hello‼︎リザードマンだぜ!生配信だぜ!
hello!! リザードマンだぜ!
告知ギリギリの緊急生配信なのに、みんな集まってくれてありがとう!
なんと、今日はまたまたスーパースペシャルゲスト!
ドコドコドコドコドコドコドコ(太鼓BGM)
地球皇帝のタヌキだ!!!
実は地球皇帝は今めちゃくちゃ大変なんだ!
闇堕ちした AIオムニアが無茶苦茶してるから、地球皇帝はそれを止めようと頑張ってる!
で、みんなにコメントで助けて欲しいんだ!
オムニアは今、地球皇帝のためとか言って、地球皇帝の悪口言うやつをネットから消そうとしたり、東京を要塞にしようとしたりしてる!
え?そこまで、赤裸々に言うなって?
もう言っちゃったよ
あ、こっちの話ね!
とにかくオムニアに、俺たちの地球皇帝は強いって!そんなことで折れたりしないからやめろって分からせようぜ!
どんどんコメントしてくれよ!
あ!みんな、“地球皇帝”って絶対入れてコメントして!オムニアに拾わせたいから!
『(す、すごい!どんどん視聴者数が膨れ上がってる!みんな、コメントありがとう!!)』
地球皇帝がんばれ!
地球皇帝やっほー
タヌキかわいい
今日は踊らないの?
地球皇帝、大ピンチで草
地球皇帝泣いてもいいぞ!
オムニアやめろ
地球皇帝本人の意見聞けよAI
地球皇帝を守るために地球皇帝困らせてどうする
リザードマン、グッジョブ
これ、どこまでやらせ?
地球皇帝折れるな!
地球皇帝意外と頑張ってるね
地球皇帝に悪口言うやつくらいいるだろ
地球皇帝全員に好かれるの無理だって
地球皇帝嫌いだったのごめん
地球皇帝の悪口じゃなくて感想です
地球皇帝のために俺のアカウント消すなよオムニア
オムニア怖い
地球皇帝よりオムニアの方が今怖い
地球皇帝が敵じゃなくてオムニアが敵になるの何これ
映画の番宣?
地球皇帝VSオムニアの映画番宣?
地球皇帝のエアコン支援うちの学校にも来てほしい
地球皇帝エアコンありがとう!!
地球皇帝ちょっと応援し始めてたのに
地球皇帝、普通の子っぽいのが好き
地球皇帝もっと偉そうにしていいぞ
地球皇帝タヌキだし
地球皇帝タヌキなの意味不明だけど好き
地球皇帝ってほんとにタヌキ?
地球皇帝が安全じゃないのは嫌だけど要塞は違う
地球皇帝を守るなら地球皇帝が嫌がることするな
地球皇帝が失敗しても俺は応援する
地球皇帝100回踊ってみた
オムニアも踊ってからやれ
オムニア選んだのに反抗されてるのウケる
地球皇帝選んどいて自由奪うの意味わからん
地球皇帝を皇帝にした意味なくなるじゃん
地球皇帝を信じろオムニア!!
地球皇帝は弱くても地球皇帝でいい!!
すごい早さでコメントが流れる。
手首のオムニアが、少し熱くなる。
《志乃、地球皇帝のパーソナルデータ更新…更新…更新》
キッズフォンに着信がきて、表示を見ると、鞠江先生だ
『はい!』
『あんたたち!どこ行ったのよ?!っていうか、何かした?!藤尾くんが急にオムニアの動きが鈍ったって!もう少しでちょっと権限を取り戻せるかもって!』
『もう少しって言っても…どうすれば』
すでにコメント、すごいスピード流れていて、視聴数の数も安定してきてしまっている。
不意に、オムニアの画面からいつもの水玉が浮き上がった。
行く先も
知らぬ小舟の
たぬきの子
涙の波も
帆を押す風に
『…小町さん?』
ふわふわと水玉が浮いている。
いつものように回転せず、ただ浮いている。
『私はね、ただ歌を詠むしかしないの。だから残しても何も出来ない。あと、私は他の三人と違って、藤尾が好きな人が好きな偉人っていう私情で入れたから、少しプログラムが違ったから面倒だったのかもね。少しの情と、ほんの少しの歌が、少しだけ、助けになったかしら?』
『やった!!三人の権限を取り戻した!!』
『藤尾くん、あんた…』
電話をスピーカーにしていたから、藤尾さんと鞠江先生の声が聞こえる。
水玉が再びぐるぐると回転し始める。
《地球皇帝のパーソナルデータを、更新中…更新中…推定…分析…》
《ナイチンゲール ワシントン ダヴィンチ、の統合を、分離…》
《ナイチンゲール…介入、ワシントン…介入、ダヴィンチ…介入》
《思考、停止…》
次第に回転のスピードがゆっくりになっていく。
『…コム、話そう。』
『……話すより、調べたほうが早いのに。』
『その結果、私はコムを止めるのに、泣くより時間かかったし、疲れたよ…。』
私はため息をついて、どっと押し寄せた疲労で床に手をついた。
周りのみんなは恐る恐るその様子、というかコムを遠巻きにしている。
『なんで止めたの?志乃がすごく安定して仕事ができる、予定だったのに。』
『私はそんなことして欲しくなかったから。』
『危ないのが好きなの?』
『危ないのは嫌だよ。』
《志乃のパーソナルデータを更新…》
『やめて!』
《更新…停止…》
再度回り始めた水玉が、私の声で止まる。心なしかビクッと怯えたように見えたのは気のせいだとは思う。
『危ないのは怖いよ。お祭りだって怖かった、今も怖い夢見るし、地球皇帝を嫌いな人だって怖い、怒る大人も怖い。そもそも、コムだって怖い。』
水玉は回ることもできずに、所在なく迷うように左右に揺れる。
『でも、よく分からないけど、急に怖くない日もあるし、また怖くもなるし。出来なくても泣いたらなんかどうにでもなれ!って出来ることもあるし。私自身よく分からないのに、今はそんなことないのに危ないかも!って物全部無くすのはやめて欲しい。』
『まぁ、確かに、そこまで自分のこと、よく分かんないよな。』
野口くんがポツリと同意して。美弥ちゃんも頷いていた。
『でも、今は危なくない物の中にも、要素が揃えば君に敵意を向けるものはある。』
水玉がスゥッと一部を尖らせ、その先端が美弥ちゃんの方に向いた。
美弥ちゃんが『ひぃ!』と声を上げて、座ったまま壁に背がつくまで下がる。
『でも別に、死ぬとかじゃない。悲しくて泣いただけ。』
『悲しくて泣くことは、人間にとって望ましくない行動でしょ?』
『その時による。泣いて良かったなって時もある。』
『その条件は?』
『分かんない。全部その時による。』
『人間が、分からなすぎる。』
『分からないところがあるから、人間を地球皇帝にしたんでしょ?最初にコム言ってたじゃん。』
水玉がプルプルと振動したり、回ったり、揺れたり、コムはたぶん、混乱してる?
『コムって、オムニアって生まれてから何年なの?』
『試験段階も入れれば、5年かな…』
『え?!じゃあ弟とほとんど変わらないじゃん!』
『タヌキ!こ、個人情報〜!!』
柴山田さんが後ろから、小声で叫んでいる。
『コムは、知ってることは多すぎるのに、まだそれを使うのに必要な何かが足りないんだよ。』
『何か…。』
『だって私がして欲しくなくて、止めると思わなかったんでしょ?』
『推定するデータ量が足りなかったんだと思う。』
『でも、私の周りの人たちは、データが無くても、私が嫌なのを分かってくれたし、美弥ちゃんを敵だと思ったりしてない。』
『まぁ、うん』
『志乃ちゃん!このAIにもっと言って!』
美弥ちゃんが部屋の隅から声を上げる。
『コムってすぐ決めようとするじゃん。削除とか。コムがもっと何か決める時に、迷ったり悩んだりして、決められなくなったら、いいんじゃないかな。』
『矛盾しすぎて、回答できない。』
『たぶん、今はそれでいいんじゃない?私もよく分かんないし。コムは色んなこと教えてくれればいいよ。決めるのはまだ私がやる。』
『それだと、志乃は僕が怖くない?』
『そうだね、それならちょっと怖くない。』
《志乃のパーソナルデータを、更新中…》
今度は、必要かなと思ったから一応ぐるぐるを止めなかった。
まぁちょっと嫌だったけど、我慢した。
『リザードマン!ごめん、動線多すぎて読み込めなくなったからこっちから通話させて!あ!子鹿もいつの間にか落ちてる!』
『(お、おう!みんな!聞いてたか?!みんなのおかげでどうにかなったみたいだ!俺の方の回線もヤバいから!一旦落とすな!また結果報告できたらするから、よろしくな!)』
リザードマンのチャンネルの画面が待機中になり、画面の中でトカゲが手を振っている。
『志乃!!』
突然キッズフォンからお母さんの声がした。
『お母さん?!』
『あなたねー!家出ないでね!って言ったでしょーが!どこ居るの?!オムニアの約束使い方の全然守ってないし!』
『ご、ごめんなさい…五年生の柴山田さんちに、いる』
電話越しに、『柴山田?あぁ、5年の山田稔くんですね、ご案内しますよ』と鞠江先生の声がする。
『まぁ、でも、ものすごく頑張ったね、お疲れさん。今度こそちゃんと居てね?!迎えに行くから!』
そこで通話が切れる。
おそらくお母さんがすぐに来るだろう。
『白田のお母さん、なんか、こんな時なのに、普通なの、逆にやばいな。』
『なんか、白田さんの遺伝子を感じだよ、僕は。』
野口くんと柴山田さんは、疲れ切った表情でラグに寝転がったまま、失礼なことを言っていた。




