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第4章
目の前に光がひらき差している。すかすかと床を歩き、壁に足音が乾く。
「あぁそうなったのか」
「うん」
ツツジの髪と、アジサイの髪が言葉をかわしていた。更にその横には、黒髪ロングが並んで歩いている。
景色が開けていき、まわりに空色が広がっていった。
「ならいいか、人も集まったし……ん?」
青空と通路の上で、びちゃびちゃになりながら踊っている女形がいた。その周りで、2人が笑って一緒にはしゃいでいる。
おーいと近づいてくる声に、笑っている一人が振り向いた。
「あサキさん」
ゴーグルを額に着けた女形が、笑顔で声を出す。さらっとした格好が風にぴらぴらとなびく。
近くにいたもう一人もサキに気づいて手を振りかけ、……たかと思うと、一番はしゃいでるやつに絡まれて飛びのき避けていった。
「こんにちはー……何やってんの?」
その場をちらっと見ていきながら、ツツジ髪の男形は声をくぐらせる。
中心ではしゃぎ回っている葡萄の髪は、ずぶ濡れびしょびしょで、全身にパンツのようなものを付け、なんか変なゴーグルを目に装着していた。
「これ出来ましたよ」
マツリは自分の額からゴーグルをびらっと外すと、まだ状況を飲み込めていないサキに渡す。
「え何?」
サキはよく分からないまま手元に受け取ると、思案でそれを触り、頭へ持っていく。
少し離れた所で、その様子を黒髪ロングが眺め立っていた。ふと下に目を落とし、辺りに散る水たまりに目を落とす。
「…これ何?」
そう言いながらしゃがんでいくと、その視線の傍に人影が来る。さっき葡萄に絡まれていた女形だ。
草花みたいなその人は、わずかに上がった息とともに来て、黒髪イオリに続けてしゃがんでいった。
床に近づいたイオリが腕を動かし、その明るく薄く色づいた液体に触れる。
手を返して見ると、さらりと水のような感触が指についた。ふと声が聞こえる。
「あぁ拡張ゴーグルね!」
その方を見ると、ゴーグルを装着したサキが、こっちを見ていた。
横にいた草花もその声に気づき振り向く。手を振って改めてサキへ向けた。
視界の中で、可愛いタコが黄色い触手を振っている。
サキはそれに応えて手を上げようとすると、
突然視界がぐらついた。
ばたばたした動きが体に当たっている。
「サキこれつけて!」
「何?w」
ゴーグルをずらしながら下を見るサキの胸に、葡萄の髪ががさごそと突っ込んでいく。水気が肌を掴んでいき、ゆらりと重心を感じると、弾んだ声とともに空気が崩れた。
びしゃんと水たまりに背を突っ込み、体が重なる。服にこぼれこんだシズクは、顔の陰を小さく揺らしながらもぞりと身を引き上げ、服の上に覆いかぶさっていった。
仰向けのサキは頭を少しずつ起こしていき、下を見ると、ぴちゃぴちゃな姿が改めて目に入る。
「……でこれは?」
指を掲げ、そのシズクの身に大量に張り付いた、液体のじょろじょろと出ているパンツらしき布を指す。マツリが横にしゃがんだ。
「あぁこれは……そういうプレイ用に、一般に売ってるやつです」
「そういうことか!……びっくりした…」
あっさりとしたマツリの解説に、サキは理解に体を緩める。床の液体に触れ、指の隙間から抜けた果実の匂いがそよぐ。
やがてかさっと身を浮かしたシズクは、サキと半身を向き合い、脇の辺りを触りだした。重い影に日差しの欠片がばらまかれ、暗さに水がからからと差す。
服の上からつけられたそれは、どう見てもブラジャーだった。ぴゅーっと、まもなく白い液体が出てくる。すぐにサキは笑い始めた。
「なるほど!そういうね!」
シズクは身を起こしてぴょんとずれていき、
「ほらサキも一緒に!」
と笑顔で自分の乳首付近に両手でピースサインを決めた。
それにならい、サキも全力の笑顔ではにかみ、ビッと乳首でポーズを決める。
シズクは笑い、ふっと身を上げた。はらっと舞い、水が宙に散る。
ほどかれたサキは、ゆっくり起き上がろうと床に手をついていくと、横で揺れ動いていくシズクに気づいた。通路の手すりの上に、ぱぱっと上がっていっている。
「あっ落ちるよっ!」
サキは声を出し、ブラを着けた身で、濡れた手を離し動いていく。何が面白いのかまた笑い始めたマツリは、手を叩いてウケている。
見るとシズクが空中に浮いていた。サキはあっと向かい、笑うシズクに飛びついていく。手すりを越えてマツリが身を伸ばし、宙でサキと掴みあった。
がくんと一瞬引っ掛かり、手を離したサキに、そのままマツリは引きずり込まれた。明るい悲鳴が飛び、一行は落ちていく。
3人は尿しぶきを上げながら落下していく。マンションの鈍い光が横に流れ揺れた。
叫ぶサキの向こうに、明るい景色が舞う。
「マジでヤバいかも!!」
「キャー!サキノーブラー!」
動く影が立体に絡む。くねる光の中で、シズクの高い声がしぶきを上げた。
「いや意味分かんないからっっw」
サキは笑い、声を揺らす。ごわごわと弾ける服から顔を出し、シズクはもつれる髪に笑った。
「たのしー!今度うんこパンツも作ろーっっ!!」
流れの中で腕をはなし、傍のマツリの顔に手を伸ばす。水滴が飛び、曲がりくねって飛んでいく。マツリは弾け笑い、シズクに抱き着き返していった。
……あれ、イオリは?




