二次創作に任せればよくね?
一方音楽スタジオ内の、声優用の小さい個室内にて。
座った茶髪の女形と、その傍に立ったゴスロリが、机の上の画面の影を見ている。
(※ツムギは最初の方でちょろっと出てきたけど、そこはまあどうでもいいんでここから見てって)
オトが画面を触ると、演技の音声が流れ始めた。その横で、ツムギは少し前かがみになってそれを聞く。
「……前半だけ使ったらどうですか?」
「前半だけ……」
オトは手で音声データをさっと切り取る。再び流された同じセリフは、後半も含めて演技が少し変わって聞こえた。
「とりあえずこれで行きましょう」
ツムギは体を起こしそう言うと、後ろに振り返っていく。その背後でオトは画面を触りながら了解を返した。
扉を開けて外に出ていくと、名前を呼ぶ声がふらっと聞こえた。
見るとこっちに向かって来ている姿たちがいた、先頭には黒いもじゃ髪がいる。ツムギは挨拶を振ると、近づいてくるアヤが言った。
「ねえアニメフェア用のグッズって何か作んなきゃいけないの?」
「あぁそれか……」
後ろで扉が閉まっていくのを背で聞きながら、ツムギはゆるやかに理解を示す。
「なんか面倒くさいんだけど」
アヤが立ち止まりながら言うと、後ろから、そうですよねと、アカネが生き生きと入ってきた。
「あ、そう思います?」
ツムギは出てきた茜色に目をやると、アカネは頷き、
「うーん、私は……」
「俺作るけど」
言葉を出しかけると、横から司が口を挟んでくる。
「……一人で?」
「うん。別に量は少なくてもいいんですよね?」
疑問を向けられたツムギは肯定に答えた。司は続け、
「なら作ってもいいけど。っていうかどうせ作ることになるって、今回のタマ祭りだってそうだったじゃん」
「あー…まあ…」
と説得を続けて振っていくと、アカネは腕を組み、思案に漂う。
その様子を見て、アヤは前に向いた。
「なんか他にやりよう無いの?」
「他?……うーん」
一方で、その一群の後ろに、小さい影が静かに近づいてきていた。一番後ろで立っていたヒロが、それに気づいて振り返る。
こんばんはと小さい声で挨拶すると、近づいてきた焦げ茶の髪は、すっと言った。
「アニメフェア参加するんですか?」
少し頭を下げてヒロは聞き、はいと頷くと、コトハはへーと、ゆらゆら頷く。
「…バッティングセンター行きます?」
ヒロが唐突に言うと、
「あっ行こうっ」
とコトハの薄い瞳に光が入り、顔を明るくした。(コトハは山にいたやつ。……一々説明せんでも分かるって?…まあいいから聞いといて)
再び前方の数人。
「……じゃあ二次創作もOKにするとか?」
「それいいかも!」
アカネが肯定に声を明るめた。ツムギが漂いの音を漏らす前でアヤは続け、
「何なら出展されてるやつと関係なくてもいいってするとか。…許可してる人がどれぐらいいるか分かんないし」
と言うと、アカネが声を続けた。
「確かに!……だって要は、そういう盛り上がりが欲しいだけですよね?」
そう目を振った先で、ツムギは漂い頷く。
「まあそうですね。…それ悪くないかもね、分かったちょっと言ってみる」
そう言って目を下ろし手を動かし始めながら、ツムギはその場を離れていった。
話し声が残る中、アカネは解かれたように振り返っていく。後ろに目をやると、静かな2人がぼそぼそと話しているのが目に入った。
「……あれ、どっか行くの?」
あくびをしながら言うと、話を終えた司がそれに気づき振り返る。
「ヒロ、バッティングセンター行く?」
ヒロは俯いたまま小さく頷く。その後ろでコトハはソラを触っているようだ、手元に集中して動かない。
司は続け、
「じゃああそこ行ってみない?……新しくできた、射撃場とプールが一緒ってとこ」
「そんな所あるんですかっ!」
コトハが手元から目を引きはがしながら、小さく食いついた。
それを見るアカネは服を緩めながら、思い出したように司を見る。
「でも服作んないと」
「あぁそっか……じゃあ先にそっちやってしまおう」
そう後ろに呼びかけていき、一同は動き始める。
アニメ館の5階にて。
5階は、全体的に黒っぽく、へんてこな飾りが盛られている。
上の方のテラス席にて。
シンプルなメイド服を着た、黒髪ロングがいた。丸テーブルの席に座り、目の前に映るホログラムを眺めている。
下の1階席の方から、活気がさらさらと流れてくる。
辺りの席にも人がいた。その丸テーブルは数人用のようで、少し大きめだ。
そこに、黒っぽい人が近づいてくる。
「これ何?」
メイドが顔を上げて問うと、ゴスロリは隣の席に腰を下ろしていきながら答えていく。
「ここの内装をホログラムにするなら、どうするかっていうのを考えてるんだよね」
「へー……こんな感じになるのか」
メイドがホログラムを眺め呟いていると、そこへ近づいてくる2人の影があった。
「ツムギどの、どうなったでござるか?」
テーブルに来た、その内の一人の、不潔なたんぽぽの髪が聞いてくる。ツムギはその方を見た。
「一応これから話聞いてみるつもりです」
それを聞いた2人は把握に漂うと、もう一人の唐辛子の髪が聞く。
「出来そうですか?」
「……はい。多分大丈夫だと思います」
間を落としてすっと頷く。メイドがホログラムから、それに目をやる。
唐辛子が了解を言いかけた時、後ろから別の声がして振り返った。
「ツムギーっ」
テラス部の向こうから、空色の髪の小さいやつがすたすたと歩いていきていた。
じゃあいいか、左様でござるな、と来ていた2人は会話をまとめると、適当に散っていく。
「すいません、ここいいですか?」
さらに別の声にツムギは振り向く。お盆を持った客が2人、テーブルの近くに来ていた。
コスプレみたいな派手な格好をしている。ここの4人席の、残りの2つの席を指しているようだ。
どうぞとツムギが言うと、2人は謝辞を言い座っていく。
傍で小さく動いていたハネは、客の動きから自分の体をどけ、ツムギの方を見た。
「実際に運営として参加したって人がいて、その人に話聞けることになったから」
座って聞くツムギは、それを受けて分かったと頷く。
「すぐ来るらしいから、迎えに行ってくる」
ハネはそう言い残すと、再び向こうへ駆けていった。
たんぽぽがテラス部の外へ出て、歩いていく。
料理屋部の外にも人が多く歩いていた。あちこちに珍妙な格好の人が見え、コスプレハロウィンみたいだ。
壁に揺れる画面の映像を横に歩いていき、人の足音が小さく耳に入っていく。
やがて宿部に差し掛かり、明るい通路に扉が並んでいるところを歩き始めると、通路の向こうから歩いてくる人に、動きが入った。
「カケルさん!」
たんぽぽは足を止め、うぬ?とその方を見ると、見覚えのあるイチョウの髪に気づいた。
「トオルどの!どうしたでござるか?」
「すいません、ナギサさん見ませんでした?」
トオルは近づいてきながら、疑問を転がしてくる。
「いや見てないでござるけど」
「そうですか…」
歩みが落ち着いていき、トオルはちらっと辺りを眺めた。たんぽぽが疑問を浮かせる。
「どうかしたのでござるか?」
「いや……何か二次元で祭りをするっていう案があったんですけど、どうするんだろうと思って」
「……二次元で祭り…とな?…」
聞くたんぽぽは声色を持ち上げると、その前でトオルは首を傾げる。
「っていう案があったんですよね。…いいや、会場に行って探してみます」
そう言い、考えを巡らし始めたたんぽぽの横をすれ違っていくと、カケルは遅れて反応し振り返った。
「一体何でござるかそれはっ!」
何でござるかっっ!!




