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制作者たち

  がちゃっと元気な音が扉を開けた。よぼよぼな老人が弾むように出てくる。

「ちょっと待ってて!」

老人は言葉だけ出して、すぐに引っ込んでいった。

  扉が開き、アカネがきょろっと見回しながら入っていく。

広い玄関ホールが広がっていた。軽やかに吹き抜けた壁に、奥に続いている廊下がいくつも見える。

 ヒロが後に続き入っていく横で、アカネは(かが)んで靴を脱ぎ始めた。ふと見ると、そばに靴が何足か置かれているのに気がつく。

「……あれ他の人いるの?」

屈んだまま手を止めぼそっと呟いた。その横でヒロは無言で脱いでいっている。


部屋の一つに入っていくと、さっきの老人が一人で座っていた。

 乾電池みたいな服を着て、ひょろっと若草(わかくさ)の髪が生えたその人は、こたつっぽい机に座って作業をしていた。老人は入ってきた2人に気づき顔を上げる。

「ごめんちょっと待ってて……あとちょっとで終わるから」

そう言いながら手を動かしていき、絵を描いているようだ。

 辺りにも絵が散っていた。こまごまとした物が(あふ)れる部屋を、近づいていきながら軽く見る。

「え?(ツカサ)の部屋じゃないの?」

(ツカサ)老人は手元を見ながら、

「うん共同っていうか……まあ一応他の人の部屋なんだよね」

と鉛筆を動かしながら答えた。アカネは立ち止まり、そうなんだと、部屋を見回す。

「そうだ服はどうする?」

思いついたように言うと、司は手元を見て答えた。

「服は……あとデザインの工程が残ってるだけだから」

「あぁ、じゃあそっちは後でやればいいか」

アカネは納得すると、軽く頷いて視線を宙にやっていく。

「うん……よしとりあえずOK」

カチャリと鉛筆を置くと、老人は立ち上がった。

「じゃあちょっと……近くに俺の家あるからそっち行こう」

そう言って素早く歩き始め、後ろの方に立っていた灰色の男形を通り過ぎて、外へ向かっていく。別にあるんだと、それを追ってアカネも動きだした。


マンションの多くは4列構造になっており、外側2列の部屋は窓があり面積は小さく、内側に挟まれた2列は窓は無いが、2倍の広さがある。今いた部屋は内側だ。

 また建築はその修復に関しても、補助機能により簡単に行えるので、マンションの部屋は改造が容易(ようい)だ。限度はあるが横にも縦にも穴をあけて拡張することが気軽にできる。最初の方で出てきた音楽スタジオなどは、そのように拡張されて作られている。


アカネは閉じかけた扉を押し戻し、外へ向かう。マンションの通路に身を出していくと、司が斜め前の扉に入っていくのが目に入った。

「あっそこ?」

勢いでずざずざと飛び出していき、閉まりかけた扉に手をかけて開いていく。

「作品はどうするか考えた?」

照明の狭さが目に入った。廊下をすたすたと歩いていく司は、曖昧(あいまい)相槌(あいづち)を残し、ふっと姿を消していく。追ってアカネは足元を軽く(はじ)いて上がっていった。

「とりあえず一回制作ちゃんに通してみよう」

さっきやってみたよ、と部屋の中から声が聞こえる。

「やった?」

アカネはリビングに入り、ちらっと室内を見る。

 飾り気のない壁と天井に、大きなディスプレイが目につく。真ん中にぽつんと置かれた低いテーブルに、若草の老人は胡坐(あぐら)をかいていた。

「うん……制作ちゃん使いやすいね」

「あぁ、やっぱそうなんだ」

手元をいじる司の横にアカネは素早く座っていく。

 手元に画面が現れた。ヒロが部屋に入ってくるのと同時に、司はディスプレイの方へ足を出す。



エンディングが流れ始めると、空気がほどけて姿勢を崩していく中で、司が動いた。

「まあ細かく修正したい部分は山ほどあるけど」

リモコンで画面を止め、続けて手元のソラを触っていきながら続ける。

「とりあえずキャラデザは、ヒカリビさんって人に頼んでみたくて……この人」

そう言いながら、司は影の画面の角度を動かし、2人に見せた。

「へぇ、かっこいいね」

画面を覗き込んだアカネが呟くと、後ろでヒロも感嘆(かんたん)の音を漏らす。

 アカネが顔を上げた。

「…どれぐらい金額かかるの?」

「それはこれから連絡して聞いてみるけど」

「ふーん……他はどうする?」

身を引きながら続けると、司は腕を組んで言った。

「えっとね……動きをプロの人に頼んでみたいんだよね」

「プロ?!」

うんと平然と頷く司を、アカネはじっと見る。

「……どうやって頼むの?」

「さあ?」

「連絡先は?」

「知らんw」

「は?w」

笑って体を緩めると、司は腕を開いていく。

「いやーでもやっぱり動きはプロの人が上手いわw」

そう元気に被せていくと、アカネは声を重ねる。

「そりゃそうだろうけどさw」

「……とりあえずハヤテさんに聞いてみる……?」

横からヒロが口を挟んでいき、2人の振り向きを受けた。

「あっそうだ!そうしようっ」

司がそれを聞き勢いよく立ち上がると、2人も連なって体を起こしていった。


  3人は部屋を出ていく。(にぎ)やかに擦れる足音が廊下をいく。

「そうださっきアニメフェアの話したじゃん」

弾むように歩いていきながら司が振り向くと、アカネはうんと頷いた。通路を抜けていき、数個並んだエレベーターが見える。

「それ俺らも参加してみない?」

「…具体的に何するの?」

話しながらエレベーターに近づきボタンを押すと、扉が開いた。

「ホログラムのPVみたいなのを作って、……あとグッズとか作るんだって」

「グッズかー……」

明るい小部屋に司に続いて入っていきながら、アカネは腕を組んでいき、思案をこぼしていく。

 司はうんと頷き、ヒロが入っていくと、たっとボタンを押した。

「えー難し……」

奥で壁に背をつけていきながら、アカネが呟く。扉の隙間を眺めると、やがてふっと肌が浮いた。

「……業者に頼むとかってこと?」

澄んだ声が部屋に残る。パネルの傍に立つ司は振り向いた。

「いや自分で作っていいと思う。……特にどれくらいの量作らなきゃいけないとかは書かれてないし」

「……じゃあ適当でもいいの?」

アカネが続けて漂いながら言うと、司は肯定した。

「うんそう思うけど」

体が緩やかに押された。アカネがふーんと呟く先で、外の空気が小さく開いていった。一行は動いていく。



  音楽スタジオの扉が開き、若草の髪が入ってくる。きょろっと中を見回しながら入っていくと、入り口のすぐ前にあるソファで、座って話している2人が目に入った。1人がこっちを見る。

「司はアニメフェア参加するの?」

もじゃな黒髪が、入ってきた一行を見て言葉を投げる。

「あぁ!参加します。……アヤさんは?」

司はソファの方に近づいていくと、黒もじゃは手元の紙を見ながら呟いた。

「んー……まだ分からんけど多分やると思う」

動いていく司の後ろで、入ってきたアカネはきょろっと辺りを見回していく。はっきりと照らされた壁に柔らかな線が舞い、辺りを彩っている。

「最長20分なの?」

もう一人正座でソファに座っていた、暗い髪の人が聞くと、アヤは手元から離れずに頷く。

「立体表現とかやったことないけど……」

暗髪は手元に目を落として呟いた。アヤが持つ紙を覗き込んでいた司は、顔を上げてそっちを見る。

「作り方分かりやすくまとめてる人とかいるし、割と簡単っぽいですよ」

「あっそうなんですか」

発見に浮く暗髪に、司は身を起こしながら、はいと頷く。

「へー……調べてみるか」

ソファの前のガラステーブルに、アカネは腕をつけてしゃがみ込み、その様子を眺める。

 うっすらとした人の気配に振り返る。スタジオを出入りしている人がいるなど、ふよふよと動きがあるようだ。

アヤが横を見上げた。

「ツムギ見てない?」

伸びをしていた司は、少ない髪を()きゆるみながら下を見る。

「いや俺今来たばっかなんで……あハヤテさんいます?」

「ハヤテさんはタマ祭り行くらしいですよ」

暗髪が手元を見ながら代わりに答えた。部屋の奥の方を見ていた司はそうですかと身を戻すと、考えるように巡っていく。

完成したらしいし、アニメ館にでも行くか!みんな!

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