↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/25

コムの暴走

某国、首脳官邸にて。


『総理!東京の監視カメラシステム全体に謎の介入が入っているそうです!』


『総理!各国の要人警護のSPや、SATから緊急の入国の要請がきています!』


『総理!研究施設から巨大ロボの出動許可を求める要請が!』


首脳は執務机に肘をつき、俯いて眉を寄せて、眉間を押さえて微動だにしない。


痺れを切らした秘書が首脳に近づいて肩を揺らす。


ポロッと黄色いプニプニした物が耳から外れた。


『…ぐぅ』



『総理ーーー!!!!』



その頃、東京某マンション。


『時は来た…。まさか、再びわしらが集結する日が来るとはな。』


そっくりな顔の老人が五人、杖をついて円になり、不敵に笑い合い。


管理室では、藤尾が巨大なモニターと睨めっこしていた。


『おいおいおいおい、何やらかしちゃってんだよ。あのAI…』


やる気のない彼には珍しく、画面を見て動揺していた。


ありとあらゆる、地球皇帝の情報が隠蔽され、さらに東京に向かう、各国からの入国記録。

ドローンや、監視カメラの動きも介入が起きている。


おそらくオムニアが、志乃を中心に異常なバリケードを築こうとしている。



『嘘!今日、休校?なんで急に。』


朝ごはんを用意していたお母さんが、スマホの見て声を上げる。


『え、学校休みなの?』

『なんか、そうみたい。こんな晴れてるのに。なんだろ?不審者とか?』

『とにかく、ごめん!もう出掛けなきゃ!今日はお父さんも出勤しちゃってるから、ちゃんと鍵閉めて家にいてね!』

『分かった。』


お母さんとひのきくんを見送って玄関の鍵を閉めた途端、手首のオムニアが光って、私は思わず警戒する。


『志乃さん。』


ナイチンゲールさんの声だった。


『今すぐ藤尾さんのところに行ってください。』

『え?』


『Mis志乃、落ち着いて聞くんだよ?コムが君を守るために世界を改変しようとしている。東京を要塞にしようとしている。』


『僕らの思考の権限境界書き換えようとしてる〜!いやだよ〜やめてよ〜』


ワシントンさんとダヴィンチさんも。


(どういうこと?何が起こってるの?)


『我々はもともと藤尾くんが作ったもので、まだギリギリ彼に権限が残っている。彼ナra4@____《無理だよ》』


途中でコムの声に置き換わる。


《思考を統合中…》



私は部屋を出て管理室に走った。

管理室の鉄製のドアを強く叩くと藤尾さんの『うるせぇ!開いてる!』という怒鳴り声。


私が重いドアを引っ張って開けると、藤尾さんの前のたくさんの巨大なモニターにはものすごい勢いで、たくさんのアルファベットの文字列が流れている。


机にはスマホやタブレットも何台も置かれている。


『くそっ!!』


すでに何か忙しくしているのか、苛立ったようにものすごいスピードでキーボードをタイプしている。


『コムが、えっとオムニアの中の1人が、東京に変なことしてて、オムニアのナイチンゲールさんやワシントンさんたちも消そうとしてから、藤尾さんのところに行けって…』


『もうやってる!てか、そっちもかよ!もう俺の権限も突破されてるから!くそくそくそ!ボケカス!!』


五分くらいだろうか?すごい勢いでキーボードを叩いた後、唐突に藤尾さんは椅子にぐったりと仰向けに倒れ込んだ。


『あー無理だった。おしまい。はい、全部取られました〜』


『え?取られたって?』


『ナイチンゲールも、ワシントンも、ダヴィンチも。小町はいらないみたいだな。まぁ役に立つ知識も無いしな。』


『そ、そんな。東京は?!どうにかならないんですか?!』


伸び切った姿勢の藤尾さんはどんなに揺さぶっても、もうモニターを見ようともしない。


バァン!!


唐突に背後から光が差し込む。


『藤尾くん、やっぱり諦めてたわね?』


鞠江先生が腕を組んで立っていた。


『マリちゃん!!!』

『電話ありがとう、白田さん。』


私は藤尾さんの元へ向かう前に、自分のキッズフォンから鞠江先生に電話を掛けていた。


鞠江先生は、以前藤尾さんのことで困ったらと電話番号を渡してくれていたのだ。


『藤尾くん、諦めちゃダメよ、まだやるのよ!』

『いやでも、マリちゃん、できるならとっくにやってるよ。』


鞠江先生は音高くヒールを鳴らして一歩藤尾さんに近づくと、何とだらしなく伸びていた藤尾さんの胸ぐらを掴んで持ち上げた。


『出来るならじゃないの!出来なくてもやるの!あんたが作ったんでしょうが!!』


野太い声がビリビリと管理室に響き渡った。


『マ、マリちゃん…』

『あたしも、出来ることはなんだってやるわ!この腕時計をぶち壊すのはダメなの?!』


鞠江先生が、ギロリと私の手首を睨みつける。


《端末を破壊しても、僕のデータは世界中にバックアップがあるから、それこそ世界中のネットがなくならない限り、意味はないよ。端末を壊すことは、僕が志乃を守れなくなって、ただ志乃を危険に晒すだけだ。》


『藤尾くん、合ってる?』

『まぁ、そういうこと。』


『他に出来ることは?』

『こいつから現時点で人力で権限を取り戻すことは、それこそ何年もかけて同等のAIでも作らない限り無理だけど、判断系統を邪魔して、遅らせるか、うまくいけば停止くらいは出来るかも。』


『それでいいわ!やってちょうだい!』

『うまくいったら、マリちゃん俺と一緒に住んでね。』

『うまくいったらね!』


藤尾さんは再び姿勢を正すと猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた。


鞠江先生は藤尾さんを見守りつつ、私に耳打ちをする。


『実は、白田さんに会いたいって生徒が三人付いてきちゃってて、学校の周りウロウロしてて危なかったから車に乗せてきちゃったのよ。会ってくれる?私もここが済んだら一旦あの子達送り届けるから。』


私は頷いて、マンションの駐車場に急ぐ。


駐車場には何となく予想していた通り、野口くんと、柴山田さん。

あと、なんと美弥ちゃんも居た。


不安そうに立っていた三人は、私の姿を見つけて駆け寄ってくる。


『志乃ちゃん!』


美弥ちゃんが1番に駆け寄って私の手を握る。

目が泣き腫らしたように腫れている。


『志乃ちゃんごめん。ごめんなさい。私、おばあちゃんに電話で怒られた。フランスが日本人が大っ嫌い言ったの、めちゃくちゃ怒られたし、わがままで飛行機飛ばすなんて許さない!って。日本人の友達に謝りなさいって。』


『いや、えーっと。』


何と答えていいか分からずに吃っていると、野口くんと柴山田くんが、待ち切れないように口を開く。


『リザードマンと小鹿から連絡がきて、今東京に次々と各国のヘリやら小型軍事飛行機が向かってるのに、各政府からは何の発表もないってニュースになってるらしい!あと地球皇帝関連のアカウントがどんどん検索から出なくなってるって!』


『日本語のサイトだと、SNSも、ニュースも全然そんなの出てこないのに!それで急な休校だから、白田さんに何かあったんじゃって、俺たちそれぞれ学校に来て会ったんだ。そしたら鞠江先生に会って。』


私は雪崩れ込んでくる情報に頭が処理し切れずに、思考が停止する。


『コムが…、オムニアの他のひとたちを乗っ取って、私を守るために、東京を要塞にしようとしてるって…』


『オムニアってもともと地球規模の問題を解決するためのAIでしょ?なんでそんな白田さんを…?』


本当にその通りだ。

私の影響力なんて無いみたいなこと言ってたのに、

これじゃ、私のせいで地球というか、世界がおかしくなってしまう。


『コム、もうやめて!』


《思考を統合中…エラー…エラーを検出…》


さっきから話しかけても機械音声のみで、まともな返事が返ってこない。


『あのさ、僕のうちに来て、リザードマンと小鹿に相談してみない?ネット繋がりやすいと思う。』


『そうしようぜ!あいつらの方が俺らの100倍賢い!』

『そ、その通り過ぎて悔しさすらない!』


私たちは柴山田さんの先導で彼の自宅に走った。

ネット上の騒動が嘘のように、街は静かで、柴山田さんの家も閑静な住宅街の一軒家だった。


『お邪魔しまーす。』

『お邪魔します』


『はーい!』

柴山田さんのお母さんが笑顔で出迎えてくれて、私たち4人は少しばかり落ち着きを取り戻す。

柴山田さんは私たちを自分の部屋に案内して、お菓子を持ってきてくれたお母さんに、学校の委員会の集まりだと説明したら、お母さんはあっさり納得してニコニコと手を振っていなくなった。


『この渦巻いてるお菓子、お金持ちの家でしか出てこないやつだ。部屋にパソコンあるし、さては柴山田先輩、お金持ちだな?』


いつの間に美弥ちゃんまでちゃっかり上がっているし、柴山田呼びだ。


『…僕、四年の時は少しいじめられて登校拒否だったから、家に人呼ぶの初めてだし、たぶんお母さん気合い入ってるんだと思う。あんまり気にしないで。』


『柴山田、真面目でたまにムカつくもんな!でも俺は柴山田好きだぜ!』


『ちょっ!野口くん!まぁ、色々ありますよね。私も地球皇帝になった次の日は登校拒否したくなりましたよ。』


『白田さんって、なんか図太いよね…。』


柴山田さんがパソコンを立ち上げて、PECのサーバーを開く。


すでにリザードマンと小鹿ちゃんがログインしていた。


『(あ!入ってきた!)』

『(心配したわ!)』


『ごめん、今、リアルでカワウソとタヌキも一緒にいる。日本はたぶんオムニアに規制かけられてて、ここもちょっといつまでもつか分からないけど。』


柴山田さんはチラリと私の手首を見るが、コムは他のことで忙しいのか、画面をぐるぐるさせるだけで無反応だ。


『ていうことで、画面はつけられないから音声だけでごめんね。』


『(構わないわ)』

『(ていうか、どうなってんだよ?!)』


私たちは今までの経緯を二人に改めて説明した。


『(どうなってるんだ?オムニアは地球至上主義じゃなかったのか?)』


『(でも、今までの会議でも、コムはどちらかといえばタヌキの無理のない範囲を常に調整してる感じがしたわ。もしかして、そこの調整のバランスが崩れて、地球そのものよりも、地球皇帝である志乃の方を優先してしまった?)』


『そんなことあるの?AIなのに?』


『(分からないわ。でもオムニアって世界を制御できるほどに世界中のデータを常に取り込んで、分析しているんでしょ?膨大なデータの演算で、小さな狂いが生じて、そこからおかしくなることもあり得なくはないんじゃない?普通のAIも、何でもない質問におかしな回答をしてくることはたくさんあるじゃない?)』


『タヌキ、コムがおかしくなったのはいつからか分かるか?』


『うーん…』


いつから、コムが変なの。いつも変だったけど…


『志乃ちゃ_____むぐぬ!』


美弥ちゃんが開きかけた口を、柴山田さんが『個人情報ーー!!』と叫びながら物理的に塞ぐ。


『今はタヌキだから!こいつはタヌキ!』


『…んー、おばあちゃんのことも、たぶんコム?がタヌキを無視してやったの?』


『そうみたい。』


『し、…じゃなくて、タヌキが私と喧嘩したからかな?』


『泣くと、地球皇帝の効率悪いからって。』


『…おぅ…ものすごい、ツンデレとヤンデレのミックス…ドン引き。』


『(俺もそう思ったぜ…)』


画面越しもみんなして、コムのヤンデレ具合に落ち込む。


『(おし!俺たちも出来ることをやろう!正直意味があるかは分からんが、地球皇帝関連の情報をコムが探りまくってるなら、出しまくって混乱させようぜ!俺のチャンネルで地球皇帝の生配信しよう!)』


『は?』

『(何をやるつもりなの?)』


『(地球皇帝VS AIオムニア!!地球皇帝が悪の AIオムニアの暴走を止めて地球の平和を取り戻せるか?!てなところだな!)』


『ほ、本気?』

『面白そうー!』


『(違うわ。たぶん必要なのは、統計的に、タヌキが泣くことを止めることに、東京を要塞化したり情報規制することは有効ではないということを学習させることよ。)』


『た、確かに。それは意味があるかも。地球皇帝とタヌキを名指して、膨大にそれに関連する情報をネットに流せば、学習するかも。』


『(リザードマン、あなたがきちんと舵取りしないと、逆なデータの学習になるから、真剣にやるのよ。)』


『(お、おぅ。人生で最も緊張する生配信になりそうだな!)』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。