姿無き者の真実。
状況を把握しているスタンダスタが、まず奥のテーブルへと歩きだす。それにガルとリオはついていく。
スタンダスタは席に付くが奥に行こうとはしない。
「スタン!奥に詰めてくれよ!」
「いやいや、これ以上詰められないって!」
「なんでだよ!!」
口答えするスタンダスタをガルは強引に奥へと押し込んだ。
「痛い痛い痛い!!痛いってガル!!隣にはベンジャミンさんが居るんだよ!!」
スタンダスタの横には、無言で押し潰されているのを必死に我慢しているベンジャミンが居た。
「あ、そうだったんか。そりゃ悪いことしちゃったな。・・・ちょっと失礼。」
ガルは徐にベンジャミンが居ると思われる場所に手を伸ばしてみた。
「パンパン」
見えない何かに触れているガルは、それを何度か叩いてみる。実際はベンジャミンの頭を何度も叩いていた。
「痛ーい!!!ちょっと!何よ!この無礼なガキは!!」
ついに耐えきれずガルの手を払い、大声をあげるベンジャミンではあったが、もちろんガル本人の耳には届いていない。
「うぉ!!動いた!!やっぱ本当に居るんだな、、、」
「ボクにはずっと見えてるんだけどな、、、」
スタンダスタがぼそっと呟く。
「あのさ、状況を説明してくれるかしら。」
カジノで得た情報によって事態は把握しているものの、本当の真実を一早く知りたいリオは、話を切り出した。
「スタンダスタ君、紙とペンを頂けるかな?」
「あ、はい、、、えーと」
スタンダスタは、ベンジャミンに指示をされるとテーブルの端に置いてあった店内アンケートの用紙と横に置いてあったボールペンをベンジャミンに渡した。
「お!!ボールペンが浮いてやがる!!すげぇ!!」
目の前で起こるあり得ない状況に、ガルはテンションが上がっていた。
「うるさいわね、このガキは・・・」
先程痛い目に遭い、ガルに対する好感度が皆無なベンジャミンはポロっと愚痴をこぼしながら、アンケートの裏表紙にペンを運んだ。
「ある特定の人物だけが私たちメンデンス族の姿を目にすることができるんだ。そして私たちは、その特定の人物から浮かび上がっている不思議な「オーラ」を感じることができる。それを感じ取って、スタンダスタ君を見つけることができたんだ」
「オーラ?ボクからそんなものが出ているんですか!?・・・ねぇ、オーラ見える?」
「俺たちに見えるわけ無いだろ」
当然のツッコミをガルから受けるスタンダスタ。
「なるほど、じゃあなんでスタンの名前まで分かったのかしら?」
リオが質問をすると、ベンジャミンは2枚目のアンケート用紙を手にし、その答えを書き出した。
「オーラが見えると同時に脳内にインプットされるというか、、、このメカニズムは私たち自身にもよく分からないんだ。」
「ふーん。まぁ透明人間が存在してる以上、そんな不思議な力があってもおかしくはないわね。メンデンス族が持つ、特殊な力だと思えば。で、特別な人を見つけ出して、何を企んでるのかしら?」
核心をつく質問をリオは投げ掛ける。
「え、、、、」
ベンジャミンは明らかに動揺している。持っているペンをテーブルにコツコツと打ち付けている。
「テーブル、汚くなるわよ?」
姿は見えないものの、リオは彼が動揺しているのを雰囲気で感じ取っていた。
「ちょっとリオ!!さっきから何言ってるの!?企んでるって!?メンデンス村は今、壊滅寸前なんでしょ!?」
「そう。壊滅寸前なのかもね。でも、スタン?あなたが思ってる「壊滅」とはちょっと訳が違うのよ。」
リオは、自分の見解を話始める。
「色々、カジノで聞き回ってわかったのだけど、あのレストラン貴方の村の人たちが経営してるらしいわね。メンデンスの人間を目視することが出来る所謂「特別な人」達だけが入ることが出来るレストランを。それこそ、数十年前はこのレストランに行ったことある人が結構居たそうね。話聞いてると、そのレストランの事を知ってたのは、あたし達より遥かに年上の人達。・・・恐らくだけど、ここ最近あなた達の事を見える人達が劇的に減ったんじゃないかしら?レストランの経営、そして「不思議な村」として、かつて観光地ともなっていた場所に「観光客」が来なくなった事によって、村が財政難に陥っている。もし、そうだとしたら、、、なんとも不憫よね、透明人間って。」
ベンジャミンに対し、同情の言葉を加えながら、話を続ける。
「カジノで一人の男が言っていたわ。「メンデンス村に来ないか?と誘われ、着いていったら、いきなり盛大にもてなしをされたんだけど、酒を飲んだらいきなり眠気に襲われて、、、気づいたらサスラダバータに居たんだ・・・金を抜き取られた状態でな」と。村がどうだか知らないけど、そんな事しても良いのかしら?」
「、、、、」
ベンジャミンはうつむいたまま、しばらく無言を貫いた後、3枚目のアンケート用紙を手にした。
「自分の為、そして何より村のため、、、そうするしかなかったんだ。メンデンスは自然豊かで景観も美しい。そのお陰で、観光目的で来る人間がそれなりに多かった。しかし、いつからだろう。急に観光客が少なくなったんだ。原因は分からないけど、メンデンスの人間を見ることが出来る「特別な人」が急激に減ってしまったんだ。地図にも載らない位小さな村で、そして、村の人間が誘わないと来てもらえないくらい辺鄙な場所にあるんだよ。でも私たちの姿が見えなきゃ、誘うことすら出来ないでしょ。なんとか、頑張ってはいたのだけど、ここ最近になってついに、自分達の力では生きていけないくらいになってしまった。・・・透明な事を恨んだよ。もうどうでも良くなったんだ。だから、死に物狂いで私の姿を見る事が出来る人間を探しだして、村に誘い、、、金を盗った。君たちの金も、盗るつもりだったんだ、、、」
「さすがに、その行為に対しては同情できないわ。貴方、最低よ」
リオの言葉に、ベンジャミンは何も返すことが出来なかった。
「ベンジャミンさん、ボクらを騙そうとしたんですね。ちょっと、、、酷すぎます。」
スタンダスタに対しても、ベンジャミンはただただ頷くことしか出来なかった。
「なんだなんだ!?なんて書いてあるんだ!?」
ベンジャミンが書いたメモを見れていなかったガルは、真実をイマイチ理解していなかった。
「ガル、あなたみたいな人をとある国では「KY」って呼ぶらしいわよ」
「え?「KY」?どういうこと?」
「自分で考えなさい」
「なんだよ、皆してテンション下げやがって、、、もっと楽しもうぜ!!な、おっさんもさ!!」
ガルは、ベンジャミンが居るであろう辺りに向かって、呼び掛ける。それを見てリオは、大きくため息をついた。
「はぁぁ、、、、。ベンジャミン、あなたはもっと他の方法を考えなかったの??別に、あなた達の姿が見えなくたって、村は存在するのだから、観光客がもっとメンデンス村に来る方法を考えれば良いんじゃないの?看板を立てるであったり、特別な人を一人でも村で雇って営業に行かせたり、、、サスラダバータで、レストランを経営する位なんだから、もっと行動しなさいよ!!変な嘘つかないでさ、、、」
「・・・そうだ!!村のパンフレットを作ろうよ!!ボクが写真を撮ってあげるからさ!!」
うつむいていたベンジャミンは顔をあげ、スタンダスタに話しかける。
「、、、良いのかい?ボクは君たちを騙そうとしたんだよ?そんなボクの手助けをしてくれるのかい?」
「そりゃ、ベンジャミンさんがやろうとしていた事は決して許されることではないですよ。でもメンデンス村の未来のためにやっていたとしたら、それはただやり方を知らなかっただけで、もし同じ立場だったらボクも同じことをしてたかもしれません。だし、ボクらは未遂ですからね。それより何より、あのメンデンス村に行けるんでしょ??楽しみで堪らないですよ!!だから、早く連れてってくださいよ!!」
「・・・私は、とんでもないことをしようとしていたんだな。本当に申し訳なかったよ。そして、、、ありがとう。それじゃ、早速だけど君たちをメンデンス村にご招待するよ!もちろん、盛大にもてなしもさせてくれ。」
「ありがとうございます!!リオ!ガル!!ベンジャミンさんが、メンデンス村に招待してくれるって!!盛大なもてなしってのもしてくれるらしいよ!!」
「もてなしね、、、お酒だけは飲みたくないわね。」
ベンジャミンは軽く微笑み、4枚目のアンケート用紙を取り出す。
「お酒は20になってから」




