タマ祭り!!
文化フロアのライブ会場にて。
会場の外回りの通路には、大きく広い空間中に人の話し声と光が乱れ散っていた。3人は横切るように進んでいき、色々な装いをした人たちの中を歩いていく。
「そうだツムギ、マルイアニメの人とかって知り合いにいたりする?」
無秩序な足と声を避けながら、アヤが前に向かって聞いていく。
ツムギは歩き腕をゆらして、ちらっと振り返り答えた。
「八重がたまに行ってるみたいだけど」
「へー……関係者?」
人の動きの中で、前には景色の一片が開いていた。そこへ近づきながら答えていく。
「いや多分違うと思うけど……何で?」
大きな線を跨ぎ、広大な空間に出ていく。ドーム球場のようなその場所には、様々な画面の色と光が、近くから遠くまで覆っており、きめ細かい音に満ちて霞んでいた。
床に敷かれた軽やかなマットへ踏みだしていき、アヤは続ける。
「そこの高橋……ミサキさん?だっけ?…に仕事頼みたいらしくて」
そう歩きながら、後ろに続くヒロを示した。ツムギは遠くを眺めていたのが、振り返り足を止める。
「アニメ作ってるんですか?」
後ろのヒロは立ち止まり、はいと小さく頷いた。ツムギは思案の音をこぼして体を返し、
「じゃあ八重に言ってみましょうか?」
と手を動かしていきながら、会場の横の方へ歩いていく。
「無理にじゃなくていいんですけどっ」
ヒロは素早く付け加え、ソラを触るツムギに追いついていく。
その辺りには、丸テーブルと人があちこちに散っていた。向こうにはうっすらと、会場常設の明るいステージが見えているが、今は何もやっていないようだ、がらんとしている。
人の声を横に、壁際に沿って3人は歩いていく。
「えっと……ヒロさんでしたっけ?」
ツムギは歩きながら手元を見ると、ヒロは身を近づけた。
「はい……鈴木ヒロです」
そう動いていく手先を見てヒロは言うと、前方から誰かの声がして頭を上げ、音を漏らす。
黒い模様を纏ったアカネが、たっと走ってきた。片手に皿を持ち、箸を持つ手を振っている。
「まひあってんの?」
アカネは声をかけながら近づいてくると、隣のツムギを見ながら、その手元をちらっと見ていく。
一方で、後ろでふらふらと歩いていたアヤは、周りのテーブルを眺めていた。前で足を止めたツムギにつられて立ち止まり、来たアカネに目をやる。
「料理があるんだ…」
その呟きに振り向いたアカネは、
「あぁ色々ありますよ」
と横の方に目をやった。食べるための場所のようだ、人々が立って食べ物を楽しんでいる。
アヤは薄く漂い、その方へ動きだした。立ち止まっていたツムギはそれに気づき、手元を見ながら後から動いていく。
流れてアカネは歩いていきながら、後ろのヒロに振り返った。
「そういえば、この会場のもう一個の方の景色って、どうやったら見れんの?後で教えて」
聞いたヒロは無言で頷く。
アヤが丸テーブルの上を眺める。
人の話し声の中に、様々な料理が賑やかに置かれていた。皿に入ったものや、紙パックに入ったようなものなどに、所狭しと色や模様が書き込まれている。
傍に来たアカネもその場に目をやると、持っていた皿と箸を、テーブルにぱっと置いた。
「あとこれね」
そう言いソラから海色の布を出して掴み、傍にいるヒロに渡していく。
「え?……あぁ」
ヒロは言われるままに手に取りばらっと広げ、理解に呟いた。どうやら服のようだ。
「これ食べていいの?」
テーブルの上を眺めていたアヤが言った。横のアカネは再び皿を手に、箸を口に運んで振り返る。
「えーっほ……ここの券を買ったら食べられまふよ」
テーブルの上の一角の、重ねられたチケットを箸を逆手に指す。
アヤはそれに目を移すと、
「5000マキ?……高っ」
と攻撃的に呟いた。アカネはもぐもぐ食べながらそれに応える。
「でも食べ放題れふよ。……あれ衣装は持ってないんれふか?」
ごくりと喉を動かすアカネの前で、アヤは体を起こしていく。
「いや…」
「向こうに貸してるのありますよ」
向こうの方を指し、アカネはテンポよく持っていた皿をソラに入れていく。その方をちらっと振り返ったアヤは、ポケットに手を入れたまま音を漏らした。
「あー…」
「折角だし着ましょう!」
アカネは視線をさっと身の近くに泳がせて、アヤの肩を持ち軽く促す。同時にくるりと振り返り、
「それって私服ですよね?」
と横でちゃっかり食べていたゴスロリに声をかけた。ツムギはもぐもぐしながら、口元に手を動かし頷く。
「ほうれふ」
「じゃあ一緒に行きませんか?」
アカネはひらっと手招きしてそう言うと、アヤと動きだした。
それに続き、ツムギはのっそりとついていく。
料理コーナーとは反対の方にあったらしいその場所へ向かうと、服のかかったハンガーラックがそこら中に並んでいた。
両側に服のかかる中を、片側を眺めながらゴスロリが歩いている。
「うーん……」
ツムギは掛かった服を、はらはらと手に触りながら動いていく。服の多くは使用中のようだ、ハンガーの空白とともに残った服を見ていっていると、
「うわー!その服良いねっ!」
背後から突然明るい声が聞こえた。ツムギがそれに反応し振り返ると、続けて、
「…あれっもしかしてツムギさん?」
服のかかるラックの上に長く沿って配された液晶画面の中に、葡萄の髪の、柄がらな、バラッとした装いの女形がこっちを覗き込んでいた。画面の中には他に、様々な服を着たキャラの立ち絵やモデルなどが賑やかに動いている。
顔を上げて画面を見たツムギがはいと答えると、
「やっぱりっ!あっそうだアニメフェアでさ、二次祭りっていうのをやるって聞いたんだけど」
跳ねるように言葉を並べながら、葡萄の髪はぐいと近づいてくる。
ツムギはふっと体を緩めて、
「そうみたいですね」
「へー!どんなことやんのっ?」
ワクワクとキラキラした目を向け、今にも画面から飛び出してきそうだ。
「まだ何も決まってないらしいですよ」
ツムギは背後のラックに身を沈めながら言うと、かかった服にわずかに触れる。
「そうなんだ…あっごめんえっと衣装選び?」
葡萄は理解に落ち着いたかと思うと、すぐに目を散らし、あたふたと動き始めた。
ツムギは一瞬目をしばたかせて頷くと、視線の先で葡萄の髪が横に動いていく。
それを追って体を起こすと、すぐにほど近くで声がした。
「こういうのとかどうっ?」
服の端を掠めていくと、葡萄の頭がすぐそこに見えた。どうやら白っぽい服を示しているようだ。
床にふれていく足音とともに近づき、立ち止まっていくと、手に取り軽く広げてみる。
「……良いかも」
ツムギは呟くと、かちゃっとハンガーに手をかけ取り出し始めた。
「じゃあほら!あっちで着替えて」
葡萄は画面の中で小さく弾み、向こうの壁際の着替えコーナーを指した。白い布を手にしていくツムギは、言われた方に頭を動かし、歩きだす。
着替えへ……フゥウウーーー!!エロっ!!!




