夜の城とマンション
引き続き、祭り会場にて
「ハネー!」
薄暗く光る中で呼びながら近づいていくと、明るい色のセーラー服のスカートが翻った。
「よーっす!」
ハネは元気な声を向けると、ぱっとこっちに走ってくる。ツムギは思い出したように一行を振り返った。
「でもさっきのは……大規模な祭りはその世界で広くやるんだから、相性悪くないかって言ってて」
ハナがそうかとうねうね納得する横で、空気を纏い来たハネがそれを聞く。
「二次祭りの話?……あいたw」
突然下に崩れた。見るとどうやら靴がズレたようだ、足元にこぼれている。
ハナが声を出して駆け寄る先で、ハネはその場に座り込んで言った。
「それ、オタク祭りにするとかどう?」
「……え?どういうこと?」
ツムギが一瞬固まって聞くと、ハネは足を見て触りながら顔を上げ、別の方に目をやりながら答える。
「えーっと各世界観でオタクたちが……同時に祭りをやるってこと」
「あっそれ面白いねっ!」
シズクが声を弾ませ、隣にしゃがんでいった。その前で立っているツムギが声を浮かせる。
「あーなるほど!……全体が無理なら、その雰囲気に合う人たちを用意して、一部だけで祭りをすればいいってこと?」
ハネは動きながら頷き立ち上がっていく。
「だって絶対どの世界でも、そういうの好きな人はいるはずじゃん」
「確かにっ!原始時代でも荒廃した未来でもね!」
「…荒廃……?」
ヒロー!と呼ぶ元気な老人の声が、別の方から聞こえてきた。振り返ってその方を見ると、黒っぽい格好いい服を着た司が、歩いてくるのが目に入った。
ツムギもそれに振り返りながら、
「なるほどね。……じゃあとりあえず人募ってみようか」
と手元に目を移し、ソラを触り始める。
「いいな楽しそうっ!私も参加していい?」
シズクが画面で揺れて、顔をずいとハネに近づけた。いいよとハネは適当に返しながら、別の方をきょろっと眺める。
着いた司は立ち止まり、
「……何かあった?」
と鋭く野生の勘で嗅ぎつけ、ニヤりと笑う。
手元の動きを終えたツムギは、目を離しさっと振り返ると、後ろに可愛いカッパ姿が目に入った。
「…あ可愛い」
黒もじゃのアヤが、きゃぴきゃぴした明るい色のカッパを着て、ポケットに手を突っ込んでいた。司とアカネと一緒に来ていたようだ、思わず目が合いぼそっと呟くツムギに、アヤはじっとガンを飛ばす。
「とりあえず行って来る……あっそうだ、誰か部屋余ってる人とかいない?」
行きかけたツムギが振り返って一同に問うと、アヤが返した。
「何で?」
「ちょっと作業場が欲しいって人がいて。……秋祭りまででいいんだけど」
「じゃあ俺の部屋使っていいですけど!」
司がぽんと手を上げた。
広くそよぐ階段を、とんとんっと上がっていく2人がいた。ゴスロリと地味Tシャツだ。上方には白んだ空気が見える。
城の廊下に出ていき、周りに人と店の往来が散った。
「こっちです!」
見回しながら歩きかけたツムギは、声の方に振り返る。
地下への階段の口のそばで、スタイリッシュな格好の男形が手を振っていた。その横には頭だけ着ぐるみのやつがいる、下には夏服のセーラー服みたいなのを着ている。
ツムギは気づきの音を漏らしながら向きを戻していくと、向こうの2人も動き始めた。
「じゃあ行きましょうか」
合流しながらスタイリッシュが促していく。
一行は歩き始め、左右に店の並ぶ中を流れていく。スタリが思いついたように声を上げた。
「そうだ、えーっと……大きい画面とキーボードが欲しいらしいんですけど」
その視線をツムギは渡されていると、後ろから声が入ってくる。
「大きい画面なら部屋にありますよ」
ヒロが前にととっと動く。着ぐるみの頭は横をふいと見た。
「壁いっぱいぐらい大きいですか?」
ヒロはその声にもつれると、着ぐるみの視線に引っかかり、歩き続けながら巡っていく。
「……そこまでじゃないかな……?」
「…一期間ですよね?」
漂っていたスタリが足を遅めながらツムギに聞く。ツムギは目を上げて肯定を答えた。
「ちょっと探してみてもいいですか?何とかなるかもしれません」
「そうですか?」
示された提案にツムギは浮いていると、スタリは動きだす。
「はい、先に行っててもらっていいですか?」
了解を言うツムギを残し、スタリは一行を離れ、先にエスカレーターへ差し掛かっていく。
さらっと明るい廊下を、2人で1つの箱を運び歩いている。
左右にマンションの部屋が続いていく。前の方で部屋の扉が開いた。中から老人が出てきてこっちに気づく。
「あっいいですよ」
司はそう言いながら扉を開けていくと、言葉を返すツムギの横を、ふっと着ぐるみが後ろから通り抜けていく。
着ぐるみが扉に入っていく横で、司はずれていき、2人が運ぶのに目をやった。
「アイテムボックスならあっちにありますよ」
そう言って指した斜めの方の部屋を、ツムギはちらっと見る。
「いや、念のためちょっと大きいのをと思って」
司は動き避けていきながら、納得に頷いた。
開いた玄関に入っていくと、明るい廊下が目に入った。辺りの光を反射する真新しい床へと進んでいき、靴を足元で崩していく。
「ユイさーん」
呼びかけながらツムギが廊下に上がろうとすると、背後に別の風を感じた。
「大丈夫ですか?持ちましょうか」
スタリがさっと来た。ツムギは振り向き断っていると、その後ろでリビングから着ぐるみが顔を出していく。
ツムギは前を向き直り、その姿を目に捉えた。
「どうですか?他に必要な物はありますか?」
ユイは部屋から出て、後ろに下がっていきながら答える。
「あと一つ、中くらいの画面が欲しいんですけど」
それを聞き、後ろにいたスタリが声を上げた。
「分かりました、買ってきます」
「あとテーブルありますか?」
追加のユイの声に、行きかけた高い背中が振り返ると、今度はその傍にいる司が反応した。
「テーブルはありますよ、ちょっと待って下さい!」
2人は体を返して玄関に向かう。
リビングに入っていくと、真っ白なすっからかんの部屋があった。真新しい壁と床が、運ぶ2人の音を受け入れていく。
続けて入ったユイは、すたっと部屋の中を進み、大きな壁の方を示していった。かすかな息が部屋を漂い、足と腰が動いていく。
やがてその辺で箱を下ろすと、ヒロが腰を上げ、部屋の中を見回した。
その足元で、ツムギはアイテムボックスの画面を触っていくと、壁際にふっと巨大な画面が出現した。
それを見て立ち上がっていく。
「よし……あ、俺もイロハさんに用事あるんだった」
思い出したように呟くと、ツムギはすたすたと部屋の外へ向かっていった。
司の部屋を出て、今度はその斜め前の部屋に向かっていく。
廊下に出て歩きだすと、向かう扉の傍に白髪の人が立っていた。
そのまま近づいていくと、ちらりと目が合う。わずかにお互い頷くように頭を下げ、ツムギはドアノブに手をかけ開いていった。
フローリングの廊下を奥へ歩いていくと、司が向こうから歩いてくる。
「イロハさんいます?」
いますよと、後ろ指で示す司に、ツムギは軽く頷きその方を見ていく。
趣味感あふれる部屋に入っていく。こたつ机に座ったイロハは、すぐにこっちに気づいた。
「出来てますよ」
そう言い前に積み重なった絵の山を鉛筆でさす。
「あぁ設絵ですね」
ツムギはそれを見て、とんとんと近づく。ふぁさっと机の傍にしゃがむと、言われたそれを手に取っていった。紙に目を落としていき、腕の動きが止まると、音の砂がはらりと落ちる。
厚い空気にむわっと静寂が差し挟まれた。鉛筆の音がさらさらとなり、静けさのふちを動いていく。落ち着きの中に身を落とし込むと、ツムギははらりとめくっていった。
やがて一枚の絵で手を止めたツムギは、眺めながら声をはなした。
「ここは……窓の形、丸じゃなくて四角にしてもらっていいですか?」
そう言い絵を向けていき、描かれた家の窓を指して言う。
手を止めて覗き込んだイロハは、ごめんと紙を受け取っていくと、手を下ろしてささっと修正した。
「……こんな感じ?」
紙を拾って見せ直す。ツムギは傾いてそれを見ると、すとんと謝辞を落とし、再び絵の確認に戻っていった。
イロハはその絵を差し戻していきながら口を開く。
「絵ざわりは……部屋の中の暗い所はどうする?」
手元にぱっと画面をつけながら言うと、角度を変えていった。
「こんな感じか……ちょっと光強めか……どう?」
2枚の絵が目の前に提示される。微妙に違う絵ざわりのようだ。
ツムギが眺める正面で、イロハは画面を上から眺めていく。
「…光強めで良いと思います」
分かったと言ってイロハは頷くと、画面とともに戻っていった。その端で、大量の画像ファイルが並んだ画面がちらりと見える。
「どれぐらい描きました?」
追うようにツムギの頭が少し動くと、イロハは顔を上げる。
「んー……基本は大体描いたけど……」
そう言い画面を手でスクロールしていく。裏から透明に見えている。
「あと夜の外の景色とか……出来れば機械っぽいのとかも一応描きたいかなー……まあこだわり始めたら、きりがないけど」
ツムギはその画面に目をやりながら理解するように頷き、話を続ける。
「また追加分の背景があるかもしれなくて……アニメフェア知ってます?」
「聞いたよ、それに参加するの?」
イロハは声を出し、体を揺らす。
「はい。新しい設絵が必要かはまだ分からないんですけど……」
ツムギは途中で何かに気づいたように目線を落とし、ソラを触り始めた。イロハはそれを見て、頷きながら声を転がす。
「あぁ……分かりました」
「とりあえず絵コンテまで決まったらまた連絡しますね」
そう腰を上げていくと、イロハは見上げて軽く頷いた。
いよいよ二次祭り発想の中核だっ!盛り上がってきたぁぁー!foooooooo!!!!




