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風呂にて。

  風呂にて。

割と広い浴室だ。柔らかな明かりが流れ、湯舟と、もう片側には洗い場があった。洗い場には2人分のシャワーがある。

 扉を開け、服のまま入っていく姿があった。水滴の弾む音に満ちた中へ、素足が湯気をとおっていく。

 たこ焼きの入った皿を手に持って歩いていくと、湯舟の方に、くつろいでいる眼鏡の人が目に入った。

「…眼鏡外さないんですか?……っていうか眼鏡?」

アカネは足を止めながら言う。オサムはうん?と見ると、

「これ伊達(だて)

と曇り切った眼鏡を外し、ソラにふっと入れた。

  「俺思いついたんだけど、例えばエロとか数値化できないかって」

洗い場で泡だらけになりながら、老人は横を見る。同じように泡だらけのおじさんがいた。

 後ろを人が通り過ぎていく中、八重(おじさん)はお湯を出し始めながら聞き返す。

「数値化?」

「そう……10段階とかで」

「でも一瞬だけめっちゃエロいけど、それ以外は普通とかは?」

後ろの方から声が聞こえ、2人が振り向く。

 アカネが明るく光る床に座って、たこ焼きを片手にこっちを向いていた。泡と水にまみれた八重を見ながら、ぱくっと一口頬張る。

「ちょっとアカネちゃん!…なんでいんの?!w」

八重は声を飛び上がらせ、突然慌て始めると、ソラをかき始めた。

「なんで?wいいじゃん」

アカネが平然としながら言うと、八重は一枚の浴衣(ゆかた)を出し、お湯にかかりながら慌てて身に着けていく。

「いややめてっw…司気にしないの?」

動きながら横を見ると、笑っていた司はお湯を出していきながら、

「あー…確かに」

「えっ八重さん、私見て欲情すんの?」

アカネは小さく笑みに揺れ動き、爪楊枝(つまようじ)で自分を指す。

「うん、めっちゃする」

「えー…w」

「いや普通だろw……ちょっと…これ…」

意図しないお湯にばらばらとかかりながら、目の前のかわいい絵柄の洗面器を手に取って、それを股間にあてる。それを見たアカネは腕で口を押さえて吹き出した。

「いや馬鹿じゃないのw……えちょっと待って、今勃起してんの?!w」

アカネがワクワクするような笑顔で、勢いよく身を起こしていく。

「ちょっと待ってっ!w」

叫びながら八重は椅子から転がり倒れる。が洗面器は死守しておさえている。

 素早くアカネは立ち上がると、笑みを歯に溢れさせて迫りかけたが、ぴくっと顔が何かに当たったように反応した。

「あっ差されたw」

「ほらw……ふぅ!……」

八重は緩んで立ち上がっていくと、一息ついて椅子を立て直していく。

「えーでも温泉城とか混浴じゃん…」

「で?何の話だっけ……数値化?」

(つぶや)きを無視して話を再開すると、お湯で流している司は横に目をやった。

「そうそう」

「…まあ時間は良いとしても、程度は判断が難しくない?」

会話の後ろで、再び床に座り込んだアカネのズボンに、泡の混じる水が流れてくる。指とたこ焼きをうっすらとそれに触れていき、口を開いた。

「……自分を殺している女の子のパンツを握りしめていたら?」

「脱ぎたて?」

お湯にかかる司がすかさず聞く。

「脱ぎたて」

「じゃあエロいだろ」

お湯を止めていった八重は、同意に頷きながら立ち上がった。股間に洗面器をあてたまま振り返って歩きだす。アカネはその影に隠れながら口を開いた。

「ていうか裸だけどめっちゃ真面目なシーンとかもあるし……あ、いいですよ」

床の上で向かい合って座っていく八重に、たこ焼きを勧めつつ、アカネは立ち上がっていく。

「ありがとう。…まあそうだよね、絵自体は普通だけど、舐め回すようなカメラだったらどうかとか?」

洗い場の小さい椅子に、アカネは腰を下ろしていく。その横で司はお湯を止めると、体を回して八重の方に向いていった。

「……確かに難しいか」

それを見ながらアカネは肘をつき、たこ焼きを口に近づけて言う。

「最終的にどう感じたかを、複数人に聞いて平均取るとか?」

八重はもぐもぐ食べながら、理解の声を出した。司は唸りながら、床の上のたこ焼きの皿に手を伸ばしていく。その横を、湯舟から出たオサムが歩いて通っていく。

 突然その時、ばんと音がした。

オサムの目の前で、風呂場の扉がいきなり開く。緑のカエルっぽい、スク水に身を包んだムキムキマッチョ男が、ちょんまげをつけて仁王立(におうだ)ちしていた。

「オサっ…!…」

オサムはすぐに逃げる。

「オサムーっ!!神妙に勝負を挑むで(そうろう)ーー!!」

追って動き、2人のマッチョ男が入ってきた。叫ぶオサムを追い、湯舟に突撃していく。



  扉が開く。オレンジの光に照らされる通路に、黒い白衣(シオリ)が出てきた。

制作スタジオの外の廊下には、数人が向こうへ歩いていた。一人が振り向く。

「シオリさん」

黒衣の背中で扉が閉まっていく。シオリは廊下を歩きだした。

「どこか行くんですか?」

首にタオルを巻いたおっちゃんと、縞々オサムと、若草の髪の老人だった。

 後ろを向いたおっちゃんは答えていく。

「上で屋台とか出てるらしいから、飲みに行こうと思って」

納得に頷きながら、シオリは一緒に歩き始める。

「シオリさんも行くの?」

おっちゃんが聞くと、シオリは(すそ)を揺らしながら振り向いた。

「いや、私はちょっと鉛筆とかを補充しに行こうと思って」



  城のあるコンビニにて。

透明な自動ドアが開き、黒衣が見える。

 暖色の弾けるような店内へ入っていくと、曲がってすたすたと歩いていった。

自動ドアから、後に司が入ってきた。店内をちらっと見回していく。

  シオリは目的の棚で立ち止まっていくと、身を傾けた。前には鉛筆のじゃらじゃら入った箱がある。

 ささっとテンポよく数えていると、ふと人の気配がした。振り向くと棚の横に、暖かい色のしっかりとした浴衣(ゆかた)を着た女形が近づいてきていた。

「……何本ですか?」

青いバナナの髪のその浴衣は、シオリの目を受けてすぐに聞く。

「えっと……そうですね、できれば沢山欲しいんですけど」

それを聞いた浴衣はふいと裾を返し、こっちにありますよと、来た方を笑顔で指した。

 そうですかとシオリは声を明るめると、浴衣ははいと答えながら向こうに振り返っていく。

持った鉛筆をばらっと元に戻すと、シオリは追っていった。


一方司はふらふらと店内を見て回っていた。片手でぽんぽんと物を宙に上げている。

 弾丸が箱に入って置いているのを、ちらりと見ながら通り過ぎていく。

棚の角を曲がっていくと、見たことのある姿が目に入った。

「あれ、イズミさん?」

棚の前で突っ立っていた茶葉の髪が振り向く。

「……あぁお疲れ様です」

イズミは棒読みの声を流す。司は近づいていくと、イズミの立った前の棚をちらりと見た。

「腹減ってんなら、上で何か食べません?…これから俺行くんですけど」

そう言いながら天井の方を指す。

 顔を前に戻したイズミの目に、動きが入った。お菓子っぽいやつが目の前には並んでいる。低い呟きが、口から床を巡った。

なんか屋台で食おうぜ、焼き鳥とか!

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