山そうめん
2人は話しながら平たい所へ出ていき、周りに日差しが被った。白い風の中で、ナギサは顔を上げる。
「いいですか?…じゃあお願いします」
そう言い歩みを緩め、肩から身をよじっていく。トオルはその横で景色の方に出ていき、立ち止まっていった。
「あれ?……こっちでいいよね?」
ぼそっとトオルの呟きに、後ろでナギサは身を上げると、その景色に目をやる。
広い平地が広がっていた。空色の中に、向こうに山の続きが見える。人の流れは2つあり、一つは続く山へ向かい、もう一つはどこか違う方向へ向かっているようだった。
「こっちにも結構人いますね……何ででしょう?」
ナギサは少し眺めてそう言うと、足元へ向かう。
しゃがんでリュックのジッパーを開けると、手を突っ込んでいき、視線とともにがさごそと漁りだす。やがてずぼっと丸めた雑誌を取り出すと、手に取り開きながら立ち上がっていった。挟まれた厚い紙が現れ、それを取り出す。
ソラを触っていたトオルが、後ろに気づく。
「へぇ、それ分かりやすいですね!」
近づいたナギサが、広い紙に視線を下ろしていた。紙にはぱかぱかと折り目がついている。
トオルは覗き込んでいくと、ナギサは頷き、
「そうです、結構細かく書かれてて」
と指で紙をさすり動かしていく。地図のようだ、色々な情報が分かりやすく書き込まれている。
「こっちは……多分関係ないと思います」
「……ウジリの生息域なんだ」
横で眺めるトオルがぼそっと呟く。少し見ていると、首を振ってナギサが動いた。
「ちょっと行ってみます?…モンスターの生態も一応見ておきたくて」
紙をたたんで身を返していくと、それにトオルは同意する。
「いいですよw行ってみましょう」
「じゃあこれ……お願いしてもいいですか?」
身を落としたナギサは、ぐいと荷物を持ち上げてトオルに示す。トオルは近づいていくと、その近くの空気を触り、ぱっと荷物を消した。
2人は向かう方へ歩きだし、服が揺れる。
「こういうイベントってどうやって許可取るんですか?」
麦藁帽が横に話を振ると、ナギサは目を前にやりながら答えた。
「今のところは所有者はまだいないらしくて、普段ここに来てる人にアンケート取ったり、ネットで意見集めたりしてやってるみたいです」
「へー……結構大変ですねw」
トオルは足元を見ながら相槌を打つ。辺りには、ごろごろした石の転がる地面が広く続いていた。向こうへと石は大きくなっていっているようだ。
ふと見ると、向こうから動いてきている人がいた。
中年のぽっちゃりしたおじさんだ、転ばないよう足元を見ながらふらふら歩いてきている。
トオルが声をかけると、返事をしておじさんは顔を上げ、足を止めていった。カメラマンみたいな恰好をしている。
「こんにちはー……すみません、向こうで何かやってるんですか?」
「モンスター狩ってるだけみたいですよ」
その方を示すと、おじさんはさくっと答えた。それを聞き、2人は把握する。
「そういうことか、ありがとうございます」
軽くお礼を言い、双方歩きだしすれ違っていった。
声をかけてきた2人組とすれ違い、おじさんは再び歩き出そうとすると、ピピピと音が鳴った。
手元を見てソラを触り、電話画面を出していく。
『…どうですか?』
電話の中から静かな女の声がした。おじさんは顔を上げ、広がる景色を見ながら答える。
「こっちは一通り終わりました」
『そうですか』
「そっちはどうですか?」
標高の高そうな、空が周りに見えるごつごつした斜面を、ジーンズを履いた血だらけの女形が歩いていた。
「一応試してみましたけど、うまく録れなかったです」
数歩先を歩く数人の声が聞こえてくる。そう画面に向かって言うと、再び手元から声がした。
『そうですか。分かりました、ありがとうございました』
ジーンズは返事をして画面を触ると、明るい声が耳に入ってくる。
前を歩く4人に目が行く。
一人血だらけで背負われた人と、それを背負う人がいた。その横には2人歩いている――新緑の髪の女形が笑っており、もう一人は、古代人みたいな恰好の人だ。
(※登場人物多いが、覚えなくても大丈夫です。後で出てきたときに説明入れます)
ジーンズは足を早め、前の数人に近づいていく。新緑がそれに気づき振り返った。
傍に行って背負っている人に謝辞を言うと、その人は振り向く。
「もう大丈夫ですか?」
「はい。ここから私がおぶります」
そう言うと2人は立ち止まっていき、背中で舞っている明るい声を下ろし始めた。傍には岩があり、その上に動いていく。
一人で、先へずれていく古代人は後ろを振り返り、一行が止まったのに気づくと、向こうへたっと駆けていった。
風を切って布を揺らし、立ち止まっていく。
「おー!追いつかれてるっ」
目の前を横切る山道には人の流れがあった。
一部には流れの塊があり、人々が何やら作業をしながら、山頂へ向けて進んでいっている。そこから後方の山の斜面へと、帯のようなものが伸びている。
「八重とかどこだ……?」
ふいと眼下の方に目を向けると、山のごとごととした斜面を、人々が登っているのが見える。
古代人は眺めるとすぐに翻し、まいっかと、元来た方へ返っていった。
「まだ止まりませんね」
ジーンズは屈んで、岩の上に腰を下ろした明るい声の、足もとを見ながら呟く。血でぐちゃぐちゃになっているようだ。
「すぐ戻りますよ」
立つ黒髪の人はそう言いながら、体を傾けてそれを見る。ジーンズは小さく頷くと、腿を動かし、背中を岩の方に傾けていった。
「ナギちゃーん!」
別で話していた声を止めて、明るい声が勢いよく抱き着いてくる。ぼふっと髪が乱れながら受け止めると、ジーンズは無言で体勢を立て直した。
横で去りかける黒髪が目に入る。
「ありがとうございました!」
向こうの黒髪は歩いていきながら振り返ると、小さく笑顔を見せていった。
ジーンズは前を向き直る。重くなった足を動かしだすと、向こうの方から古代人が走ってきた。
「り」
新緑はそれを見て声を出すと、古代人は立ち止まり、
「り……立派な庭の家」
と再び一行に合流していく。それに反応し、今度は背負われた明るい声が声を出した。
「え……エプロンをかけたおさるさん……の友達」
その少し下辺りにて、カラフルな服のおじさんが登っていた。
さつさつと足を上げていた色おじ八重は、吐息とともに立ち止まり、振り返る。
山頂に続く帯の左右に、人の列が散り散りになって登っているのが見える。
首にかけたタオルで顔の汗をぬぐっていると、少し向こうに、見知った焦げ茶の頭がいるのに気づいた。
「コトハさん?!」
声を上げて呼びかけると、その人はこっちに気づく。やっほーと八重はタオルを振ると、それを見た焦げ茶は苦しそうに動きを早めかけ、その瞬間、ずるっと足を踏み外した。
大丈夫と八重はさけび、たっと下りて近づいていく。
焦げ茶コトハは汗を落とし、全体で息をしながら身を起こした。八重が近くに来たのを横に、ソラを触り、竹のようなものを取り出していく。
八重は顔を上げ山道の方を見ると、思い出したように口を開いた。
「脚本は出来ました?」
コトハはごくごくと竹の水を飲んでいた。口を離し、風になびかれながら飲み込む。
「まだです」
了解した八重の前で、コトハは水筒をソラに戻していく。ずりっと足を動かし始めると、八重も一緒に動きだした。
「そうだコトハさん、設絵(※次の話で説明)描ける人とか知ってます?」
再び山の斜面を登っていきながら聞く。コトハは足元を見たまま首を傾げた。
「うーん…いないかな……?」
「おーい八重さーん!」
突然背後から飛んできた声が、会話に割り込んできた。
2人は振り返ると、勢いよく足を動かしてくるジャージの人がいた。さっき部屋で絵を描いていた人だ。
「イロハさん、来たんだ」
近づいてくるジャージに声をかけると、すぐに追いつき並んでくる。
「いやーいい運動になるね!」
横に立ち止まったイロハは、呼吸荒くすっきりした表情を見せた。
「あんまり意味ないけど……」
「おー!いい景色!」
振り返って景色を眺めていき、八重のツッコミを無視して声を上げる。
晴天の青い空に、遠くの山々がよく見えた。イロハは風を浴びながら手をかざしてそれを見ると、前に向き直りながら話を振る。
「そういえば、さっきアニメコーナーっていうのの話を聞いたんだけど、どういうことなんですか?」
3人は体を返し、再び歩き始めた。八重は軽く答える。
「あぁ……アニメの形で、その作品の世界でラジオをやるっていうコーナーです」
「……ほう?」
足元から一瞬の後、隣を見る。八重は頬に笑みが浮き、説明を続けた。
「つまりラジオをやってるキャラを映すアニメを作る……って感じ?」
イロハは動いていく土を眺めながら聞く。
「……まあよく分かんないけどラジオっぽいアニメってことですか?」
2人に並んでコトハは黙って足を動かしている。その横で八重は頷く。
「そうそう。で最近流行ってる作品の中に入って、その世界観の中からその作品自体を紹介するっていう」
「あーなるほど!そういうことか」
イロハは明るい声を上げていると、ふと何かに気づいたように首を振った。
「あれ始まるの?」
八重はその方を振り向く。近くに浮いている透明な帯に、ちるちると光る水が流れていた。見ていると、どばっと塊が流れ、帯に滑っていく。
「あっ来た!」
声を上げ、3人はかくっと動いた。そこらで登っていた人たちも気づき、足音が斜面に跳ねだす。
各人ソラをひっかきながら物を出していき、帯に近づいていく。素早く帯の傍に立ったイロハが、片手に椀と箸を持ち、ソラを触りながら声を上げた。
「つゆ忘れたっ!」
とつとつと足を動かすコトハは顔を上げ、自分のに注いでいた筒状の容器を手に持つ。
「…使いますか?」
そう言い差し出していくと、イロハは謝辞とともに受け取っていく。その後ろで、今度は別の声が飛び始めた。
「薬味欲しい人ー?…一袋100マキでーす」
帯の傍で既にずぞぞっと食っていた八重は、それに振り向く。見ると首から箱を提げた人が、斜面を歩き売りしていた。
下さいと、すぐに声を出して動くと、その人は足を止めていく。
箱の中には大量に、丸まった葉っぱが入っていた。その人はその一つを取り出すと、近づいてきた色おじさんと交換していく。他からも、人がつらつらと動いてきた。
イロハは帯に覆いかぶさっていた。日差しに動くそうめんに箸を突っ込み掴み出すと、白い麺が水になびく。
椀を持ちながら振り返り、戻ってきていた八重を見た。
「その中で出すキャラはオリジナルなんですか?」
八重はコトハの傍に立ち、薬味を渡していた。葉っぱの上に開いた草の塵を、差し出された椀に入れている。
そうですと頷き、向きを変えていくと、イロハは体と腕が動いた。
「ありがとうございます……抽象化は?」
「…あぁキャラの?」
一瞬止まった八重に、うんと頷く。八重は目線を落としていった。
「は多分しないと思う」
「ふーん……ある程度抽象化して、話題投入してみたいな作り方、合いそうだけどね」
人工知能みたいにキャラクターを作れば、キャラの反応そのものを作らなくても、話題を与えるだけでよくなるのでは?という話だ。人に話を振るのと同じように、思考回路に話題を与えるみたいな。
イロハは手元に入れられていく薬味を見ながら言うと、俯いた八重が口を開く。
「でも作者の人と話し合いながら作らなきゃいけなくて、どうせ動き方を束ねなきゃいけないから」
そう離れて頭を上げると、イロハは納得に頷きながら椀に箸を動かした。八重は頷いていくと、突然声を上げる。
「あっ荷物渡さなきゃいけないんだった」
イロハがもぐもぐと眺める中、慌てて物をソラに引っ込め、八重は素早く一人で登っていく。
頂上には人が多くいた。辺りには荷物がたくさん並んでおり、向こうにはテントなどが張られている。参加者やイベントの関係者が、青空の日差しがさらう中、もろもろ動いていた。
「八重さん!」
見回しながら進む八重に声がかかる。振り向くと、そこに屈んでこちらに手を振っている人がいた。
「遅れてすいません!、えーっと……これですね」
素早く近づいていきながら手を動かすと、その手元に荷物が出現した。動く八重に固定されたように、宙に浮いてついていく。
その人は謝辞とともに手を伸ばし、掴むととどっしりと重みが腕を下げた。
「八重ー!」
渡していると別方向から声が聞こえ、八重は振り向いた。
走って来る小さい姿があった。空色のくせ毛だ、新しい古代人みたいな恰好をしている。一緒に誰かついてきているようだ、後ろに長髪のジーンズの人が動いている。
「あぁハネ」
「ススムさんとかって来てる?」
足音軽く来たくせ毛は、息をひらいて聞く。八重は周囲に目をやった。
「いやー分かんないね…来てんのかな?」
そう言いながら歩き始め、一行は動いていく。
人の中を歩くと、食べ物の湯気が顔をかすめていく。どこで売っているのか、汁物などを食べている人などもいるようだ。
辺りにうごめく人の足の中を歩いていくと、やがて八重が声を出した。
「あれか?」
2人もその方に目を向け、声が上がる。
「ほんとだっ」
「ススムさーん」
頂上の端っこに、遠く抜ける景色とともに座り込んだ人がいた。
ぼろぼろの服を着たその真っ白な男形は、こっちに気づき、よおと手を上げる。その前には鍋やタオルがごてごてと置いてあり、鍋のいくつかからは湯気が立ち上っている。
「後でそうめん以外も流れるよ」
八重が近づきながら言うと、ススムは頷く。
「知ってる。…誰か水持ってない?」
傍に来たハネは、それに応えてソラをいじった。水の溢れる石をぱっと出し、渡していきながら聞く。
「ススムさん、プロがどう制作ちゃん使ってるかとかって知ってる?」
ぽんと空の鍋にはなされた石は、鍋の底で水に動き始めた。ススムは傍に置いてあったガラスコップを手に取り、
「まあ基本はね……何で?」
とオレンジの液体に口をつけながら3人を見上げた。ハネは動く。
「こちらマルイアニメの方なんだけど」
後ろにいたジーンズを示していくと、ススムはそっちを見た。
「マルイアニメ?」
はいとジーンズは答えて、近づき少し体を傾ける。
「制作ちゃんの使い方がよく分からないんだって」
ハネはそう言いながらしゃがみ込んでいき、鍋に向かった。傍に立つ八重は理解に浮き上がる。
「あっそういうことか」
「へー……そうなんですか…」
ススムは視線を落として手を動かしていく。鍋の一つには、中で敷き詰められた炎に、炙られている飯ごうがあった。
「はい。一応一通りは調べたんですけど、プロとしての使い方とかが詳しく分からなくて」
ススムは聞きながら、どぼどぼと飯ごうの中身を、別の鍋の中に入れていく。
「ふーん……じゃああの人に聞いた方がいいんじゃない?ノボルさんとか」
ちらっと目を上げながら言うと、八重が声を上げた。
「あぁ!どこにいるか分かる?」
「さあ…アニメ館(※)とか……ぐらいしか知らないけど」
(※後で出てくるよ)
ススムはそう言い、前のハネに箸を渡していく。
「誰ですか?」
ジーンズは横を向いて聞くと、八重が答えた。
「ホシノジョウホウの戦略部門の方です」
へーと小さく驚きの声が流れる。
ある映画館にて。
暗い中に画面が光り、音楽が流れる中、ちらほらと人の動きがある。
一人のワイシャツ男形が、席を素早く立ち上がっていった。
階段を上がっていると、別の方から歩いてくる知り合いに気づいた。会釈をかわし、合流して歩いていく。
2人は出口をくぐり、明るさへと抜けていった。
「いやーやっぱいいっすね、『えくすて』!」
柄の薄く入ったワイシャツを着たその男形は、体を伸ばしながら元気に話し始めた。隣を歩く背の高い女形は、足元に下駄を落としていきながら横を見る。カランと音がした。
「好きなんですか?」
はいと頷きながらワイシは振り返り、まくった腕をポケットに入れて笑顔を見せた。
映画館を出て、温泉城の文化フロアに出る。からころと音を立てながら、下駄が思いついたように口を開いた。
「そういえば、新聞の方は出来たみたいですよ」
ワイシはそれを聞き、すんすんと歩きながら相槌を打つ。
「そうですか!そっちもいい感じかー……ん?」
ふと気づくと、前の方に小さな人の塊が見えた。目的の建物の前で、数人が何か話している。顔を知っている人も混じっているようだ、その一人がこっちに気づく。
「ノボルさん!」
色おじさんがワイシに手を振る。他の人もそっちを見た。
「こんにちはー……どうかしました?」
ワイシノボルが近づき声をかけていくと、八重は隣の人を紹介し始めた。
「こちらマルイアニメの方なんですけど、制作ちゃんの使い方がよく分からないみたいで」
縞々のおしゃれな服の男形が横には立っていた。その人はふっと頭を下げる。
「こんにちは、マルイアニメの渡辺と申します」
低い普通の挨拶を受け、ノボルは強い声を上げた。
「あーマルイアニメの!……えっ制作ちゃんの使い方?」
縞々ははいと答える。ノボルは少し声を出し、思案に目線を巡らすと、すぐに応えた。
「じゃあうちの制作スタジオ行きます?……僕もそんなに具体的な作り方に詳しいわけではないんで」
「いいんですか?」
縞々は驚いて声を立てると、
「いいですよ!行きましょう」
とノボルはくるっと体を返した。
次は未来のアニメの作り方を考察するよ!fooo高まってきたぁー!




