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32.ふつつか魔物サファリパーク

「ようこそ『ふつつか魔物サファリパーク』に」

 魔物サファリパークを訪れたイリーナたちを若い女性が笑顔で出迎えてくれた。


「魔物サファリパークとは聞いていたけど、ふつつかって何よ?」

「この魔物サファリパークは私たちふつつか家が運営しているのでふつつか魔物サファリパークです」


「あー、もしかしてハリセンボンダ家のお隣さんですか?」

「はい、その通りです。私は長女のふつつかウワキと言います」


「「「「「ウワキ!!」」」」」

 思わずイリーナたち5人の声がハモる。そして5人でヒソヒソと話し始める。


「誕生の由来なのでしょうか?」

「いえ、ただ単に原作の名前に近づけようとした結果だと思います」


「コトネ様、原作とはなんでしょうか?」

「こっちの話よ、気にしないで。でも、ウワキはないでしょ浮気は」「お父さんが浮気で生まれた子供でも育てるようという意思表明とか?」


「子供の名前でやることではないのでしょうか?」

「もう面倒だわ。物のついでに直接本人に聞いてやりましょう」

 一同はイリーナの安易納得し頷くとウワキの方に向き直した。


「申し訳ないんだけど、今日ここに来たのは魔物サファリパークを見に来たんじゃなくて、ここの園長に用が会ってきたの」

「はい。詳しいことは既にマキーガイさんからお聞きしています」


「いやマキーガイさんの手際の良さが恐いんだけど」

「本家を超えてますよね」


「あの本家とは?」

「だからこっちの話よ。それで園長は今どこにいるの?」

「糞親父……ではなく園長なら今園長室にいるはずです。ご案内いたします」

 イリーナたちはウワキの後を追いながらヒソヒソと話す。


「今完全に糞親父って言ったわね」「反抗期でしょうか?」「名前のせいじゃないの?」「やはり出生の秘密を知ってしまのでは?」「ブリギッタ様、浮気でできたこと決まったわけではありませんよ」

 そう話しているうちに急にウワキが立ち止まりふり返ったのでイリーナたちはビクッとする。


「こちらになります」

 ウワキは不機嫌そうな顔でそう言うと目の前のドアを開けた。「どもども」と軽く頭を下げながらイリーナたちは園長室に入っていった。全員が室内に入るとウワキは勢いよくドアを閉めた。


「聞こえてたかな?」「どうでしょう」

 園長室にはデスクの向こうでイリーナたちに背を向けながら、葉巻の煙をモクモクと立て座るウワキの父親にしては若すぎる角刈りの男が座っていた。


「えーっと、あんたが園長?」

 男は椅子をくるりと回転させイリーナたちに顔を見せた。


「姫様、ようこそおいでくださいました。どうもどうも、園長代理のサーフィン野ノリノリです」

「いや、園長代理かよ! 園長に会いたいんですけど!」


「あー、園長ならそこで詰め将棋してますよ」

 部屋の角で初老の男性が地べたに座りながら将棋盤とにらめっこしていた。胸には「園長ふつつか堅物」の名札が貼られていた。


「いや、いるのかよ。いるなら最初からその園長らしい椅子に座っとけや」

「何言ってるんですか? 今、ここは僕の席ですよ、バ……少し考えればわかるじゃないですか?」

 ノリノリのなにか引っかかる言い方にイリーナはイラっとしたがどうにか堪えて笑顔を作った。


「図々しい代理だな。というか、園長がここにいるなら代理は必要ないのではないか?」

 ブリギッタの疑問にノリノリはやれやれと言わんばかりの表情を浮かべ呆れるように笑った。


「知らないんですか? 園長は諸事情により今まともに喋れず、仕事ができる状態じゃないんですよじゃなきゃ代理を立てるわけないでしょ? バカだなー」

 明かに人を小馬鹿にしたノリノリの態度にブリギッタは今にも殴りかかりそうであった。とうか半歩前に出ていたが、コトネがブリギッタの首根っこを掴んでいたため実行には移せなかった。


「なんというか……随分と失礼な方ですね。なぜこのような方が代理なのでしょう?」

「バカだなー、僕が園長の次に偉かったからに決まってるでしょ? それに初対面で失礼な方って君の方が失礼じゃないかな?」

 テレーザの表情は特に変わらなかったが、テレーザの後ろの霊たちが怒り高ぶっていたのは霊感のないコトネたちでもわかった。


「まあまあ皆さん落ち着いて、この男に特に用はないので放っておきましょう。私たちが用あるのはふつつかさんなのですから」

コトネの発言を聞いてノリノリは鼻で笑う。


「本当にバカだなー。だから園長は今、入れ歯を失くされて喋れないの。だからこうして僕が園長代理をしているんじゃない。園長に用があるなら僕が代わりに聞きますよ、わかった? 全く、バカだなー」

イリーナたちがノリノリに腹を立てる中、コトネだけがニヤリと笑った。


「バカはあなたです。私は今、わざわざ丁寧にふつつかさんに用があると言いました。園長に用があるなどとは言っていません。故に園長代理であるあなたの出る幕はありません。それともなんですか、あなたはふつつかさんという人間の代理でもあるというのですか? 全く、これだからバカは」

 コトネの手痛い反撃にノリノリは顔を歪めた。


「バ、バカだなー。園長は今話せない状態なんだから園長個人に用があっても僕に話した方がいいんじゃないかな?」

 コトネはニヤニヤと笑う。


「本当にバカですね。もう一度聞きますけどあなたはふつつかさん個人の代理ですか?」

「いや、だから」

「だからとかいいんで質問に答えてください」

 ノリノリはばつの悪そうな顔をした。


「いや、それは勿論違いますけど……そんなことも説明しなきゃわからないんですか? バ」


「バカはあなたです。あなたが権利のない主張を始めたのでわざわざバカにもわかるようにあなたにはそんな権利はないということをわからせるためにこんな質問をしたんですよ。本当にバカですね。あー、それとあなたはふつつかさんは話せないから用を聞けないと言いましたが別に話せない状態でも筆談などでコミュニケーションをとる方法はたくさんありますよ。まあ、バカだからそんな簡単なことも思いつかなかったのでしょうけど」


「…………」

 とうとうノリノリは何も言い返さなくなった。それを見てイリーナたち4人は嬉しそうにニタニタと笑い追い打ちをかける。


「バカね」「バカだな」「バカなのですね」「バーカバーカ」

 ノリノリはたまらず「失礼、仕事があるので」と告げて部屋から出て行った。イリーナたちは満足そうであった。


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