えると、オレンジもそれに続き、頷いて見上げる。
「そうなんだ」
「うん。行く?」
ハネが頷き、すいと身を返していく。トオルは顔を明るめて、足を早めて階段を下りていった。
アニメ館にて。
広く大きな空間に、明るい照明が散っており、大きな長テーブルがいくつも並んでいた。上の方にはテラス席のような構造が見える。
ここの空間は料理屋部だ。館全体は一方向に横長い構造をしており、映画館部、料理屋部、宿部と並び、各部は開放的に繋がっている。
またこれを一つの階として、全体は6階分ある。各階にはテーマが設定されており、それに従って飾られる。
入口からハネが入ってきた。既に人が集まってきている長テーブルへすたすたと歩いていく。
テーブルに着き、持っていた紙袋を上に置くと、続けてソラからもどさどさと紙袋を出し始めた。
その後ろで、入り口からトオルが入ってきた。
軽く辺りを見渡しながら進み、長テーブルに沿って進んでいく。
内装はまだほどほどのようだ、色々な生き物や人工物の飛びかうような模様が、あちこちに散っている。
ふと前を見ると、テーブルの上で何か食べてる人たちがいた。フライパンを挟み、2人が向かい合っている。向こう側の一人が、近づいてくるトオルに気づいた。
「ちょっと味見してもらえませんか?」
トオルはそのお団子頭の人を見ると、
「何ですか?……餃子?」
と近づき中を覗き込んでいく。フライパンの中には、膨れた縦長のそれっぽいのが、じゅうじゅうと音を出していた。
「はい。まあ材料は違うけど」
団子はそう言いながら、手元にあった皿と箸を取り、テーブルの上にすすめてくる。
「あぁ!料理開発ですか」
醤油はこれですと、団子は続けて、緑色の液体の入った透明な容器を動かしていく。
トオルは箸を手に取ると、フライパンの中へ向かいながら話しだした。
「そうだ責任者の方とかってどこにいます?……俺初めて来たんですけど」
団子は理解に浮かびながら、探して辺りを見回していく。その時、遠くで別の声が飛んでいった。上のテラスの方からのようだ、風呂掃除がどうとか聞こえる。(※分かりにくくてごめんけど、ここも細かい話なんで読み流してくれ、忘れてOKです)
「……風呂掃除?」
「トオルさん!」
はふはふと食べながら目を上げていくと、それとは別にこちらへ動いてくる人影に気づいた。下にハネも動いている。
カランコロンとその背の高い人はハネと一緒に近づいてくると、声を出した。
「こんにちはー……とりあえずハネさんと一緒に買い物行ってもらってもいいですか?」
餃子をぽとっと皿に落としながら、トオルは了解の言葉を言った。
「あと一応動いた時間を記録しておいて下さい、どういうやり方でもいいので」
分かりましたと、続けてトオルは頷いていくと、その人はカランと体を返していく。
「じゃあ行こうっ」
隣にハネが来ていた。ぽんぽんと叩かれ、皿を持ったままトオルは引っ張られていく。
城で買い物しようぜ!




