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27.イリーナパーティ完成?

 幽霊たちに見送られ、イリーナ一行は宿屋街をあとにした。街の人たちが幽霊だと知らないイリーナと幽霊を従えるテレーザは笑顔で手を振って別れに応えた。その横でコトネたちは薄っすら見える霊たちに青ざめた顔でか弱く手を振っていた。


 次なる目的地は港町ツルツール。ツルツールは囚われの勇者ディアからの情報で魔王軍幹部の攻撃を受けているという情報があり、真っ先に向かわなければいけない街のひとつである。


 ようやくパーティの上限である4人が揃ったイリーナたちは迅速に向かうはずであった。


 しかし、イリーナたちの歩みは亀のごとく遅かった。正確にはイリーナの歩みがとてつもなく遅かった。もっと言えばイリーナの歩みからはやる気が、生気が感じられなかった。


「姫、真面目に歩いてください。もっと言えば真面目に生きてください」


「は? 真面目に生きろ? 今の状態でわたしに真面目に生きろと? あんた逆に人生舐めてんの?」

 イリーナはコトネの当たり前の要望に半ギレ気味に答えた。


「ここまで丁寧な逆切れも珍しいですよ。人生を舐めているのは間違いなく姫ですよ。ディアさんが魔物化するまでの時限がくっきりはっきり明示されているので、それに間に合うようにはきはき動いてください」


「いやいや、そんなのはどうでもいいわ! 見なさい今のこのパーティを!」

 イリーナはビシッと自分のパーティメンバー三人を指さす。

 真剣にそう訴えるイリーナに対しコトネは真顔で首を傾げた。


「攻撃特化の魔法使い、守り重視で前線で体を張れる戦士、回復は勿論攻撃もできるシスター。あまりに恵まれたパーティメンバーでは?」


「どこがよ! よく見なさい、大酒のみの年齢詐称魔法少女、露出癖の女体好き盾しか装備してない戦士、イケメンだったのに道を誤った女装シスター! まともなのがひとりもいないじゃない!」

 まともじゃないと言われた3人は舌を出し、頭を自らの手でコツンと叩いてテヘッと笑った。それに対しイリーナも拳を見せつけるようにしてギュッと力強く握り、怒りを隠しきれない笑顔で応えた。


「それに……」

 イリーナは辛そうに目を伏せ言葉を止める。


「それに、なんですか?」

「私のイケメンパラダイス冒険ライフ計画が完全に終了しちゃったじゃない!!」


「そんな無謀な計画があったんですか? イケメンパラダイス化なんてショートヘアが似合う黒髪女性が男装して男子校にでも潜入しないかぎりできないものなんですよ」


「うん、ちょっとイケメンパラダイスは言いすぎたかな。一目ぼれした男を追いかけて男装して男子校に潜入とか私には無理かな。でもねでもね、パーティ内に一人ぐらいイケメンを確保して、冒険を通して信頼関係を築き上げ、たりイチャイチャしたり、夜を共に過ごしているうちにちょっとしたハプニングが起きていい感じになって、魔王を倒した暁にはそのイケメンと私が結婚するっていうのがこの国にとっても幸せなのではなくて?」


「いえ、別に」

 あっさりと否定するコトネにイリーナは「キィェェェーーー」と奇声を上げ、今にも飛び掛かりそうであった。


 そんなイリーナをブリギッタは背後から取り押さえるというよりは抱き着き宥めるように囁く。


「イリーナ姫、いいじゃないですか男なんて。そんなことよりも俺と、間違えた俺たちとイチャイチャじゃなくて、ウキウキ冒険ライフを楽しみましょうよ」


 イリーナは自身に絡みついたブリギッタの腕を優しく手に取ると振り返りブリギッタに優しく笑いかけた。そして、次の瞬間、一本背負いの要領でブリギッタをぶん投げた。


「正直お前が一番いらないんじゃホケェ!!」

「そんなぁ、それはちょっと酷くないですかあぁぁぁぁぁぁ?」

 そう叫びながらブリギッタははるか遠くまで吹っ飛んでいた。そのまま見えなくなるまでブリギッタは飛んでいくかとで思われたが、投げ飛ばされた林の奥でボスっとなにかにぶつかり止まった。


 何にぶつかったかイリーナたちには見えなかったが、よろしくないものにぶつかったというのはブリギッタが全速力で戻ってくるのでわかった。しかし、その光景はどこかおかしかった。


「ねえねえ、なんか変じゃない? リギリギ本当に真面目に走ってる?」

「言われてみれば、どこか妙ですね。それにブリギッタ様はこちらに走っているよう見えますが何者にも追われてるわけではなさそうですし」


「そもそもブリギッタさんが凄い勢いで近づいているはずなのに、そうは見えませんね」

「あんたら揃いも揃って何言ってるのよ。見なさいよあのブリギッタの顔、なんか林の奥にでも寝てた魔物にでもぶつかって必死に逃げてる顔、ただそれだけじゃない。ぶつかった魔物はブリギッタなんていう小物を追いかけてきてないだけで……しょ?」

 そう言っている途中にイリーナも違和感に気が付いた。


 近づいてきているのはブリギッタだけではない。ブリギッタとその背景、その全てが近づいてきているのだ。

 何が起きているかを理解したイリーナとコトネも逃げ出した。


「イリイリ、コトコトなんで逃げるの? 敵いないじゃん」

「よく見てください。ブリギッタさんを追いかけているのは林です」

 コトネに言われようやく事態に気が付いたソラソラとテレーザも一目散に逃げだした。


「なんで皆逃げるんですか? みんなでこいつらをやっつけましょうよ!!」

 ブリギッタの言うこいつらとは林に見えた木型と草型の魔物の団体さんのことである。その数は一見林に見えるほどの数であり、100は軽く超えているであろう。


「あんたがぶつかって起こしたんだからあんたで処理しなさいよ!!」

「ぶん投げたイリーナ姫のせいじゃないですか!!」


「ぶん投げる原因を作ったのはあんたじゃない!!」

 こうしてイリーナ一行は林と化した魔物の群れから各々全力疾走で逃げながら港町ツルツールへと向かっていったのであった。



 数時間後、イリーナとコトネはとある丘の上にいた。

 と、言っても二人は一緒に行動していたわけではなく各々勝手に進んだ結果、ほぼ同時に二人はこの丘に辿り着いたのである。


 すぐにコトネはポーチから取り出し狼煙となる赤色の煙を出す銃を真上に放ち、ソラソラたちに自分たちの居場所を報せた。

 間もなくソラソラとテレーザも丘に到着した。


 しかし、ブリギッタは狼煙を上げた後もなかなか現れなかった。


「ブリギッタ様いくら何でも遅くありませんか」

 テレーザが心配そうに言う。しかし、3人はほぼ同時に首を振ってテレーザの考えを否定する。


「大丈夫よ、あいつ頑丈だから」

「ブリギッタさんのステータス的にその辺の魔物にやられることはないと思います」

「リギリギを葬ろうと思ったら相当の気合が必要だよ」

 3人の答えに戸惑いながらもテレーザは返答する。


「つまりは、ブリギッタ様は無事ということですか?」

「そういうことよ。何回も殴ってたらわかるのよ。あの変態は殺そうと思っても簡単には殺せないわよ。それよりも暇なんだけど何かないの? コトネ」

 コトネは無言でポーチからトランプを取り出した。

「ナイス」「ソラソラもやるー」

 三人がトランプを始めるのにおろおろしていたテレーザであったが、結局テレーザも参加するのであった。



 イリーナたちの予想通り約1時間後、ブリギッタは無傷で現れた。しかし、心の方はズタボロであった。

 楽しそうにトランプをするイリーナたちを発見すると、ブリギッタはすぐさましゃがみ込んで地面を指でなぞって露骨にいじけ始めた。というよりは傷ついていますアピールを始めた。


「うざっ」「リギリギきもい」「そういうのいいですから」「神よ彼女の愚かな行為をどうかお許しください」

 ブリギッタのアピールむなしく傷はさらに深く大きく抉られた。


 ブリギッタは涙目になりながら立ち上がると、とりあえずテレーザを殴り飛ばした。

「この扱いはあまりに酷くないですか!?」


「ブ、ブリギッタ様の方が酷くありませんか?」

 そのセリフを最後にテレーザはガクッと地に伏せた。


「ちょっとあんたなに味方に手を挙げてるのよ」

「姫がそれを言いますか」

 コトネはポーチから薬草を取りだしテレーザの口の中に突っ込んだ。テレーザは意識がないながらもハムハムと頬張った。


「だって、俺を置いて逃げた挙句にこの言われよう、殴りたくもなるじゃないですか。……というかなんで逃げたんですか? 俺たち仲間ですよね?」

 ブリギッタの力説を見て、流石にちょっと悪いことしかなーと思ったイリーナたちはさっと目を逸らした。イリーナだけはわざとらしく口笛を吹いた。その隙を突いてコトネとソラソラがイリーナの背中をドンっと押し、ブリギッタの前に差し出した。


「ちょっと、あんたら何すんのよ……って」

 そうこうしているうちにイリーナの眼前にブリギッタが迫っていた。


「どうなんですか? イリーナ姫!!」

 ブリギッタの気迫にわずかにイリーナはわずかに後退して再度目を逸らす。


「も、勿論よ。ブリギッタならあの位の魔物たちひとりでなんとかできると信じてたから任せただけよ、そう、そうよこれはいわば仲間としての信頼の証よ」


「イ、イリーナ姫……」

 イリーナの言葉に抉られた傷が癒され今度は嬉しさから目が涙目になった。


 イリーナもそれに答えるように笑顔でブリギッタの肩をポンっと叩いた。                          

 いい雰囲気で終わりそうで今回の件は終わりそうであった。


 しかしコトネはそうはさせない。背後に忍び寄りイリーナの背中に何かを貼り付けた。すると、

『本当はこのままブリギッタとははぐれてしまって代わりにイケメンの戦士を仲間に加え、私のイケメンパラダイス計画の足掛かりにしようと思ったんだけど、やっぱそう簡単にはうまくいかないわね』

 と、イリーナの背中から声がした。と、同時にイリーナとブリギッタは石像のように固まった。


「うわー、イリイリサイテー。リギリギ、言っておくけどソラソラにはそんな意図全くなかったからね。ただ単にあの数の魔物を相手するの面倒だなと思っただけだからね」

「それはそれでどうかと思いますよ、ソラソラさん。因みに私は非戦闘員として当然の行いをしただけです」

 テレーザの主張を伺おうと二人はテレーザをチラッと見たが、テレーザはまだ薬草を味わっていた。


「ちょ、なんかあんたらずるくない? というか今の声はなによ!?」

「今のは王家秘密道具:本音で喋り場スピーカーです。このスピーカーをつけた人の本音が聞ける便利な道具です」


「使いどころおかしいでしょ!! せっかく平和に解決しそうだったのに!!」

「で、ではやはり今のがイリーナ姫の本音で間違いないということでよろしいですね?」


「よ、よ……」

 返答に窮するイリーナの背中から代わりと言わんばかりに声がする。


『よろし』

「だらっしゃぁぁぁぁ」

 物凄い雄叫びと共に猫の手も借りれたらなと思うほどの勢いでイリーナは背中を掻き回しスピーカーを剝がし落とした。


「姫、貴重な物なんですからそんな無造作に扱わないでください」

 イリーナの背中から落ちたスピーカーをコトネは素早く回収する。


「そんなスピーカー捨ておきなさい。いいブリギッタ? 今のことは……忘れなさい」

「……いえ、イリーナ姫忘れなさいと言われまブッ」

 抗議しようとするブリギッタの頬をイリーナは挟んで口を封じた。


「いいから忘れなさい。わかった?」

「わひゃりまひた」

 イリーナの圧に気圧されブリギッタは首を縦に何度もブンブンッと振った。

 イリーナは満足そうににっこりと笑うとブリギッタを解放した。


「り、理不尽」

「隙あらば姫が皆さんをパーティからはずそうとしているというのが分かってよかったじゃないですか」


「そ、そんな気ないわよ!」

「まあまあ、仲間がよくわからない理由で途中離脱なんてRPGの世界では定番だから気にしないでいいじゃないですか」


「RPGってなに?」

「ソラソラさん、こっちの話なのでお気になさらず。私が言いたいのは変に人気出たり、手塩かけて育てられたキャラほど中盤で離脱させられやすいので気を付けてくださいってことです」


「なにそれ恐い」

 若干引き気味のソラソラの隣でイリーナは、


「それもそうね……そうよね、そうなれば私にもまだ望みが……」

 ひとり呟いていた。


「さて、二人が仲直りをしたところで、皆さんこちらに来てください」

「今のは仲直りというのでしょうか?」


「正直、ねじ伏せられただけなのですが……」

 テレーザとブリギッタの指摘など気にせずコトネは4人を手招きし丘の端に呼んだ。


 そこからは建物も道も色とりどりのレンガからできた大きな街が一望できた。そして、その奥には街とは対照的に一面青の広大な海が広がっていた。


「すごーい、なんかオシャレな街」

「この街がツルツールですか。思ってたより大きな街ですね」


「この国の漁獲量の半分を担っている街ですからね。街と接する海岸沿いを端から端まで見てください」

 イリーナたちは目を細め目玉を右から左へとゆっくり動かす。


「わかりますか? ツルツールの海辺は全て整備されており、船着き場か釣りが可能な堤防となっております」

「魚を獲ることしか考えてないのね」


「あのそれはわかりましたが、なぜその船着き場に一艘も船がないのでしょうか?」

「魔王軍幹部がいる街ですからね。恐らくはその幹部に船を全部沈められたのでしょう」


「それよりも私が気になるのは堤防にいる釣り人の方なんですけど。ツルツールってそっちの意味?」

 堤防にはたくさんの男たちが釣りをしていた。その男たちは全員……。


「そういうわけではないはずなのですが……とりあえず、行きましょうか」

 イリーナたちは丘を下り始めた。


 間もなくイリーナ一行は魔王軍幹部六天王の一体が待ち受ける港町ツルツールに到着した。


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