1話目
まどろみからゆっくりと意識が浮上する。
ぼんやりと目を覚ました俺は朝になっていることに気づき、跳ねるように上体を起こし目覚ましがわりの携帯を探す。
やべぇ!今何時だ!?
8時を過ぎていれば風呂に入れないし9時を過ぎていれば遅刻確定だ。一人暮らしで目覚まし音のしない目覚めは相当心臓に悪い。
跳び起きた一瞬でそんな事を考えた俺は、目に入る風景に目を疑った。
「ここは・・・どこだ・・・?」
ニ○リで買った心地よいスプリングの効いたベッドに、シンプルながらに俺好みだったモノトーンの布団カバー一式はそこにはなく、少し厚手だが目の荒い白いシーツで、ベッドのスプリングも全然効いていない。(確認したら藁みたいなのがドッサリ詰めてあった)
壁は見慣れた白い壁紙はなく、手垢なんかで黒ずんだ、木の板で出来た良く言えばレトロな、ぶっちゃけ小汚い壁。
そして床はフローリングは一緒だが、これまた酷く黒ずんでいる。
キャスター付きの椅子と、パソコン用のL字型テーブルは木製の円形テーブルと椅子に、クローゼットは無く、頑丈そうな箪笥と、乱雑に物が入った木箱、後はゲームぐらいでしかお目にかかったことの無いような、宝箱のような箱がそれぞれ一つずつ隅の方に置いてあった。
そんな周囲を見渡した俺は胃の辺りに急に重いものを詰められたような感覚を起こし、全身から汗が吹き出した。簡単に言うと、パニックを起こしたのだ。
なんだこのうらぶれた別荘みたいなところ!?ヤクザか何かに誘拐されたのか!?何故俺が!?
絶叫しそうな心を抑え、ヤクザ我現れた時にどうすれば生き残れるかを必死で考える。
飛び掛かるか!?だめだ!そんな事で勝てるはずが無い!そもそもビビって足が竦かもしれん。助けを求めるか!?いやそもそも何故俺が誘拐されたかを聞きたい!嫌だ死にたくない!!!
心臓が早鐘を打ち瞳孔は開いているのに目には何も写っていなかの様に頭に入ってこない。そんな状態で数時間、いや数分だったのかもしれない。徐々に俺は冷静さを取り戻し、再度周囲を確認した。
辺りはしんと静まり返り、人の動く気配はない。
部屋ばかり見渡していたが、ベッドの横に窓があり、こっそりと外を覗く。
どうやらここは2階建てのようである。そこそこに高い木が窓の近くに1本、そして数十メートル離れたところから森のように鬱蒼と並んでいた。
もしもの時はこの木を伝って降りよう。木登りなんて小学生以来だが2階くらいだし何とかなるだろう。
そう思いながら意を決した俺は足音をなるべく立てないようにそっとベッドから足を下ろした。




