メンデンス復興計画
「マスター!何も頼んでないですけど、ボクらもう出ますね。あ、これ場所、、、いや、ショバ代です!」
どこでそんな言葉を覚えたのか、、、スタンダスタは、1000ベルをマスターに手渡す。
「気前が良いじゃないかい!ありがとさん!また寄ってちょーだい。」
マスターに喜ばれ、気分が良くなったスタンダスタは軽く胸を張りながらカフェを後にした。そしてスタンダスタを先頭に3人もカフェを出た。
カフェを出るとリオが今更な質問をベンジャミンに投げかけた。
「ちょっと、ベンジャミン?あなた、どうにかあたしたちにも見えるようにならないのかしら??」
「実は、、、私に触れた人は全員ではないのですが、見えるようになる・・・時があるんです。試しに振れてみてくださいますか?」
いい加減面倒になってきてはいるが、ベンジャミンの声は今スタンダスタにしか聞こえていない。スタンダスタは言われた通りのことをリオに伝える。
「触れたら?・・・てことはガル?アンタもしかして・・・」
ガルはカフェで、ベンジャミンの頭に触れている・・・というか叩いている。ということは、ガルはベンジャミンのことが見えている!?
リオは後ろを振り返る。すると、険しい顔をしたガルがこちらを見ている。
「おい・・・さっきからよ、スタンの隣にとんがり帽子のおっさんがいるんだけどよ、、、やっぱり・・・」
「オレ・・・お化けが見えるようになっちまった!!」
「誰がお化けよ!!!というか、誰がおっさんよ!!お兄さんとお呼び!お兄さんと!・・・やっぱり、このガキ嫌いだわ、、、、」
「おいスタン・・・この人がベンジャミンさんなのか?」
「ガル・・・残念だけどそうだよ。」
「ちょっと?スタンダスタくん?残念だけどってどういうことよ?・・・メンデンスに連れて行かないわよ?」
「ごめんなさい許してください、悪気はなかったんです。メンデンス村に行きたいです」
スタンダスタは会ってすぐ思っていたが、ベンジャミンはそっち系というかあっち系である。
しかしこれ以上余計なことを言うと折角のメンデンスへと行けるチャンスを逃してしまう。スタンダスタはおとなしく付いていくことにした。
「残念な人ね、、、あたし、やっぱり見えなくても良いわ。それじゃ行きましょうか。よろしくね、ベンジャミン。」
そのスタンダスタの後を、余計な一言を放ったリオが付いていく。
サスラダバータを出て数分歩くと、屈めばギリギリ通れるくらいの小さなトンネルが見えてきた。
「もしかして、この茂みの中に入るんですか?」
声に出してはいないものの、「こんな所通るのかよ!」という思いが表情に出てしまっているスタンダスタ。
「そうよ?ここがメンデンスへと続く唯一のルートなんだからね。」
「まず、これがダメよね」
「えっ」
間髪入れずにリオがダメ出しをする。何のこと?と首をかしげるベンジャミンと・・・スタンダスタ。
「観光客を呼び寄せたいって言ってるのに、こんな小さなトンネルからしかルートが無いとか、こんなの「来ないでください」って言ってるようなものよ?まずは、このトンネルから開拓したほうが良いわね、、、あとは、別ルートの確保。ルート周辺に場所案内の看板の設置。もう、基礎中の基礎が出来てないじゃない?良い??明日から、ここの開拓工事をしてもらうように発注しなさい!まぁ、ほとんどが木々だろうから、1週間あれば大丈夫ね。費用はあたしたちが出すから。もちろん、ちゃんと費用は返してもらうからね・・・出世払いで。」
「ありがとう、、、リオちゃん。あたし、絶対メンデンスを立ち直らせて見せるから。」
「えっとベンジャミンはね、、、」
「もう良いわよ」
「え?」
「もう伝わったわ、ベンジャミンの言葉は・・・」
実はサスラダバータを出てすぐに、リオはベンジャミンの「声」は聞こえるようになっていた。カジノでベンジャミンはリオの肩をポンポンと叩いている。その時にリオも軽くベンジャミンに触れていたのだ。それからかなりの時間が経った所で、今更になって声が聞こえるようになった。しかし、姿まではまだ見えていないのだった。
茂みの中を手探りながら数十メートル歩くと、開けた道が出てきた。そこには一面の花畑が広がっていた。
「なんだか急に穏やかになったなー」
「まぁ、都会に疲れた人たちの憩いの場だからね。」
「「昔は」でしょ?」
「ん、、、」
リオの痛い一言に何も返せなかったベンジャミンは、少しばかりのイラつきを覚えていたがそれはリオに対してではなく、村を再建できなかった自分の力不足に対してであった。自分の腹を、力強く握りしめた右手の拳で殴りつけ、自分自身に気合を注入した。
畑道をしばらく歩くと、目の前に急な坂道が現れた。
「おいおい、これ通るのかよ、、、急すぎだぜ」
「ガル!あんたはホント文句しか言ってないわよね??・・・馬車は無いのかしら?」
「あなたたち、この坂の向こうがメンデンスだからもうひと頑張りよ!!」
「リオ!ボク、荷物持ってあげるから頑張ろ?・・・ね?」
「そんなこと言われたら・・・う、うん」
スタンダスタは、リオが肩に背負っている大剣を受け取り歩き出す。リオは少しだけ赤くなった顔を、俯いて隠した。
「お、おい!!待ってくれよ!!」
俺がもし女だったら、誰かに荷物を持ってもらえてたのかな、、、、そんな思いを抱えて、ガルは一人寂しく坂を登った。
ベンジャミンを先頭に、スタンダスタ、リオ、そしてガルの順で急な坂道を登り切った。4人共通して、膝に手を置き息を整えている。スタンダスタは息を整え、視線を前に移す。一面樹木に囲まれた村と、巨大な木製の門がスタンダスタ達を迎え入れている。スタンダスタが絵本でしか見たことのない不思議な村「メンデンス村」である。
「ここがメンデンス村・・・」
「みんなお疲れ様。ちょっと待ってて頂戴。」
ベンジャミンが門の横にあるレバーを力強く引くと、門がゆっくりと内側に開き始めた。
「さぁ、村の長としてあなたたちを歓迎するわ。どうぞ入って!」
「こりゃすげぇな・・・」
村に入り、ガルが声を出して驚いた。建物すべてが石と土で出来ており、なんとも言えない神秘的な雰囲気がガルを驚きにへと誘った。
「まるで、何処かの遺跡にいるようね・・・とてもじゃないけど人が住んでるとは思えないわ。」
「この村は、昔から独自の「文明」が栄えていた。田畑は豊富だし、資源も豊富だった。大きな川も流れていたから、そこで取れた石で家が作られている・・・私たちが生まれる遥か昔、数百年も前からこの建物は建ち続けているの。これらは先人たちが遺してくれた貴重な財産・・・それなのに私たちが、、、、」
「ベンジャミン?歓迎してくれているのなら、今は悲観的なお話は止めてもらえるかしら??」
「そうね、、、ごめんなさい。じゃあ、今から宴の準備をするから、あそこの宿屋で待っててもらえる?」
ベンジャミンが遠くを指さす。いくつか建物があるが、どれも見た目が似ているため、どれが宿屋なのかスタンダスタ達は理解していない。
「・・・ん?どれが宿屋だ??」
「分からない。リオ、何処か分かる??」
「分かるわけないじゃない!というか、よく今まで観光地として成立してたわよね。立て看板の1つくらい付けなさいよ!!」
「いや、昔からの文明を遺すために・・・」
「昔は昔、今は今よ。観光地にしたいなら、分明云々言わずに現代に合った「観光地」を作るべきよ。そのためには、「観光客」にストレスを与えてはダメ。ホテルどこかしら?ご飯食べるにはどうしたらいい?とか・・・ハテナマークを浮かばせたら負けよ?わかった??・・・ってごめんなさい。お仕事のお話しちゃって。口を出さずには居られなくて。」
「良いのよ。たくさん気づいた事を言って頂戴。それじゃ」
そう言い残し、ベンジャミンは自分の家と思わしき建物の中へと消えていった。
「おいスタン、、、結局宿屋ってどこなんだ?」
「ガル・・・それをボクに聞かないでよ、、、ね?リオ?」
「あたしにも聞かないでもらえるかしら??・・・いいわ。片っ端から入るわよ。」
にじむ汗をぬぐい、リオは一番近くの建物の中に入る。
「すいませーん!誰かいないのかしらー!!」
石造りで天井の高い建物の中で、リオの声が大きく響き渡る。今までで聞いたことのない響き方をしている。辺りを見る限り、ベッドがいくつか置いてあるので恐らく宿屋だろう。
「・・・誰もいないのかしら、、、ん?」
リオはフロントと思われる場所に一枚の置き手紙があるのを気づいた。
「スタンダスタ様御一行・・・?私たち宛だわ。」
「ベンジャミンから話は聞いております。メンデンスにいる間はここを活動拠点にしていただけたらと思います。ベッドもどうぞお好きに使ってください。私は出稼ぎに出ておりますので」
「・・・ということだそうよ?」
それこそひと昔までは、宿屋としてかなりのお客さんに利用してもらっていたのだろうが、今では家業を捨てて出稼ぎに出る始末だ。
「出稼ぎに出るのは構わないけど、果たして歓迎されてるのかと言われたら疑問よね、、、まぁ好きに使っていいってならお言葉に甘えて使わしてもらいましょ。」
リオは荷物を置き、ベッドに・・・は行かず、宿屋の外へと出て行った。
「ん?リオのやつ、どこにいくんだ?」
「トイレじゃない??」
「・・・仕事よ仕事!!まったく、失礼しちゃうんだから、、、」
「地獄耳のリオ」と、巷では言われてるとか言われていないとか・・・走ってこちらに戻ってきたリオは、スタンダスタに怒りをぶつけた。そして軽く息を整え、再び外に出て行った。
「よくあんなところから、聞こえたよな・・・さて、俺らはどうするよ?」
「あ、ガルごめん。ボクも出かけてくるよ。メンデンスを写真に収めたいからね!!」
「おい!・・・行っちゃったよ。」
首にかけたカメラを両手で持ちながら、スキップで宿屋を後にするスタンダスタ。その姿を見てしまい、ガルはスタンダスタを引き留めることが出来なかった。
「なんだよ、みんなして・・・さて、オレは何しようかな。」
考えること約10分。特に思いつかなかったガルは、一先ずベッドで寝ることにした。




