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一行はその場を離れて、風呂場の近くにふらふらと歩いて来た。時間が深くなってきたからか人はまばらで、通路の明かりが静けさに任せている。
歩きながらシゲルが大きく口を開ける。
「……ふぅあ…ねむ」
「でも立体ディスプレイの細かい仕様とかって分かってるんですか?…告知には載ってなかったと思うけど」
新は暖簾のかかった入口に横目をやりながら言う。中から光が漏れている。
「そう、だから今調べてるみたいです」
横でワタルが答えると、そういうことかと、新は納得するように呟き、入り口のそばにある長テーブルに近づいた。上には箱が2つある。
「他の話はどうなってます?どんなイベントになるとか」
箱の上にぱっとついた画面を触っていくと、それにシゲルも気づき覗き込んでいく。後ろでワタルはそれを眺めながら話す。
「とりあえずどういう作品を採用するかって話がありますね」
出現した小さな竹をいじりながら新は振り向き、相槌を打つ。
「最初は新作って話だったみたいだけど、既にある作品でも参加したい人がいるんじゃないかって言ってたり」
ワタルは手を後ろに組んで体を緩めながら言う。ごくごくと飲んでいく新の横で、シゲルも竹を取り出しながら相槌の音を漏らした。
新は喉を動かすと、ふっと手を下ろす。
「……秋祭りって4日間でしたよね」
ワタルは頷く。
「全部で何時間使えるんですか?」
「あぁ24時間やるっていう話もありますね、じゃないと時間が少ないから」
そうですよねと返すと、ワタルは考えるように頷く。
「うん……あとは短い時間で沢山採用するって案とか……その場合はどういう風に短くするかとか?」
シゲルは手を下ろして相槌を打った。
「まあそうだね……アニメの数今多いしね…」
足音が聞こえた。シゲルが言葉の途中で振り返ると、暖簾をくぐる女形が現れていた。出てきてすぐこっちに気づいてくる。
「あれ、なんか集まってる」
穏やかな服を着た、青いバナナの髪だ。(人工の海で、最初にベストハジメと一緒に砂浜を歩いてたやつ。)
新が短く挨拶すると、青バナはとすとすと床を擦りながら声をかける。
「もう時間遅いよー」
シゲルはその言葉に、手元をふっと掻いて吐息半分で呟く。
「ほんとだ、…もう寝よっかな」
ちらりと目を上げると、同じようにソラを確認し始めた残り2人に、じゃあねと言い残してすっと消えた。
「…俺も寝よっかな」
続けて新も呟く。ワタルに視線をやって軽い頷きとともに、2人はその場から流れだした。
向こうへ歩き始めていた青バナに続き、新は行き、ワタルもついていく。
「新さんは?……こっちで寝るの?」
「俺この世界好きなんで、こっちで寝ます」
前で青バナが立ち止まり振り返る。頷いた新は微かに笑むと、ワタルは納得して明るんだ。
「寝る場所はあるんですか?」
青バナに追いつき、並んで歩き始めながらワタルが続ける。新は横に動き、
「一応空いてる所は使っていいってことになってますよね?」
と逆側の方へ確認を振ると、青バナはうんと頷く。
へぇとワタルは小さく揺れた。
やがて壁が抜け、夜の外が見えた。ふっと風がさらい、歩く3人の体へゆるんでいく。
水色の髪が浮き、ワタルが口を開いた。
「明日何か手伝いましょうか?……そのつもりで来たんですけど」
「そうですね。何かあるか明日聞いてみましょう」
眠気の入った声で新は答え、3人は廊下をとつとつと歩いていく。
そうだ、森へ行こう!




